空き時間ができた時に、「履歴書もなし、面接もなしで、さくっと1時間アルバイトをする」、そんな新しい働き方に注目が集まっている。
3月には大手フリマサイト「メルカリ」もこの事業に参入。「スキマバイト」は、働き手と事業者にどんなメリットがあるのか。
【動画】急成長する『スキマバイト』 履歴書・面接なしで"空いた時間"に
■スキマバイトアプリ登録者は5年間で4.5倍に

豊田陽さん:おはようございます。『メルカリ ハロ』から参りました豊田です。
飲食店のスキマバイトにやって来たのは、普段はイラストレーターとして働く豊田さん。
豊田陽さん:きょう一緒に遊ぶ予定だったお友達が『予定なくなってごめん』ってドタキャンされちゃったんで、このお仕事入れました。
突然空いた時間をアルバイトに充てることにした。この日は客席を拭いたり、商品を提供したりといった仕事だ。2時間半の仕事で3500円の報酬だった。
男性が利用したのはフリマアプリ「メルカリ」が3月からサービスを開始したスキマバイトアプリ「メルカリ ハロ」。履歴書も不要、面接も不要で、最短1時間から、その日だけのアルバイトを探すことができる。
他にも、スキマバイトを探すアプリは「タイミー」「シェアフル」「LINEスキマニ」といったものがあり、市場は急拡大中。アプリに登録している人は、2月時点で延べ約1500万人いて、5年間で4.5倍に増えた(※提供:スポットワーク協会)。
「短時間働きたい人」と「短時間働いてほしい業者」をマッチングさせるスキマバイトサービス。学生や、パートを探す主婦だけでなく、副業を探す会社員も利用していて、「タイミー」では、700万人以上の登録者のうち約3割が会社員だということだ。
■会社員でもスキマバイトする人が増加

今年の春闘では、大企業を中心に満額回答が相次いでいますが、中小企業への波及は未知数だ。
20代会社員:(満額回答は)私には縁のない話だな、毎月赤字みたいな。
20代会社員:お給料は変わらないし、副業するのが主流になってくるのかな。スキマ時間にちょこっと。
会社員でもスキマバイトする人は増えている。
タイミーでスキマバイトする会社員:月曜日から金曜日はふつうにOLをしています。子供たちが大きくなるにつれて、スキマバイトを始めてみようかなと思って。
2人の子育てをする30代の女性。平日に事務職の仕事をしながら、週末の空き時間にはスキマバイトをして、月3万円の副収入を得ている。
タイミーの担当者も副業としてのスキマバイトの需要を感じている。
タイミー広報 松本知世さん:最近は企業の中でも副業を解禁するような流れもございますので、やはり副業を始めやすくなっているトレンドがあるかなと思います。スポットワークで、体験的に別の仕事をしてみて、自分の新しい才能を発見したりする機会にもなるのかなと思いますね。
■慢性的に人手不足が続く飲食業界は大助かり 人件費抑制できるメリットも

バイトを求人する事業者にはどんなメリットがあるのか。飲食業界は、慢性的に人手不足が続いている。ピーク時には、店が回らなくなることもあり、そんな時にスキマバイトに頼るということだ。
豚足ホルモン小林商店 小林孝司店主:今でしたら特に求人かけても、集まらないという状況の中、きっかけとしてはそれが一番最初のスタートだと思います。
募集をかけてやって来たのはタイミー登録者の新里健太さん(40)。お店の小林さんが、新里さんのアプリのQRコードを読み取って、さっそく仕事に取りかかってもらう。
豚足ホルモン小林商店 小林孝司店主:(掃除を)ダクトの上してほしい。あとこことか、こことか…
この日は店長が仕込み作業に追われるため、店の清掃を新里さんに依頼した。新里さんは家族が病気になり、フルタイムで働くことが難しくなったことから、1年半ほど前にタイミーに登録。こちらの店での勤務は12回目だ。
新里さん:(Q油汚れ大変ですか?)油は大変だと思います。
アプリ内で店側は登録者の評価を確認でき、登録者も店側の評価を見ることができるので、ミスマッチを防ぐことができるという。
新里さん:できました。お疲れさまです、ありがとうございます。
この日の新里さんの勤務は2時間半で報酬は3250円。すぐに口座に振り込まれた。
新里さん:時間をやっぱり家族に使いたいと思った時に、空いてる時間を埋めれるのはすごいありがたかった。選べる魅力もありますけど、やったことない事でもどういう感じの仕事かなって知ることができるんで、それはいいところではあるかな。
店側にとっての最大のメリットは人件費の抑制だ。固定でアルバイトを雇うよりも、忙しい時間だけスキマバイトを依頼するほうが、効率よく人件費を活用できる。
豚足ホルモン小林商店 小林孝司店主:僕は求人のインフラ自体がタイミーさんなっていくんじゃないかなと思ってる。割と求人のイノベーションが起きてるんで、それに僕らもついて行かないと。
新しい働き方としての「スキマバイト」。時代が求める働き方のスタイルになるかもしれない。
■スキマバイトの求人には資格が必要な職種もある

実際にスキマバイトにはさまざまな求人があるとのことだ。
・レストランの皿洗い、100円ショップの品出し。
・果樹園でリンゴの間引き、オクラの収穫なども。
農業の求人は、タイミ―で2022年~2023年の間に4.3倍にもなったということだ。
・カット専門店で理容師、美容師の求人
・介護施設で入浴介護などのヘルパーの募集
・保育士、トリマーなど
このような資格が必要な専門職の求人もあるということだ。免許は持っているけど、フルでは働けないという人たちが、スキマ時間で働くこともできることになる。
短い時間でも働いてほしい・働きたいという、需要と供給がマッチしているわけだが、スキマバイトには他の効果もあるという。
関西テレビ 加藤報道デスク:短期はもちろん、長期の労働力不足の解消にもつながるといわれています。タイミーですが、スキマバイトで働いた方と企業の双方が長期で雇用を希望した場合は『引き抜き』可能なんです。その場合タイミーは紹介料や報告義務などもないということです。実際に利用された方の半数以上が、『働きやすい職場に出会えたらそのまま長期雇用で働いても良い』と回答しているので、企業側が優良な働き手を見つけるきっかけになるということです。
■タイミー登録者の3パーセントは60代以上

どういう方がスキマバイトを利用するのか、ちょっと意外なデータがある。タイミーの登録者700万人のうち、3パーセントは60代以上だという。60代以上の方には、例えば物流の軽作業、ドラッグストアやスーパーでの小売業、クリーニング工場などのスキマバイトが人気だそうだ。
スキマバイトの広がりは、社会にどんな影響を与えると考えられるのだろうか。
大阪大学大学院 安田洋祐教授:日本だと仕事を移り変わっていくっていうのが難しい、転職市場が流動化されていない。その中で副業を中心に一人の人がいろんな仕事ができるようになってくる。それだけニーズがある。こういったマッチングサービスが増えて、適材適所で活躍の場が広がっていくのはすばらしいことだと思います。
■マッチングサービスは「働き手と雇用する企業」双方に新たな可能性生み出す

大阪大学大学院 安田洋祐教授:考えてみれば、今この時間も僕にとってはスキマバイトみたいなもの(大学教授でテレビの仕事をしている)。プロジェクトごとにいろんな分野の専門家が集まって一つのものを作り上げる(テレビ番組もその一つといえる)。考えてみれば当たり前なんですけれども、従来はなかなか難しかったところに、新しい技術や、マッチングのきめ細いサービスが生まれることによって、軌道に乗り始めたということですね。
何か課題はあるのか?
大阪大学大学院 安田洋祐教授:一番重要なのは一回だけの雇用だと思ってトラブルが起きるリスクがあると思います。そこはマッチングサービスが間に入っているからこそ、被害を最小限にできるんじゃないかと思います。登録しているので、『この人はこういう問題があります』と口コミのようなものが書かれて、次に働く機会が制限されますよね。そういった評価形成とかがうまく機能しているうちは安心じゃないかなと思いますね。
働き手と雇用する企業がうまくマッチングされると、双方にとって新たな可能性が出てくるかもしれない。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年3月19日放送)