キリンが、アニメクリエイターの健康を支援するサービス「YoKIRIN」を開始。
制作現場での健康問題に対処するため、利用者が支払う月額料金を原資に、健康商品などと交換できるポイントをクリエイターらに分配。同時に限定コンテンツを配信する仕組みを提供する。

“推し活”で制作者の健康サポート

世界中から評価される日本のアニメ文化。
楽しみ方は、人それぞれだが、制作現場に携わるスタッフはこう指摘する。

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ライデンフィルム ビジネスプロデューサー・西川恭平さん:
アニメ業界って昔から、長時間労働みたいなものが大きな課題の一つ。かなり改善されてきてはいるが、まだまだ整備が必要な状態にはある。

こうした課題の解決に向け、キリンが2024年4月から開始するのは、アニメクリエイターの健康サポートサービス・「YoKIRIN(ヨキリン)」。

利用者は、月額2200円から使用でき、集まった利用料はポイントとして製作会社やクリエイターに分配。健康に関する商品や、サービスと交換することができる。

また、利用者への“返礼品”として、作品の制作過程や舞台裏など、限定コンテンツを「YoKIRIN」上で配信する仕組みだ。

参加を決めたアニメの制作会社は、福利厚生の充実の他にも、メリットを感じていた。

ライデンフィルム ビジネスプロデューサー・西川恭平さん:
ファンが見たい部分を見せることができるので、そういう意味では、作品を深く知ってもらう機会になり得ると、そこが制作会社側のメリット。YoKIRINというもの自体は、お互いが支えあう関係・存在になれる。

一方、今回のサービスを手がけるキリンは、グッズ収集やコスプレなど、多様化する“推し活文化”に着目。自社で手がけるヘルスケア事業を活用し、作品を生み出すクリエイターを、直接応援できる新しい“推し活市場”の創出を目指している。

キリンHD ヘルスサイエンス事業部 新規事業グループ・奥村雄実さん:
(クリエイターに)健康でいてもらって、また新しい・面白いモノを生み出して欲しいというニーズが一定層あると思うので、この仕組みを、当社が運営することによって、一定の経済的なメリットも得られるし、そういったビジネスを提供していることで、ブランディングについても、ポジティブなイメージを得られればと思っている。

キリンは、将来的にアニメファン6万人、アニメ会社数百社の参加を目指すとしている。

健康維持への取り組みが企業価値に直結

「Live News α」では、エコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
今回の取り組み、どうご覧になりますか。

エコノミスト・崔真淑さん:
アニメクリエイターの労働環境が持続可能なものになっていないのではないかと、ファンの多くは懸念している。

クラウドファンディングという形で、ファンが作品づくりに参加するケースはあったが、今回の試みは、世界的にも珍しく健康を起点に、ファンとクリエイターをつなぐプラットホームになっている。

アニメファンはクリエイターを応援する新たな機会をつくってくれたキリンに、これまで以上の好感を抱くかもしれない。

堤キャスター:
いわゆる「推し活」というと、作品を見たり、関連グッズを買うといった事がメインでしたが、クリエイターの健康支援というのは、新しいですよね。

エコノミスト・崔真淑さん:
アニメメーターの約7割は、フリーランスで就業しているという報告がある。

そのため、アニメーターの就労環境について企業が把握することが難しかったり、健康支援の態勢を構築しにくいのが課題であった。この課題への新しいアプローチとして、非常に興味深い。

自由度増でも健康管理は課題に

堤キャスター:
まず、健康であること。これは大切なことですよね。

エコノミスト・崔真淑さん:
実際、ファイナンス研究では、働く人の健康維持への取り組みは、企業価値に繋がりやすいことが報告されている。

一つは、働く人が健康を損ない、業務に支障をきたす影響を回避できること。もう一つは、就業はできるが不健康なことで、生産性が低下して、企業価値が落ちることを回避できること。実はこちらの方が、経済損失が大きいとの試算もある。

堤キャスター:
今回のような取り組みが、広がるといいですよね。

エコノミスト・崔真淑さん:
東京大学と横浜市の共同調査によると、体調不良による一人当たりの労働生産性の損失は、年間76万6000円と推計している。 

日本でも、ジョブ型雇用が広がり、今後はフリーランサーが更に増えることが予想される。

仕事の自由度が増す一方で、働く人の健康管理は課題になると思う。いろんな業界にとって、お手本になる取り組みになるかも。

堤キャスター:
心と体の健康は全ての基本です。応援の仕方はさまざまですが、それが多く集まれば、その分大きな力になるはずです。新たな応援の形として、広まっていくといいですね。
(「Live News α」3月25日放送分より)

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