ついに北陸新幹線が金沢から敦賀まで延伸。名実ともに北陸3県を結ぶ北陸新幹線となった。
北陸新幹線の開業効果を、能登半島地震の被災地復興への力としなければならない。各地ではさまざまなイベントが開かれ、多くの芸能人が開業を祝福した。

多くのファンに見守られ…ラストラン

3月15日、開業前日にもかかわらず、金沢駅は異常なほどの混雑となっていた。

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その理由は、新幹線の延伸による、石川県内を走る「サンダーバード」と「しらさぎ」のラストラン。最後の勇姿を一目見ようと鉄道ファンが詰めかけた。

JR西日本・漆原健金沢支社長:
きょうのこの日に、これだけ多くの皆さまにお越しいただいたということで、あらためてしらさぎ、サンダーバードが皆さまに愛された特急列車だったんだなと、今、しみじみ感じております。

そしてついに迎えたサンダーバードのラストラン。多くの鉄道ファンに見守られながら、サンダーバードはホームを出発した。

滋賀県からサンダーバードで来た親子:
きょう卒業式だったんです。その卒業記念ということで、好きな電車がなくなるので、じゃあ乗るかってことで。

また、子どもと一緒にしらさぎに乗って金沢駅に来た母親は「(子どもの)成長を鉄道とともに見てきました。なんかもう言葉にならないや」と涙ながらに話した。

3月16日午前1時半、北陸新幹線の敦賀延伸で、県内の在来線はJRから「IRいしかわ鉄道」へと移り変わった。石川県にとって第2の開業となる金沢敦賀間開業までまもなくだ。

金沢駅よりつるぎ1号が出発
金沢駅よりつるぎ1号が出発

午前6時。まるで9年前に戻ったかのような熱狂の日が再び幕を開けた。
「出発進行!」の合図とともに、金沢より西に向かう初めての北陸新幹線、つるぎ1号が金沢駅から出発した。

金沢開業から9年、いよいよ迎えた県内全線開業。
遠く敦賀へ伸びる線路が誘うのは、新しい北陸の未来だ。

午前7時の金沢駅の改札前は、金沢駅に到着した人でいっぱいになっていた。

敦賀から1番列車に乗ってきた人:
9年前の金沢の時も、その時は一人でうろうろしていたんですけど、きょうは家族と一緒に過ごせて、あの時のことが懐かしくもあり、きょうもにぎわっていていいなと思ってます。

開業式典で馳知事は「ふるさとの春 新幹線 能登半島」と得意の1句を披露。「この春を、何としても能登半島にも届けなければなりません」と、被災地に対しての思いを語った。

復興への思い込め打ち鳴らす太鼓の音

新幹線を復興の光に。金沢駅鼓門では輪島の「御陣乗太鼓」のステージパフォーマンスが行われ、能登復興への願いを込めた太鼓の音が響き渡った。

金沢駅鼓門での御陣乗太鼓のステージパフォーマンス
金沢駅鼓門での御陣乗太鼓のステージパフォーマンス

約450年前から輪島市名舟町に伝わる御陣乗太鼓。地震による土砂崩れなどで地区は一時孤立。
打ち手は金沢などに避難し、バラバラになってしまった。

それでも名舟から太鼓を運び出し、地元から約150km離れた白山市で練習を重ね、この日を迎えた。

復興への願いが込められた圧巻の演奏。能登を思う気持ちは観客にもしっかりと届いたようだ。「もう素晴らしかった!もう一度まだまだ見たいと思った」「能登の復興の象徴になるかなと思う。これからまた頑張ってほしいなと思う」と強く、温かく、優しい拍手が沸き起こった。

気迫あふれる演奏を終えた、御陣乗太鼓の打ち手の江尻浩幸さんは「気持ちよかった。ちょっとでも元気見せられたかなと思いながら、くたくたやったわ。みんなに元気な顔を見せてもらったらこっちも元気になった。まず、(加賀地方の)大丈夫なところが元気でおってもらわなならん。それに追いつくように頑張りたい」と復興への思いを語った。

「まるで小松が東京になったみたい」

午前5時26分、小松駅新幹線改札のシャッターが開いた。ついに小松駅に北陸新幹線が到着した。セレモニーにはSixTONESの森本慎太郎さんが招かれた。

SixTONESの森本慎太郎さんもセレモニーに参加
SixTONESの森本慎太郎さんもセレモニーに参加

小松市の宮橋市長は「本当に万感の思いというのはこのことだなと思う。ある意味、小松がこの石川県の元気の源になれるように頑張っていきたい」と今後の意気込みについて語った。

小松市民も「やっぱうれしい!」「かがやきが一番大好き!」と大歓迎の様子。

そして、ついに東京からの一番列車が小松駅やってきた。その姿をカメラにおさめようと、多くの鉄道ファンが線路沿いに訪れていた。

鉄道ファン:
北陸本線120年の歴史の中で、この瞬間に立ち会えたという喜びの感情でいっぱいです。

小松市出身の東京からの乗客は「(切符はすぐ買えた? )頑張って取りました!小松が実家なので帰省です。小さい時から東京までつながる新幹線が将来できるんだよって言われて育ったので、非常に感慨深い」と話した。

小松駅前は、飲食ブースなどが設けられ、大にぎわい。
ステージでは、市の応援隊長「ポムポムプリン」も会場を盛り上げた。

小松市菓子業組合・長池理事長:
すごいですね、まるで小松が東京になったみたいですね。プリンもできましたんで、すごいいい気分といいますか、ワクワクしていますね。

松任谷夫妻が開業を祝福

さらに、小松駅前の龍助町商店街で行われたイベントも大にぎわい。会場には能登ブースも設けられ、地震で被災した珠洲市から4つの店が出店した。

珠洲市から出店・影田奈央子さん:
すごいお客様の人数ですごくにぎわっていて、いろんな方に応援の言葉もいただけてすごい元気が出ました。

さらに午後からは、航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」による展示飛行が行われ、小松駅の上空で6演目が披露された。

この展示飛行に合わせて、中部航空音楽隊がスペシャルコンサートを開催。松任谷由実さんが作曲した小松駅の発車メロディーが演奏された。すると…

アナウンス:
松任谷正隆さん、由実さんです、どうぞ!

松任谷さんと、夫で編曲を担当した正隆さんがサプライズで登壇した。

松任谷正隆さんは「松任谷っていう名前は石川県の名前なんです。だから僕の血のつながった親戚は石川県にルーツがあるんです。なので家に帰ってきたみたいな感じもします」と石川県と自身の関わりについて説明。

松任谷由実さんは「このたびの震災は本当に心が痛みました。ぜひ、前を向いて空を見上げて進んでいってほしい。一緒に頑張りましょう」と被災地にエールを送った。

グッチ裕三さんらが出発に花を添えた
グッチ裕三さんらが出発に花を添えた

そして、新幹線は加賀温泉駅に到着。加賀温泉駅では、義理の母が加賀市出身のグッチ裕三さんらが出発に花を添えた。

東京から来た人:
初物とかもっと頻繁に食べに来たいな。カニとか季節限定じゃないですか、結構逃しちゃうことが多かったので、ちょくちょく来れるかなと期待しています。

加賀市出身の人:
夢でしたね、金沢開通してからもう10年近い、やっとという感じ。出身の山代温泉が盛り上がっていけばうれしい。

加賀温泉駅前で開かれた開業記念イベント
加賀温泉駅前で開かれた開業記念イベント

駅前で開かれた開業記念イベントには、加賀の伝統工芸・山中漆器や九谷焼、地元食材やグルメがずらりと並び、にぎわいを見せていた。

訪れた人たちも「思っていた以上に盛り上がっているので来てよかった」「楽しかったです、東京まで新幹線に乗りたい」「にぎわっているというのは元気の証しかな、これでいっぱいのお客さんに来てもらって、町がにぎやかになるといいなと思う」とイベントを満喫したようだ。

被災した七尾市から出店した店には行列が
被災した七尾市から出店した店には行列が

そんな中、行列ができていたのは、能登半島地震で被災した七尾市の能登食祭市場から出店した店だ。
現在も休業が続く中、急遽イベントの参加が決まった。

鹿渡島定置・高橋洋一社長:
石川県延伸ということでにぎわって、私たちもまだ商売できていませんが、こういうかたちでたくさんの人に喜んでいただければと思います。

タップダンスで地元を盛り上げ

この日に合わせ加賀を盛り上げようと、アビオシティ加賀で披露されたのはタップダンス。
小学生から74歳までの女性40人が、この日のために3カ月半にわたり練習してきた。

小学生から74歳までの女性40人がタップダンスを披露
小学生から74歳までの女性40人がタップダンスを披露

彼女たちのダンスは被災した人にも元気を与えていた。

輪島から二次避難している人:
避難所にも彼女ら練習のためということで見せていただいたんです。レディ加賀のみなさんたちのいろいろ頑張っている姿を見ると、あすへの活力がわきますね。

出演者:
めっちゃ緊張しました、加賀温泉駅を盛り上げよー!という気持ちで踊りました。

そして、誰でも自由に弾けるピアノとして「山中塗」を施したアップライトピアノが寄贈されると、スペシャルゲストのハラミちゃんが登場! 

ピアニストでYouTuberのハラミちゃん
ピアニストでYouTuberのハラミちゃん

ハラミちゃんは、ストリートピアノを演奏する動画が話題となり、テレビなどでも活躍しているピアニストでYouTuber。観客のリクエストに応え、即興も披露した。

ハラミちゃん:
おめでたい輝かしい未来への新しい一歩の日に、最初の人として演奏させていただいて光栄な気持ちでいっぱいです。加賀温泉駅にも一駅なので、温泉に入りたくなったら東京からすぐなので、気軽に来たいと思います。

気になる乗り換え時間…実際に計測!

新幹線は新たな終着駅、敦賀駅へ。

俳優の中条あやみさんがセレモニーに出席
俳優の中条あやみさんがセレモニーに出席

JR西日本のCMに出演している、俳優の中条あやみさんが大役を務めた福井県の敦賀駅。
駅のデザインコンセプトは「空に浮かぶ~自然に囲まれ、港を望む駅~」。

駅舎の高さは約37メートルで12階建てのビルに相当し、整備新幹線の駅の中では日本一の高さとなっている。

ここで石川県民が最も心配しているのが、新幹線と特急の乗り換えだ。JRの想定する標準乗り換え時間は8分。実際に何分で行けるのか計ってみると…。

リポート:
到着しました。ここまでで約3分といったところですね。たくさんの方が利用されていましたが、まだ余裕がありそうです。

実際に乗り換えの移動をした人からは「初めは7分後に出発する列車では大変だろうということで、17分間隔があいている次の列車にしたら十分間に合うなと思いました」「当初は乗り換えに時間がかかるって言ってましたけど、全然問題ないです。前が長すぎたんで(金沢まで)3時間くらい乗らなきゃいけなかったので、今の方がいい」と喜びの声があがった。

一方で、「子どもは新幹線に乗れるので楽しくていいが、乗り換えの回数が増え、お金の面でも出費が増えるので、そういう面では…ちょっとどうかな」「サンダーバードだったらそのまま一本で行って、ぐーすか寝たりとかできて快適に移動できていたが、乗り換えっていうのはちょっとしんどいところがあるかもしれない」「乗り換えだと荷物を持って移動しないといけないので」などの声も…。

子ども連れや荷物を多く持った人にとっては、乗り換えは課題のまま。一刻も早い大阪延伸が望まれている。

(石川テレビ)

石川テレビ
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