万博に向けて大きな注目を集めている『培養肉』。その研究を進めている大阪大学大学院 工学研究科 松崎典弥教授に、培養肉とともにスタジオに来てもらった。
【動画】3Dプリンターで作る人工「霜降り肉」培養肉の量産体制整い始める 万博では「ステーキ」のような肉の展示を
この記事の画像(8枚)関西テレビ 吉原キャスター:研究現場を取材したことがあるのですが、作るのに大変な苦労をされているんです。スタジオに持ってきてもらった培養肉は、指の第一関節ぐらいの大きさで、赤い部分が血管とか筋肉の繊維で、白い部分が脂肪の繊維です。3Dプリンターで作って、1本ずつ組み立てるんですよね。
大阪大学大学院 工学研究科 松崎典弥教授:これは繊維が30本ぐらい。束ねるのに1時間ぐらいかかっています。培養する時間も全部合わせると、3週間ぐらいかかってしまいます。
■焼くと「ちょっと和牛の甘いような香り」
3週間ぐらい時間がかかり、コストは10万円ほどだということで、いまは大変貴重な培養肉。
スタジオにフライパン用意し、この培養肉を焼いてみようと思うが、こういった形で培養肉を焼かれたことはあるのだろうか?
大阪大学大学院 工学研究科 松崎典弥教授:初めてですね。実験では何回かありますけど、こういうテレビではないですよね。
培養肉を吉原キャスターが熱したフライパンに乗せると、さっそくジュージュー音を立て、煙も上がってきました。
しだいに香りも漂ってきて、吉原キャスターは「ちょっと和牛の甘いような香り」だと言う。大変おいしそうなのだが、今回用意していただいたものは、残念ながら食べられないということだ。
■万博では「ステーキサイズ」の培養肉を展示
万博での披露が期待される培養肉だが、松崎教授が思い描いている今後のロードマップとして、まず2025年に開催される万博ではステーキぐらいの大きさの培養肉を展示する予定だという。今は小さなものでも3週間ぐらいかかるということだが、万博に間に合わせるためにどのような研究をしているだろう?
大阪大学大学院 工学研究科 松崎典弥教授:束ねるのを『手作業で』と言いましたけれども、それを自動化をして、短時間で束ねられるようにする研究をしております。
(Q自動化でだいぶ早くなる?)そこは非常に期待されると思います。
■2050年の家庭には「ホームミートメーカー」?
そして万博後のロードマップも見ていくと
・2030年 ブランド牛並みの価格で提供
・2050年 家庭に「ホームミートメーカー」?
ホームミートメーカーというのは、どのようなものなのだろう?
大阪大学大学院 工学研究科 松崎典弥教授:これはですね、家庭にあるパンを焼くホームベーカリーのような形で、家庭でお肉を自分たちで作れる未来が来るんじゃないかと。
(Qホームベーカリーだったら小麦粉などをいれるが、ホームミートメーカーは?)細胞を入れて、あとは培養する培養液というのを入れて、スイッチを押すとできあがる感じですね。
(Q細胞はどれぐらいの量入れるのか?)すごくたくさん必要になります。なのでそれを大量に培養するような技術開発しているということです。
25年後には自分の家で“お肉が作れる”かもしれない。
■自分の好きなお肉が食べられるようになるかも
家庭でも作れるようになるかもしれない培養肉だが、
・自分の好きな味のお肉が食べられる?
・健康状態に合わせて肉の栄養を調整できるようになる?
かもしれないということだ。
例えば「脂身少なめで」とかできるかもしれない。
大阪大学大学院 工学研究科 松崎典弥教授:プリンターですので、脂肪の割合とか、形とかも自分で好きに決められることになります。
(Q『健康状態に合わせてとはどういうことでしょう?)例えばビタミンCとかもしくは何か特定の栄養成分すごく出しているお肉を作ったりとか。あと頭が良くなると言われているDHAといったものを出しているお肉などができるようになるんじゃないかと期待されています。
未来に向けてどういった課題があるのだろうか。
関西テレビ 神崎報道デスク:牛を一頭育てるのに餌がいっぱい必要であったり、メタンなど温室効果ガスが出たりして環境負荷が大きいという話があります。これが培養肉に取って代わるのであれば、地球にも優しいと思います。
あとやはり問題は価格面ですね。今小さいものが10万円かかるということですけれど、これがブランド牛と同じかそれより安くなってきて、そして味も一緒であれば、培養肉にしようという人も増えてくると思うので、値段が今後どこまで下がるかっていうところですね。
大阪大学大学院 工学研究科 松崎典弥教授:そこに向けて、細胞を大量に培養するとか、いろいろ技術開発を続けていきたいと思っております。
(Q値段のイメージは?)ちょっと高級な和牛より少しお高めぐらいで。しかしながら先ほど言いましたように、健康状態とか、自分たちで付加価値を作れますので、そこが狙い目かなと思っております。
「オーダーメイドミート」ということになる。大阪・関西万博の目玉の一つということで、本当に楽しみだ。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年4月18日放送)