ランニングに欠かせない存在と言えば、運動靴のシューズ。近ごろは機能も多様化していて、裸足感覚で走れる「ベアフットシューズ」、好記録続出で話題になった「厚底シューズ」なども登場した。

スポーツ用品メーカーの「アシックス」が、そんなシューズ業界に一風変わった製品を送り出す。履いて走るだけで自分に合ったよりよい走り方を教えてくれるという、スマートシューズ「EVORIDE ORPHE」(エボライド オルフェ)の予約販売を始めたのだ。

「EVORIDE ORPHE」。横が搭載できる専用センサーとなる
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このシューズには、靴底と中敷きの間にあるミッドソールに「ORPHE CORE 2.0」という、加速度センサーやジャイロセンサーを内包した専用センサーを搭載していて、走行中の動きや振動、衝撃、足の向きや回転などを計測することができる

そのため、履いて走るだけで速度や歩幅といった基本的な情報から、足の着地パターン、着地したときの衝撃や角度まで、幅広いデータを計測することができるという。

専用アプリで走り方を評価・分析

そして、計測したデータを専用のスマートフォンアプリで分析できるのも特徴だ。アシックスでは、よりよい走り方のポイントとして、(1)ダイナミックな動き(2)効率が良い動き(3)負担が少ない動き、これら3つの要素を挙げている。

専用アプリでは、この3つの要素を基準にそれぞれの走り方を、(1)路面を蹴るキック力の大きさ(2)キック力の効率(3)着地時のブレーキ効率(4)衝撃の負担軽減度(5)かかと周りのねじれによる関節の負担軽減度、これら5つの視点で評価・分析してくれるという。

専用アプリの使用イメージ

さらに、走り方の改善点や「よりよい走り方」に近づくための適切なトレーニングを提案する機能なども搭載している。いわば、シューズが自分だけのコーチとなってくれるのだ。

EVORIDE ORPHEは、クラウドファンディングサイト「Makuake」で購入希望者が募集され、目標金額の300万円に対し、7月28日時点で570人以上の応募があり、約1880万円以上を集めている。

クラウドファンディングサイト「Makuake」より

多くの機能が搭載された先進的なシューズと言えるが、気になるのはその効果。具体的にどんなアドバイスをしてくれるのか。よりよい走り方になることで、ランナーはどう変われるのだろうか。アシックスの担当者に聞いた。

最適化された価値を提供したい

――スマートシューズを開発した背景は?

ランニング人口の増加とともに、ランナーが抱える悩みも多様化する中、一人一人に最適化された価値を提供したいと考えたのがきっかけです。ランナーは「こういう走りをしたい」という目標を持ちつつも、自分一人では限界があるともいうので、助けになればと思いました。研究開発はスマートシューズのスタートアップ企業「no new folk studio」と進めました。

――ユニークな製品だが、会社としては初の試み?

アシックスとしては初めての取り組みになります。業界全体では、ナイキやアンダーアーマーなどの他スポーツブランドでも、センサー内蔵シューズが販売された実績はあります。

――クラウドファンディングで募集したのはなぜ?

イノベーション性の強い製品であること、弊社と接点のないお客様にも新しい価値を提供したいと考えたことから、クラウドファンディングを採用しました。支援者からのフィードバックがあり、リアルな声を知ることができることも理由となります。

走行中は、リアルタイムに音声アドバイス

――他社製品と比べて、どの点が優れている?

EVORIDE ORPHEでは、当社の研究機関「アシックススポーツ工学研究所」が培った知見やデータをもとに走行データを分析できます。従来だと、ランナーのデータ計測には大掛かりな設備が必要でしたが、専用センサーをシューズに搭載することで、ランニング時に体にかかる力を取得したり、両足での違いなども分析できるようになりました。

計測結果に応じて、一人一人に最適化したフィードバック、トレーニングプランなどを提案するのも特徴です。走行中は音声で動作のフィードバックを、走行後は動作の改善に向けたアドバイス、お勧めのトレーニングプランなどを提案します。

走り方の評価・分析は実際のランナーの走行データを基準としている

――具体的にはどんなアドバイスをしてくれる?

走行中であれば、音声でリアルタイムにフィードバックを受けられます。例えば、キック力が小さければ「もっとストライドを広げることを意識してみましょう」、キックの効率が低ければ「もう少し前傾して路面を蹴ることを意識しましょう」などと、アドバイスします。

走り終えた後は、評価とそれに基づいた指導、トレーニング動画を提案します。例えば、接地直後に大きなブレーキがかかっている、いわゆる効率の悪い走りをしていた場合は、「極端なかかと接地が要因かもしれないこと」「ソフトな接地を意識すること」をアドバイスします。そしてその改善につながる、太もも裏やお尻に効くトレーニングを勧めます。

収集できる走行データその1

――よりよい走り方とは、どのようなもの?

アシックスでは「よりよい走り方」として、(1)ダイナミックな動き、(2)効率が良い動き、(3)負担が少ない動きの3要素を大切としています。(1)と(2)はパフォーマンスを向上させるための要素、(3)はケガをしないようにランニングを楽しむための要素です。

ランニングの上級者が長距離を速いタイムで走るには(1)と(2)が重視されますし、初級者がランニングを長く楽しむには(3)を重視して、ケガをしないようにサポートすることが大切だと考えています。

収集できる走行データその2

――ランナーにはどんな効果が期待できる?

ランニングのパフォーマンス向上が期待できることはもちろん、アドバイスを元に走り方を改善したりアフターケアを行うことで、怪我のリスクを軽減することができます。

スマホは持ち歩かなくてもOK

――専用アプリを入れたスマホは、持ち歩く必要がある?

リアルタイムでの音声アドバイスや走行ルートの記録など、一部のサービスは専用アプリをインストールしたスマホを携帯しなければ利用できません。ただ、走行データはセンサーに記録され、後からでも分析できるため、必ずしも持ち歩く必要はありません。スマホを持つとできることが増えるとイメージしていただければと思います。

――センサーの耐久性は?

センサーの最大許容体重は100kgを想定していて、no new folk studioにて、成人男性が想定用途の範囲内で使用しても問題ないように、社内基準を定めて試験をしています。もしも故障した場合、取り扱い説明書に記載の保証の項目に該当する場合は、無償で修理を致します。

実際に搭載するとこうなる

――雨の日は使用できる?

センサーは防水で、防水性能はIPX7に準拠しています。ただ、故障を避けるため、深い水たまりに足を踏み入れるといったご使用は避けていただければと思います。

――センサーは他のシューズにも使用できる?

EVORIDE ORPHEのシューズは、当社の「EVORIDE」というランニングシューズに専用のくぼみを設けた製品です。現状は、このシューズ限定での使用となります。

――スマートシューズはどんな人に使ってほしい?

ランナーの皆さんにはそれぞれ“なりたい自分”がいて、一生懸命努力をされています。しかし同時に、今の自分とのギャップに悩む人も多くいらっしゃいます。そうした悩みを少しでも解決し、ランニングライフを充実したものにするサポートになればと思います。
 

EVORIDE ORPHEは10月18日まで「Makuake」で予約を受け付けていて、販売価格はセンサー、シューズ、専用アプリのセットが3万4650円(税込)。12月からは、アシックスの一部直営店とオンラインストアでの販売も計画しているという。

コロナ禍では感染リスクを避けようと、ランニングをするにも一人になりがちだ。スマートシューズを相棒に、よりよい走りで心身のストレスを発散するのはありかもしれない。
 

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プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。

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