FNNの3月の世論調査で、岸田内閣の支持率は23.2%で、2月より0.8ポイント上がったものの、内閣の“危険水域”と言われる支持率3割を割り込む“危機”は5カ月連続となった。
(3月16、17日、全国の18歳以上の男女を対象、電話世論調査)
この記事の画像(13枚)自民党支持率は0.7ポイント下落、岸田政権で過去最低、こちらも5カ月連続して2割台にとどまった。
政治倫理審査会での説明に、9割の有権者が「説明責任果たしていない」
派閥の裏金問題の真相が、当事者から語られるのかが注目された政治倫理審査会が衆議院、参議院で開催された。安倍派・二階派の幹部など“不記載議員”への質疑が延べ3日間にわたりテレビ中継入りで行われたが、真相解明に向けた説明責任について「十分果たした」との答えはわずか0.6%、「ある程度果たした」も7.8%止まり、「あまり果たしていない」30.2%、「全く果たしていない」58.5%と9割近くが「説明責任を果たしていない」という評価だった。内閣支持率の低迷が続いた評価の最大の要素と言える。
派閥の裏金問題が発覚して以降の世論調査では、有権者が強く求めるものは、裏金問題の真相解明、不記載議員の処分、再発防止のための政治資金規正法改正などルールの厳格化だったが、岸田政権・自民党は有権者の要請に応えていない形が浮き彫りになった。
裏金の原資は、派閥の政治資金パーティー券収入、つまり自民党支持層が支払った金となるが、その自民党支持層からの評価についても「十分果たした」1.9%、「ある程度果たした」19.0%、「あまり果たしていない」38.0%、「全く果たしていない」33.5%で「果たしていない」との答えが、7割を超え厳しい声は、自民党支持層からも突きつけられた結果となった。
【政倫審での説明責任】
全体 自民支持層
十分果たした 0.6% 1.9%
ある程度果たした 7.8% 19.0%
あまり果たしていない 30.2% 38.0%
全く果たしていない 58.5% 33.5%
安倍派“不記載議員”には「全員処分」を求める声
安倍派・二階派で80人あまりの“不記載議員”に対する処分について、誰が処分の対象となるべきかを聞いたところ、「全ての不記載議員」60.8%、「派閥の幹部議員」30.9%、「処分の必要はない」6.2%となった。同じ質問を、政治倫理審査会が開かれる前の2月調査でも行ったが、先月当時は「全ての付記債議員」55.2%、「派閥の幹部議員」34.4%、「処分の必要はない」9.2%との回答を得ていて、政治倫理審査会が行われた結果、全ての付記債議員を処分するべきとの意見が5ポイントほど増えた形となった。
こちらも、自民党支持層に限って、裏金問題の処分すべき対象を聞いたところ「全ての付記債議員」が38.8%、「派閥の幹部議員」41.2%、「処分の必要はない」16.9%となり、自民支持層は、派閥幹部が処分されるべきだとの意見が最も多い結果となった。
【不記載に対する処分対象】
全体(2月) 自民支持層
全ての不記載議員 60.8%(55.2%) 38.8%
派閥の幹部議員 30.9%(34.4%) 41.2%
処分の必要は無い 6.2%(7.7%) 16.9%
議員厳罰化の自民党則改正 再発防止には“懐疑的” 自民層は“一定評価”
3月17日、自民党が都内で開いた年に1度の党大会では、政治とカネに自民党がどう対処するかが最大の課題となった。自民党総裁の岸田首相は登壇し、冒頭「一部の派閥の政治資金に関わる問題によって、国民から多くの疑念を招き、深刻な政治不信を引き起こす結果となっている。党総裁として国民の皆様に心からお詫び申し上げる」と謝罪し「深い反省」を表明した。
党大会では会計責任者が政治資金規正法違反で逮捕・起訴された場合、議員本人に「離党勧告」や「党員資格停止」などの処分を行えるよう、議員に対する党則の厳格化が決定した。こうした、議員ルールの厳格化で自民党での政治とカネの問題の再発防止につながるのか、世論調査で聞いたところ、「大いにつながる」3.7%、「ある程度つながる」32.6%、「あまりつながらない」34.8%、「全くつながらない」26.3%となり、「再発防止につながらない」との意見があわせて6割近くにのぼり、自民党に対する根深い政治不信が示された。
党大会での党則改正と、再発防止について、自民党支持層はこれをどうみたのか、自民支持層に限ってみてみると、再発防止に「大いにつながる」5.5%、「ある程度つながる」43.5%、「あまりつながらない」31.7%、「全くつながらない」15.7%となり、再発防止に「つながる」との答えが半数に、「つながらない」との意見と二分した。
【党則改正で“政治とカネ”の再発防止】
全体 自民支持層
大いにつながる 3.7% 5.5%
ある程度つながる 32.6% 43.5%
あまりつながらない 34.8% 31.7%
全くつながらない 26.3% 15.7%
自民党青年局の“過激ダンスショー懇親会”が政治不信の追い打ち
派閥裏金問題で自民党への政治不信が高まる中、自民党に新たな問題として発覚したのが、自民党青年局が近畿ブロック会合で行った“過激ダンスショー懇親会”だ。
2023年11月に、和歌山県で開いた会合後の懇親会に、肌の露出の多いダンサーを招いた懇親会を開いていたことが明らかになり、青年局長らが役職辞任した。懇親会について「不適切だった」との答えが86.7%、「適切だった」との答えは9.3%にとどまった。特に女性の有権者からは「不適切」との答えが90.7%に上った。世論調査では、賛否がある程度分散するケースが多く、一つの意見が、9割を越えるのは稀で、女性有権者は自民党の“過激ショー懇親会”に強い拒否感を示した。
【自民青年局のダンスショー懇親会】
全体 女性
適切 8.4% 5.8%
不適切 86.7% 90.7%
次の総裁候補「高市経済安保相」「上川外相」にも2ケタ台の高い支持
派閥裏金問題での対処に厳しい評価が続き、あらたに“過激ダンスショー”の不祥事発覚と、自民党への政治不信が続く中、岸田首相の自民党総裁任期が3月で残り半年となった。「次の自民党総裁にふさわしい人物」について調査を行った。(コンピューターがランダムに選んだ順番で読み上げ質問)
最も多かった順番に「石破元幹事長」20.1%、「小泉元環境相」15.1%、次いで、この質問でも2月の「次の首相にふさわしい人」の質問でも3番目につけた「上川外相」8.4%、「河野デジタル相」8.3%、「高市経済安保相」7.6%、「菅前首相」5.5%、「岸田首相」は4.1%で7番手となった。以下、「林官房長官」1.5%、「茂木幹事長」と「野田元少子化相」が1.2%で並んだ。
「次の総裁」について、党員投票として、総裁選の投票権を握る自民党支持層はどう見ているのか、自民支持者に限って分析してみると、最も高いのは「小泉元環境相」19.8%、“次の総理”では1番手が定位置の「石破元幹事長」は2番手の17.6%だった。
次いで「高市経済安保相」が3番手に入り10.6%、「上川外相」も2桁支持の10.1%を得た。「岸田首相」は自民支持層に限った結果では5番手に浮上し9.2%となった。
岸田内閣の支持率は、3割台を切る“危険水域”が続いているものの、いまのところ表だって“岸田降ろし“は見られない。水面下では、世論調査で支持が高い石破氏を押す声や、ライジングスターさながら、年明け以降、急浮上している上川大臣、勉強会を開く高市経済安保相など、個別の思惑は多数あるものの、岸田首相が、起死回生に向けて十分手を打っている、との意見も出るなど、続投、新顔含めて総裁選の見通しで軸が定まるには至っていない。
次の政治日程の節目となるのが、4月28日に、東京15区、島根1区、長崎3区の3選挙区で予定される衆議院の補欠選挙だ。自民党にとっては、逆風の選挙となる中、結果を受けて、総裁選争いが本格化することになる。
【次の自民党総裁にふさわしい人】
全体 自民支持層
石破元幹事長 20.1% ②17.6%
小泉元環境相 15.1% ①19.8%
上川外相 8.4% ④10.1%
河野デジタル相 8.3% ⑥8.9%
高市経済安保相 7.6% ③10.6%
菅前首相 5.5% ⑦6.0%
岸田首相 4.1% ⑤9.2%
林官房長官 1.5% ⑨0.8%
茂木幹事長 1.2% ⑧1.6%
野田元少子化相 1.2% ⑩0.2%