2024年1月、島根・松江市の中心部に小さな図書館がオープンした。個人が運営する「私設図書館」だが、本棚の“オーナー”制を取り入れ、様々な人たちが思い思いの本棚を作っている。山陰では初めてというユニークな図書館をJALふるさと応援隊・安藤綾子さんが取材した。

山陰地方初「一箱本棚オーナー」

松江城からも近い商店街の一角に「すきがあつまる みんなの図書館 たう」が、2024年1月にオープンした。取材に訪れたJALふるさと応援隊・安藤綾子さんは、「白を基調とした落ち着いたすてきな空間となっています」と、その雰囲気が気に入った様子だ。

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個人で運営する私設図書館で、公立図書館と比べると小規模だが、絵本に小説、図鑑など幅広いジャンルの本が約1000冊並んでいた。安藤さんは「本棚に木のおもちゃが置いてあって少し変わっていますね」と、他の図書館では見られないユニークな仕掛けに気づいた。

すきがあつまる みんなの図書館 たう・松浦みどりさん:
こちらは手作りのおもちゃが大好きで、子どもたちに手作りの良さを知ってほしいというオーナーさんが、「色」の本や紙コップで自分で作れる工作の本を思いを持って置いている“本棚オーナー”の棚になります。

松浦さんは、実姉の峠優子さんと一緒にこの小さな図書館を立ち上げた。実は、この図書館の本棚にはそれぞれ“オーナー”がいる。静岡県の私設図書館で始まり、全国に広がっている「一箱本棚オーナー」を山陰地方で初めて取り入れたそうだ。

JALふるさと応援隊・安藤綾子さん:
オーナー制度とはどういうシステムですか?

すきがあつまる みんなの図書館 たう・峠優子さん:
本棚を1箱、または半分借りていただいて、そこに好きな“推し”の本を並べ、発表、表現の場として使ってもらっている。

月1000円から本棚のオーナーになることができ、他の人にも読んでほしい本を自由に置くことができる。

年齢・障害関係なく“分かり合える場”に

みどりさんと優子さんはともに20年以上、島根県内の特別支援学校の教員をしていたが、6年前に早期退職した。教員時代の経験から、子ども一人一人に合った支援が必要だと感じ、小学生などを対象にした発達支援の教室を開いている。

JALふるさと応援隊・安藤綾子さん:
どうしてこの図書館をオープンしようと思ったのですか?

すきがあつまる みんなの図書館 たう・峠優子さん:
生きづらさ、学びにくさを支えていくような個人塾をしている。とてもすてきな方々でも誤解が生まれてしまって、まわりの理解の不十分さがあると思っている。知ってもらう、分かってもらう、そして分かり合える場ができるといいなと思って作った。

それぞれの"好き"があふれる本棚
それぞれの"好き"があふれる本棚

年齢や障害のあるなしに関わらず、誰もが自分らしさを表現できる場をと、この図書館を開いたそうだ。確かに、手作りの画集が並ぶ本棚に一目で“手芸推し”と分かる本棚など、現在は10人ほどのオーナーが、小さいけれどそれぞれの“好き”があふれる空間を作り出している。

すきがあつまる みんなの図書館 たう・松浦みどりさん:
直接会わなくても、好きなものを通して緩くつながっていける場になれば良いと思う。

すきがあつまる みんなの図書館 たう・峠優子さん:
立ち位置も関係なく、いい関係をつくる入り口になるのかなと思う。

それぞれの「好き」があふれる個性豊かな図書館は、年齢・世代を超えた自由なつながり、居心地のいい場所を生み出してくれそうだ。

取材を終えた安藤さんは、「オーナーのメッセージも添えられていて、思わず本を手に取ってしまうような棚ばかりでした」と話し、「図書館」の枠にとらわれず、「好き」「推し」でつながる自由な交流の場所が広がるとすてきだと小さな図書館のこれからに期待した。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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