“王室離脱の真相”暴露本ブーム
このところ、イギリスは暴露本ブームに沸いている。というのは、ヘンリー王子とメーガンさんの王室離脱の真相に関心が集まっているからだ。
二人はイギリスを出て、まずはカナダのバンクーバーに渡った。その後、カナダがコロナ感染拡大の予防措置として一部ロックダウンすると知り、急いでアメリカ・カリフォルニア州のロスアンジェルスに飛んだ。メーガンさんのふるさとロスでは20億円ほどの大豪邸を借り切り、アーチー君やその後合流した母親ドリアさんと共に暮らしている。
この記事の画像(8枚)英王室に関する暴露本が次々に出版されるのは、1990年代にダイアナ妃が別居から離婚に踏み切ったとき以来である。「まるでおとぎ話のよう」と称賛された結婚がなぜ悲劇に終わったか、人々の注目が集中したのだ。
この度は、5月から6月にかけてすでに3冊が出た。そして、8月11日には『自由を探して』が出版される。それに先立ち、高級紙「タイムズ」紙が、抜粋を数回に分けて掲載している。出版前の新聞への掲載は珍しく、それだけ注目度が高いのだろう。
これまでの3冊の内容はそろってアンチ・メーガンで、いかに彼女が王室の伝統、ルール、マナーを無視したかが明かされた。衣装などの浪費癖が激しくて、「イギリスのマリーアントワネット」と揶揄された。アメリカ発祥のイベント「ベビーシャワー」を祝いにニューヨークまで飛び、宿泊代など約5500万円を数日間で使った。公務の際に、ヘンリー王子にしなだれかかる様子にも批判が殺到した。メーガンさんは離脱の責任を問われるなど、徹底的に非難されている。
メーガン妃擁護の『自由を探して』
それが、『自由を探して』では一変する。著者の一人オミド・スコービーさんは、メーガンさんの応援団長と名乗るだけあって、一貫して彼女を擁護する。エリザベス女王、ウィリアム王子、キャサリン妃、宮殿で働く廷臣やスタッフまで、二人をいじめたとして糾弾していくのだ。
たとえば、エリザベス女王は毎年12月にテレビを通じて国民に向けクリスマス・メッセージを送る。これを毎年楽しみにする国民は多いが、その時に傍らのテーブルに飾られた写真も話題になる。昨年、写真立てには、チャールズ皇太子夫妻、ウィリアム王子一家の笑顔は確認できたが、ヘンリー王子とメーガンさんの一枚は見つけられなかった。
これはただ、王位継承順位1位の皇太子から5位のルイ王子までが紹介されたと解釈された。しかし、ヘンリー王子は自分を王室に「不必要な人間」とあからさまに示したと、その仕打ちに腹を立てている。
またヘンリー王子が、ウィリアム王子にメーガンさんとの結婚を打ち明けたところ、兄は「その女の子(this girl)との付き合いは、時間をかけたほうが良い」と忠告した。これにヘンリー王子は「兄はお高くとまって、メーガンさんを見下した」と激怒。兄弟の確執のきっかけは、「兄の言葉から」と断定する。
王子との結婚は簡単ではない。それでなくとも王室の存在しないアメリカ育ちであれば、相当の覚悟が必要なはず。キャサリン妃と8年の交際を経てゴールインした兄のアドバイスはもっともと思えるが、メーガンさんに夢中のヘンリー王子の耳にはそうは聞こえなかったようだ。
王室への感謝の言葉もなく・・・
さらに、キャサリン妃とメーガンさんの確執も具体的だ。キャサリン妃が買い物に行くときに、メーガンさんも同じ場所に行くのに、キャサリン妃は車に隠れてしまった。妃は冷たい人で二人の距離を縮める努力をしなかった、とメーガンさんは責める。
しかし、キャサリン妃が車内にとどまったのは、パパラッチを避けていたからだった。キャサリン妃は冷淡どころか、婚約中の二人を自宅に招いて手料理をふるまっている。ウィンブルドンのテニス大会には毎年メーガンさんをロイヤルボックスに誘った。
すべてがヘンリー王子とメーガンさんからの視点で語られ、不平と不満のオンパレード。なぜ、お世話になった王室への感謝の言葉がないのだろう。なぜ侍従やスタッフらから陰口をたたかれたのか(ウィリアム王子とキャサリン妃はスタッフから何も言われていない)、むしろ自分たちに「非があるのでは」という自省が見当たらない。ひたすら被害者であると訴え同情を求める。
雑誌のアンケート結果によると、イギリス人の40%が、二人のイギリスからの「永久追放」を求めたそうだ。ただこの本は世界的ベストセラーの予想が立てられていて、王室イメージを傷つけないかと心配されている。
メーガンさんは今後政界への進出を目指すという。アメリカ大統領まで視野に入れているそうだが、周囲の人たちへの思いやりなど、まずは足元から固めてはどうだろう。
【執筆:英国王室ジャーナリスト 多賀幹子】