島根・出雲市の書店が、子ども一人一人にぴったりの絵本を選ぶ「選書」サービスを始めた。元保育士の夫婦が経験を生かして始めた絵本の「選書」は、子どもたちだけでなく、親にとっても本に親しむきっかけになっている。
代々続く本屋で始めたサービス
出雲市平田町にある「小村書店」は、創業100年を超え、市民にも親しまれている“町の本屋”だ。TSKさんいん中央テレビの山下桃アナウンサーが訪れると、まず絵本のコーナーが目に飛び込んだ。

子どもたちの目線の高さに合わせて作られた棚に絵本が並ぶ。そして、季節に合わせた絵本がピックアップされていた。

代々、家族で店を切り盛りしてきた小村書店で、絵本や育児書の品ぞろえに力を入れるようになったのは、店の5代目・小村将史さんと妻の優衣さんが店に立つようになってからだ。
2人ともに元保育士。2021年、店を継ごうと考え、保育士を辞めたという。

「元々保育士をしていたというのもあり、保育園の1年の流れもわかる。行事があって、ここに向けて、こういう本を読んであげたいとか」と話す将史さん、保育士の経験を生かして、夫婦で始めたのが「選書」というサービスだ。
“町の本屋”が生き残るための術

客から、子どもの発達状況や興味・関心、本を贈る目的などを聞き取り、一人一人にふさわしい本を選び、薦めてくれる。「選書代」は無料、客から受け取るのは本の代金だけだ。

全国でこの20年間に書店がほぼ半減するなど厳しい経営環境が続く書店業界で、小さな“町の本屋”が生き残るための術とも言える。

将史さんも「どんどん本屋が減っていく時代に、町に本屋がないより、あったほうがいい」と話し、保育士だったからこそできる絵本の「選書」に店の将来を託した格好だ。
また、生き残る道は、店にいるだけでは開けない。“町の本屋”は、町に飛び出す。
保護者に伝える“本との向き合い方”
妻の優衣さんがいたのは、出雲市内の保育園。定期的に開く“出張本屋”のためだ。

「絵本を読む時に、お母さんやお父さんがその物語を一緒に楽しむことが、すごく大事になっている」と、集まった園児の保護者にも本との向き合い方を伝えると、“販売タイム”のスタートだ。

この日は、0歳~1歳の親子におすすめの絵本をそろえた。絵本が並んだのを見て、子どもたちも早く読んでほしそうだ。

書店の方から出かけてくる“出張本屋”、保護者からも「何がおもしろいかわからないので、おすすめしてもらえると、読んでみようかなと。助かる」「普段あまり本屋さんに行かないので、あると便利。本を見て、さわれていい。本は大事だなと思ったので、これからも読んであげたい」などうれしい声が返ってきた。
保育士の目線で本を選んでくれる「選書」は、子育て中の親や保育の現場にとって心強い味方になっているようだ。

出張本屋を開いた「浜山あおい保育園」の古川暁子副園長も「保育士さんでもあるので、同じ思いで本を手に取れる。私も参加していて楽しかったし、やっている側が楽しいと、子どもたちや親にも伝わって、本を手に取ってくれる機会が増えたのではないかな」と話した。
「親子の時間につながると」
インターネットを通じて、動画やゲームなどさまざまなコンテンツがあふれる今の時代だからこそ、小村さんは、子どもたちに本に親しむ時間を大切にしてほしいと考えている。

小村書店・小村優衣さん:
本はお母さんたちの手を止めないと読んであげられない。これが親子の時間につながると思っている。今の時代だからこそ、絵本に触れてほしいなと思っています。

小村書店では、おすすめの絵本を選ぶ「おまかせセット」をインターネットでも販売している。
絵本をどう選ぶか迷い、選び方が偏りがちだという時、この「選書」サービスを活用すると、新たな本の世界が広がるかもしれない。
(TSKさんいん中央テレビ)