能登半島地震の影響で、いまなお多くの人が不自由な暮らしを強いられているが、発生後間もないころは被災地に届いた善意の支援物資が、逆に避難所を悩ませる事態になることもある。そうしたミスマッチを避けようと、愛知県清須市の「コケナワ」が被災者と支援物資を繋ぐ「マッチングサイト」で無駄をなくそうとしている。

現地のニーズに合わせて「必要なとき・必要な場所」へ…

金沢市でレストランを経営するシェフの川本紀男さんは1月、自身も被災した身でありながら、約3時間かけ避難所で炊き出しにあたっていました。

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このころ、避難所には個人や民間企業から送られてきた支援物資が山のように積まれていたが、川本さんは困っていた。

川本紀男さん:
食べられるものが一個もないもんね。バナナしかないよ。晩御飯を作る材料がほとんどない

例えば要冷蔵のものがあったが、冷蔵庫がなく全て廃棄されていた。

川本紀男さん:
ノロ(ウイルス)とか食中毒とか一番気にしているから、出したくても出せない

賞味期限が切れたレトルト食品もあった。

一方的に置いていかれた支援物資もあり、品質がわからないものもあることから、扱いに頭を痛めていた。

このように支援物資が無駄にならないように、愛知県の会社が、本当に必要な物資を届けるために活動をしていた。清須市の「コケナワ」は小型の携帯トイレなど、防災グッズの製造販売を行う企業だ。

その倉庫には、衣服やマスク、お菓子に生理用品まで。すべて支援物資だ。

コケナワホールディングス代表取締役・苔縄義宗さん:
全国各地から支援を希望される方の登録をいただきまして、現地のニーズに合わせて「必要なとき・必要な場所」に物資を送る活動をさせていただいています

スタッフは、スマホを見ながら支援物資を詰めていきます。

このスマホに写っているのは、この会社が作った「デジタル大使館」というサイト。被災者と支援者をつなげる、いわゆる「マッチングサイト」だ。

支援をしたい人は水や食料など、支援物資を登録する。登録されたものは一覧になり、自由に見ることができる。被災した人は、その中から欲しいものを選び、「マッチング」が成立すると、支援者から物資がコケナワに送られ、仕分けをして被災地に送られるというシステムだ。

苔縄義宗さん:
義援物資が足りないという状況が現場では起こっています。一方、支援をしたい人が闇雲に物を送ってしまうと、物流の混乱や不要なものが届くなどの矛盾があった

その矛盾を解決しようとサイトを立ち上げたところ、企業など200社や、個人約400人から、1万7000点以上の物資が登録された。このサイトを運営して、「被災地」のニーズの違いを感じたという。

苔縄義宗さん:
奥能登地域ではまだまだ被災状況がひどくて、断水・停電が続いておりますので、非常用トイレや衣服や食料が求められています。一方、中能登や停電・断水が復旧しつつある地域では、日用品が不足していることも

枕カバーやペットフード、靴といった需要もあった。このシステムにより、被災者が本当に必要なものを届けることができるようになったが、問題点もある。

苔縄義宗さん:
今日も米が届いているんですが、精米してないものなんですね

「米」として登録された物資を支援に送ってもらったところ、実際は「玄米」が届いてしまったという。

苔縄義宗さん:
ご支援の気持ちは本当にありがたいし、助かっていますが…。我々で精米して送るとか、そういうこともしております

また、被災地に輸送するコストも大きな問題だ。

苔縄義宗さん:
だいたい300万円くらい自社で負担しながら運営しています

支援者からコケナワに物資を送るときは、支援者に負担してもらっているが、コケナワから被災地への輸送は、会社が全額負担している。持続可能なモデルを作ることが課題だ。

苔縄さんは義援金や寄付金を、コケナワを介して受け付けたりするなどして、配送費の負担を軽減したいと話している。

2024年1月19日放送

(東海テレビ)

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