留学生が日本酒造りを学ぶプログラムが、産官学連携の一環で行われた。
販路拡大の可能性を探り、留学生たちは異文化料理とのペアリングを提案。
専門家は、日本酒の背景の共有は海外普及に不可欠と言及する。

「海外でも日本酒を」留学生が酒蔵体験

留学生たちが酒蔵での体験を通して、日本酒の海外普及を進めたいとしている。

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千葉・神崎町にある創業330年以上の歴史を誇る、老舗酒蔵「鍋店(なべだな)」。

ここを訪れたのは、産官学連携のプログラムに応募した一橋大学の交換留学生。

鍋店・大塚完社長:
ぜひとも日本酒の文化を、自分たちの国に帰って広めてもらえたらなと。

国内消費量が減り続ける一方、日本食ブームにともない輸出額は年々増加傾向にある日本酒。
プログラムを通して、留学生独自の視点で、販路拡大策などを考えてもらうことを目指した。

鍋店・大塚惠介専務:
麹(こうじ)の出来具合によって、できるお酒が全然違います。

酒蔵では、麹の発酵方法など、伝統的な酒造りのほか、経営課題や味の違いなどを学んだ。

ハンガリー人留学生:
リンゴのような香りが弱い。

フランス人留学生:
これは甘い、これは辛い。

こうして学んだものをふまえて、26日に開かれたのは成果発表会。

イギリス人留学生:
2つお酒を選んで、1つは和食を基調にした料理とペアリングをしたかった。

留学生たちが考えたのは、吟醸酒とシナモンがきいたアップルパイのペアリングと、大吟醸と日本食のいなり寿司に、なんとハーブのローズマリーをかけたもの。

プログラムの関係者:
This is very surprising! Delicious! Perfect!

プログラムの関係者:
(ローズマリーが)口の中で大吟醸の香りを高めてくれる。

“日本酒造り”という日本文化を学ぶプログラムから、留学生が得たこととは──。

フランス人留学生:
日本の酒を他国の市場に輸出することの難しさを知った。

イギリス人留学生:
自信がつきました。違う国・違う文化の人とできたのはよかった。

一橋大学 国際教育交流センター長・阿部仁准教授:
キャリアに少しでも深みをつけてあげたい。日本の仕事がなぜ、これだけ手作業で時間をかけてやることが重要なのかを、肌で感じてもらうには日本酒はピンポイントで良い。
お酒のところはきちんとキープしたうえで、付加価値をつけていきたい。

海外からのアイデアで輸出を確実に

「Live News α」では、一橋ビジネススクール教授の鈴木智子さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
── 交換留学生を巻き込んだ日本酒の海外展開の試み、どうご覧になりますか?

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
日本料理や日本文化の人気が海外で高まることで、日本酒も各国に広まっていきました。今後は日本酒と現地の料理とのペアリングで、楽しんでもらうことが必要になってくるでしょう。

「おいしさ」は文化に根差しているため、日本人だけで、海外で歓迎される酒をつくるのは難しいです。今回の取り組みのように、海外の人からインプットやフィードバックをもらいながら、「おいしい」と思ってもらえる日本酒を一緒につくっていくことが大切です。

堤キャスター:
── 日本酒が世界で広まっていくといいですね。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
日本酒の国内での販売量はこの50年で、75%減少する中、全国の酒造メーカーにとって海外で続く堅調な売り上げは、一筋の光です。

業界団体のデータによると、日本酒の輸出はここ10年、毎年のように成長が続き、2023年の日本酒の輸出高は約411億円となっています。

この成長を持続させ、さらに伸ばしていくためには、お酒の美味しさを増すのはもちろん、マーケティングの課題をクリアする必要があります。
その1つの答えが、今回の試みかもしれません。

日本酒にまつわるエピソードが重要

堤キャスター:
── それは、どういうことでしょうか?

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
お酒のおいしさは、味だけでつくられるわけではありません。お酒にまつわるストーリーや歴史などの知識によって、味わいを奥深いものにしてくれます。

自国の文化や風土が育んだ酒にまつわる物語を他の国に消費者に、どうやって伝えるのか、マーケティングが問われます。

今回、一橋大学への交換留学生たちが、日本酒の海外展開につなげるプロジェクトに参加しています。日本の酒蔵を訪ねて、そこで見たこと・聞いたこと・体験したことを世界に向けて発信してもらう。

これは日本酒を介して、日本と世界をつなげる「橋」の役割を果たしてくれているように思います。
地味で小さな取り組みかもしれませんが、日本酒を海外に広めるには、今回のように、1つ、2つと、「橋」をかけていく必要があります。

堤キャスター:
日本酒という文化を通してもっと日本を知ってもらうと、母国の文化とも、つながる点を見つけられるかもしれません。こういった取り組みが、海外との架け橋となることを期待したいです。
(「Live News α」3月26日放送分より)

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