Eggs 'n Thingsに「AIアバターレジ」が登場
飲食店などでも多く見かけるようになったタッチパネルを使った注文。
忙しく動き回る店員に気を使う必要がなく、自分のタイミングでの注文がしやすくなったことだろう。そして今も、このようなシステムはさらなる進化を続けている。
新型コロナウイルスの感染者が日々確認される中、完全非接触型の新しい注文システムが登場したのだ。
カフェスタイルレストランチェーン「Eggs 'n Things(エッグスンシングス)」を展開するEGGS 'N THINGS JAPAN株式会社が、ウェルヴィル株式会社と共同開発したのは、AIを搭載した3Dアバターとの会話で注文などができる「AIアバターレジ」だ。
モニターに映っている人型のアバターと会話をすることで、タッチパネル操作の必要なく料理を注文できる。
そしてこのAIは、対話特有の主語のない言葉やあいまいな注文も理解して応答ができる。さらに途中で急に違う話題になっても会話を戻せるという。また、店舗スタッフがアバターに話しかけることで、店舗ごとに異なる応対を学習させることもできる。
さらには、人感センサーで来店を認識し入店の挨拶対応をしたり、支払い金額を伝えることも可能だ。
客との会話を理解する仕組みは、会話をAIが瞬時にテキスト化。言葉の意味解析を行い、質問・依頼・回答・挨拶・相づちなどの内容に分解して理解する。
あいまいな内容にも対応が可能なのは、AIが言語解析を行っていく過程で、まず省略された文脈(曖昧な発言)
この「AIアバターレジ」は、10月から実証実験を行う。場所はEggs ‘n Things Coffee 御殿場プレミアムアウトレット店の可能性が高く、最低2体のアバターで同時並行的に注文受付できるようにする予定だ。期間は約3カ月程度になるという。
人間と同じような会話で注文などができるのは、たしかに便利そうだ。
しかし、話し方は客によって異なると思うが、AIアバターレジはどこまで理解してくれるのか? AIアバターレジを導入することの利点とは?
EGGS 'N THINGS JAPAN株式会社の荻野忍さんとウェルヴィル株式会社の樽井俊行CTOに話を伺った。
新たな飲食業の姿を創造できないかと開発
ーーAIアバターレジが誕生・導入の経緯を教えて
EGGS 'N THINGS JAPAN株式会社 荻野忍さん:
数年前から人手不足(人件費の高騰)、原材料費の上昇、そして最近では消費税増税等があり、飲食店経営は非常に厳しい状況でした。また、多様化が進み、お客様一人ひとりのニーズに細かく対応するのは難しくなってきていました。
そこでAI・ITを駆使して新たな飲食業の姿を創造できないかと考えて、プロジェクトに乗り出しましたが、当時はコロナのことは想定していませんでした。
人間にできないアバター特有のメリットも
ーーAIアバターでの利点とは?
ウェルヴィル株式会社 樽井俊行CTO:
withコロナの時代に、完全非接触で、アバターが丁寧に誘導しながら注文を聞き出し、誰でも簡単に好きな料理を注文できます。また、お客様が途中で分からないことがあっても、自由に質問して商品の内容を理解できます。
お金の精算も人間が話した内容は全てデータ化されているので、聞き忘れや計算ミスもなく的確に応対できます。
更に、店員の教育面でも全国の店舗に渡ってサービスが標準化されるなど、人間にはないアバター特有のメリットがあります。
ーーどこまであいまいな内容を理解できる?
ウェルヴィル株式会社 樽井俊行CTO:
一般的に発話と言っても日本語が通じる最低限のレベルがありますが、会話の前後関係から来る会話省略部分の穴埋め問題など、いかに曖昧さを解決するかを行っています。
例えば、卵料理の会話をしている際「ほうれん草とベーコンのやつで…」と注文すると「やつ=オムレツ」と認識します。
また、「オムレツのチーズはチェダーとモッツァレラのどちらになさいますか?」という質問に「どう違うのですか?」と主語を省略しても「モッツァレラとチェダーのことでしょうか?」と確認するなどが、例に挙げられます。
ーーAIアバターレジを導入することでどのような効果を想定している?
EGGS 'N THINGS JAPAN株式会社 荻野忍さん:
AIアバターレジをご利用頂くと、お客様のオーダーが口頭で完結します。
コロナ禍において完全非接触型が実現するだけでなく、スタッフは今まで以上にお客様のおもてなしに集中できるようになり、お店のホスピタリティレベルが上がります。
外食産業だけでなく他業種へも想定
ーー10月予定の実証実験への思いを教えて
ウェルヴィル株式会社 樽井俊行CTO:
少しでも早く課題を抽出し、実用化に向けて加速したいです。また、メニュー体系の階層化が大きいことから、注文時の時間的効率性については、システム的に十分考慮していますが、体験してみないとわからない部分があります。
ーー実証実験後の展開は?
EGGS 'N THINGS JAPAN株式会社 荻野忍さん:
Eggs ‘n Thingsの店舗での実証実験を元に早期実用化を目指します。また外食産業だけでなく他業種へのサービスの展開も広げていきたいと考えています。
ーー今回の試みに込めた思いとは?
EGGS 'N THINGS JAPAN株式会社 荻野忍さん:
お客様に対しては個々の趣味嗜好を把握したサービスの提供の実現と、コロナ禍でも安心安全な環境提供やスマートなサービスの実現。
飲食業に対しては、単純作業をITに移行することで、空いた時間でお客様へのさらなるホスピタリティに専念できる職場環境の実現や、他業種と連携し互いのお客様を獲得し、ロイヤリティを向上させる仕組み作りの実現をというCustomer Along Serviceを通じて、お客様一人ひとりの期待を超越し、新しい価値を創造していきたいです。
それが、外食産業が次のステージに進み、生き残りを可能にするという思いで取り組んでいきます。
ちなみに、AIアバターレジを使用する際の注意点を伺ったところ「お客様が注意することはありませんので、気軽にご利用いただけます」とのことだ。
またEGGS 'N THINGS JAPANでは「AIアバターレジ」に加え、テーブル上にあるQRコードからメニューを読み取り、オンライン上で注文・決済できる「テーブルオーダーシステム」や、注文した客にコイン状の端末を渡し、どのテーブルに座っているかを店舗従業員がタブレット上で把握することができる「カスタマートラッキングシステム」などの導入も予定している。
なお現在のところ、「AIアバターレジ」ができるのは注文メニューの金額を計算して伝えることまでとなる。将来的には自動支払い機能も搭載予定だという。
開発のきっかけは“AI・ITを駆使して新たな飲食業の姿を創造”だったが、新型コロナウイルスが広がる今、より需要のあるシステムとなるのかもしれない。
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