鹿児島では多くのラーメン店で大根の漬物が出される。お茶請けとしても定番の漬物だが、生産量は減少傾向で、「塩分が多いのでは?」と敬遠されがち。そんな現状を打破すべく挑戦している人たちがいる。

全国的に進む“漬物離れ”

なぜ鹿児島のラーメン店では大根の漬物が出るのか。街頭で聞いても「わからないです」「味変(あじへん)するとき1回休ませるためですかね?」「あんまり考えたことないです」といった答えばかり。指宿市で人気のラーメン店「TAKETORA」の嶽川純理さんも「何でですかね?当たり前のように出しています」と、理由まではわからなかった。

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そこで訪ねたのは、鹿児島・指宿市山川にある漬物製造会社「中園久太郎商店」。社長の中園雅治さんは「全日本漬物協同組合連合会」の会長を務める漬物業界のトップだ。ラーメン店で漬物が出る理由について、「注文をしていただいてからラーメンが出るまでの間に『備えつけの漬物をどうぞ食べておいてください』という、おもてなしの気持ちから出している」と、明解な答えが返ってきた。

鹿児島ではおもてなしとしても出てくる漬物。特に「干したくあん」は鹿児島・宮崎で全国のほぼ100%が製造されていて、南九州の特産品だ。

中園久太郎商店は創業112年。かめつぼに漬け込んだ「山川漬」は鹿児島県民おなじみの味。その製造工程は大部分が機械化されているが、塩分を落とす「脱塩」や大根のひげ抜きは、今も手作業だ。

20以上の工程をへて作られる「山川漬」。中園社長は「(山川漬は)昔から作っているんですけど、乳酸を発酵して独特の風味がのってくる。芸術品ですね」と胸を張って語った。

全国の漬物生産量の推移
全国の漬物生産量の推移

しかし農林水産省の統計によると、漬物生産量は全国的に減少傾向が続いている。中園社長も「若い世代が(漬物を)食べてくれない。消費量が減っている」と嘆く。
街頭で話を聞いても「あんまり食べない。わざわざ買ってまで家では食べない」、「家では食べないけど、おばあちゃんの家に行ったら食べる」と、“漬物離れ”が進んでしまっているようだ。

時代に合わせ進化する漬物

そんな漬物界の未来を切り開こうと意気込むのが、薩摩半島南部・南さつま市金峰町にある「水溜食品」。
80年以上の歴史があり、現在の社長・水溜光一さんは父親から家業を引き継いで1年になる。

水溜食品・水溜光一社長:
昔のやり方にとらわれすぎると改善も進まない。やはり、時代に合わせて行かないといけない

冷蔵庫の温度もデジタルで管理
冷蔵庫の温度もデジタルで管理

水溜食品では“漬物離れ”という課題に最先端の技術で立ち向かうべく、製造工程のデジタル化を進めている。
冷蔵庫の扉にある「QRコード」は温度管理が目的だ。漬物作りは温度管理が非常に大切で、大根が凍らず、最もうまみが出る温度帯の-1度をキープして管理している。

漬物といえば気になるのが塩分。全日本漬物協同組合連合会によると、1960年代の漬物は食塩濃度が12%を越えていた。しかし製造技術の進化で、現在は塩分濃度が3%を切るところが多くなっている。水溜食品でも少量でうまみを出すため岩塩を使い、デジタル化による緻密な温度管理により、味を落とすことなく塩分を2%にまで落とした商品を開発した。

手軽に食べられる新たな商品
手軽に食べられる新たな商品

さらに、現代のライフスタイルに合わせ、個別包装になっていて手軽に食べられる商品も開発。全国で人気を呼んでいるという。「時代に合わせた商品の提供、働き方に変えていく。人や野菜の可能性をもっと開くということを具現化して実行に移していきたい」と水溜社長は目を輝かせた。

中園久太郎商店でも、漬物離れを払拭(ふっしょく)しようと新たな提案をしている。SNSで漬物を使った肉まんやグラタンなどのアレンジレシピを紹介し、漬物の使い勝手のよさをアピールしている。

漬物本来の伝統や価値観を大切にしながらも、時代に合わせた取り組みがこれからの漬物業界の未来を担う一手となりそうだ。

(鹿児島テレビ)

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