プーチン大統領は、22日に起きたモスクワ郊外の銃乱射テロは、イスラム過激派組織「イスラム国」の犯行と事実上認めた。
この事件を受け、フランスはテロ警戒レベルを最高に引き上げ、パリでは大規模な警備強化が進められている。

テロへの警戒が高まる

ロシアのプーチン大統領は25日、モスクワ郊外で起きた銃乱射テロについて、イスラム過激派による犯行だと初めて認めた。

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22日に起きたモスクワ郊外の銃撃テロ事件は、死者が139人にのぼり、ロシア当局は25日までに実行犯を含む7人を起訴している。

プーチン大統領は25日、政府の対策会議に出席し、「過激なイスラム主義者による犯行だ」と初めて明言し、過激派組織「イスラム国」による犯行を事実上認めた。

ただ、「誰が命令したかに関心がある」とも述べて、根拠を示さずにウクライナや西側諸国が関与した可能性をほのめかした。

このニュースについて、フジテレビ・立石修取材センター長がお伝えする。

今回のテロについて、プーチン大統領が事実上、イスラム国によるものと認めた。
犯行声明が出ているため、認めざるを得なくなった状況だ。

このテロで、ヨーロッパではテロへの警戒が高まっている。
特に深刻にとらえているのは、7月にオリンピックを控えるフランス。

フランス政府は25日、モスクワでの大規模テロを受けて、フランス全土でのテロ警戒レベルを3段階で最高の「緊急テロ攻撃レベル」に引き上げた。

フランスが、緊急に警戒レベルを引き上げたのには理由がある。

マクロン大統領は、フランス領ギアナで25日に開かれた会見で、「今回のテロに関与したとみられる組織は、フランスで何度か攻撃を企てたが失敗した」と述べた。

つまり、モスクワのテロに関与した「イスラム国 - K」が、これまでに「フランスでも複数回のテロを企てた」と明らかにしたのだ。

フランスのアタル首相によると、2024年に入って2度のテロを事前に阻止してきたということだが、モスクワの惨状を目の当たりにして、フランスではパリを中心に一挙に警戒が高まっている。

25日にパリで撮影されたエッフェル塔周辺の様子では、自動小銃で武装した兵士の姿が数多く確認できた。
観光地だけでなく、駅や学校にも多くの兵士が配備されている。

アタル首相によると、3000人の兵士をテロ警戒レベルの引き上げにともない投入。
さらに、4000人の兵士をいつでも増員できる態勢にあるという。

ローラースケートに乗っている警察官
ローラースケートに乗っている警察官

またルーブル美術館周辺では、ローラースケートに乗っている警察官が警備にあたっていた。

一見のんきに見えるが、最高時速は50km近く出て、混んだ観光地でも簡単に移動し事件に対応が可能。
また視点が高く周囲が見渡せ、異常事態を発見しやすいという。

約90人が亡くなるテロも

パリは2015年にテロを経験しているだけに、警戒心も強い。
その2015年にパリで起きた同時多発テロも今回のモスクワ同様、イスラム国が犯行声明を出している。

その時は、バタクラン劇場というロックコンサートの会場で銃が乱射され、約90人が亡くなったが、銃を乱射するという手口も今回と酷似している。

この実行犯らが根城にし、最後に立てこもったのが、サンドニというパリ郊外のエリア。
現場は、開発が遅れ貧困率も高いエリアで、犯罪も多発していた地域だった。

実は、今回パリ五輪の選手村が設置されたのが、このサンドニ地区だ。

オリンピックを契機に、この地区の再開発と発展をパリ市は狙っているが、警戒が必要となる。

モスクワのテロが起きる前から、フランス当局はオリンピックでは1万5000人の兵士と3万5000人の警察官、そして最大2万2000人の民間業者で警備にあたるとしていた。

今回はガザ地区での紛争、ウクライナ戦争のさなかでのオリンピックとなるため、不測の事態に備える必要がある。

「オリンピック最大のテロ」として思い起こされるのは、1972年のミュンヘンオリンピックだ。

第4次中東戦争直前に開催されたこのオリンピックでは、パレスチナのテロ組織「黒い9月」が選手村に侵入し、イスラエル選手団の2人を殺害し、9人を人質に取り、立てこもった。

その後、救出作戦は失敗し、人質全員が死亡という悲劇的な結末を迎えた。

国際情勢は、本当に今不安定だ。
パリ五輪は素晴らしいものになると思うが、テロ警戒に向けて国際社会が情報共有など協力すべきだ。

屋内競技であれば、高いセキュリティー対策が可能だが、屋外競技では、2013年のボストンマラソンで自爆テロが発生し、3人が亡くなっている過去もある。

今回は、開会式もセーヌ川で行われ、オープンなものになる。
それだけにテロのリスクが取りざたされている。
(「イット!」 3月26日放送より)

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