近年、全国的に不漁となっているスルメイカ。
そうしたなか、鳥取県沖では今シーズン、異例の豊漁となっています。
ただ、手放しでは喜べない状況もあるようです。
近年、深刻な資源量不足により全国的に不漁が続いているスルメイカ。
北海道の漁師:
「私、ゼロ。こんなの初めてだ。」
「イカ専業という感じだからね。イカがないと我々もいなくなってしまうよ。」
6月から漁が解禁された北海道函館市では、記録的な不漁により初セリが中止になるなど危機的な状況となっています。
全国のイカ漁師が頭を抱えるなか、けさ(26日)の鳥取港では…。
杉谷紡生記者:
こちら鳥取港のセリ場には、けさ水揚げされたばかりのスルメイカがずら~っと並んでいます。
セリ場に積まれた箱の中にはイカ、イカ、イカ!
鳥取県沿岸で獲れたスルメイカです。
漁師:
異常だっていいますよ、みんな。これはおかしいって。
全国的な不漁をよそに、鳥取県内では5月以降、漁獲量が急増。
鳥取県漁協賀露支所によると、鳥取港ではここ数年、6月の漁獲量は2トンから3トン程度でしたが、2025年は26日時点で既に約13.5トンの水揚げがあり、近年稀に見る豊漁となっています。
県東部の他の漁港でも同様に好調な水揚げが続いているということです。
ここ数年は、鳥取県でも不漁が続いていたため、この異変に漁師は首を傾げています。
漁師:
温暖化でイカが不漁だ不漁だと北海道の方では言っているが、なぜ日本海の鳥取だけこんな獲れているのかなと思って。
なぜ鳥取だけ豊漁なのか、県の水産試験場は…。
鳥取県水産試験場浮魚資源室 渡辺秀洋室長:
スルメイカが沖合を通って北上せずに、沿岸の方に降りてきているというのが、一番理由としては大きい。
理由として考えられるのが「冷たい海水の張り出し」と呼ばれる現象です。
本来、暖かい海を好むスルメイカは海温の上昇とともに北上していきますが、2025年は水温11℃程度の冷水の層が、日本海の沿岸付近にあることから、冷たい海水が作る壁に遮られる形で鳥取県沖にとどまり、漁獲量が増えているとみています。
鳥取県水産試験場浮魚資源室 渡辺秀洋室長:
どういう水温、環境になったときにスルメイカが来遊してくるかを研究し、判断になるような材料を提供できるのではないかと思っている。
異例ともいえるスルメイカの豊漁。一方で気がかりなこともあります。
漁師:
まあそりゃあ嬉しいですけど、他が逆に獲れていない。
シロイカが獲れていないので、それが一番困ったことですね
鳥取の夏の味覚・シロイカが不漁だといいます。
本来、スルメイカとシロイカの生息する水深は異なりますが、水深50メートル付近でシロイカを狙ってもスルメイカばかりが揚がるといいます。
シロイカの本格的な水揚げシーズンはこれからですが、イカ漁師としてはより単価の高いシロイカを狙っているため、今後の漁に気をもんでいます。
県の水産試験場によると、スルメイカの豊漁とシロイカの不漁の関連性は現時点で不明だということで、引き続きそれぞれのイカの漁場の解析などを進めるとしています。