参議院の政治倫理審査会は14日、自民党派閥の政治資金事件に関して、世耕弘成前参院幹事長、西田昌司参院議員、橋本聖子元五輪相の3人の審査を終えた。この弁明と質疑を通じて、いくつかの新たなことがわかった一方、依然として真相不明のままのことも多かった。

キックバック復活は真相不明のまま

最大の焦点でありながら、真相解明が進まなかったのは、安倍派のパーティー収入のキックバックが安倍元首相の指示で廃止となったにも関わらず、その後、誰がどのように復活させたのかという疑問だ。

衆院の政倫審では、安倍氏死去後の2022年8月の幹部協議について、西村前経産相は何も決まっていないと言い、塩谷元文科相はキックバック継続はやむを得ないとの方向で協議が終わったという趣旨の発言をして、食い違いが生じた。

安倍派の中堅・西田昌司参院議員
安倍派の中堅・西田昌司参院議員
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これについて世耕氏は、西村氏と同様に「何か確定的なことは決まっていない」とし、キックバック復活の経緯は「わからない」と答えた。塩谷氏の証言については「何らかの資金手当てをしなければいけないということを発言しているのではないか」と述べ、認識違いであるとの見方を示した。

このように結論をあいまいにした世耕氏だが、この協議の一部については新たな説明をした。世耕氏自身は、安倍元首相の「ノルマ通りの販売にして現金による還付はやめる」との方針について「私はそれを守るべきだ」という意見を協議の冒頭に述べたことを証言した。

さらに世耕氏は、還付の継続を求める意見もあったとした上で、安倍元首相の方針は堅持しつつ、代わりの有力なアイデアとして各政治家個人が開くパーティーのパーティー券を何らかの形で派閥が買い取るなどして合法的な形で振り替える案が出て、自身も賛同したことを明らかにした。

これまで、幹部らはキックバック分の不記載という違法行為が行われていた認識はなかったとしているが、キックバックを廃止した場合の代替案もかなり突っ込んだ議論が行われてきたことが、新たに浮かび上がってきた。

参院選イヤー全額キックバック方式も経緯不明のまま

世耕氏への質疑でもう1つの焦点だった、3年に1度の参院選の年には、改選される参院議員のパーティー券販売ノルマを撤廃し、販売したパーティー券分の全額がキックバックされ事実上の裏金化されるシステムについても、経緯は明らかにならなかった。

世耕弘成前参院幹事長
世耕弘成前参院幹事長

世耕氏は参院安倍派=清風会の会長だったが、システムの経緯については「分からない。私には何の相談もなく勝手に決まっていたということだ。安倍さんが決めたのか、細田さんが決めたのか、その前の方が決めたのか、これは残念ながら、わからない」と述べ、この金が選挙に使われることも否定。「知らないことは本当に知らないので、それを知ってると言えと言われても、私はお答えしようがない」と答えた。

西田氏が世耕氏ら幹部批判 亀裂露わに

安倍派の中堅である西田昌司氏の弁明と質疑では、安倍派内での中堅若手から幹部への反発が強い実態が露わになった。

西田氏は「安倍さんがやめろと言ったのに、それを積極的に続けていた。この派閥の幹部は大変責任重大だと思っている。当然、政治家として責任をとってもらわなければならない」と述べた。

さらに自身の前に弁明に立った世耕氏にも矛先を向け「世耕さんの答弁を聞いていたが、私もまったく納得できなく、そのとき知らなくてもどうであったのか調べて報告する義務があるのは当然のことだ」と批判した。さらに安倍派幹部全体について「自らの責任の重さを考えて、出処進退は考えるべきだ」と、自身で身を引くよう促した。

西田氏と橋本氏の認識の差

また、パーティー券収入のキックバックについては、西田氏が今回の問題が起きるまで知らなかったと述べる一方で、その後に弁明に立った橋本聖子氏は10年以上前から把握していたと明言するなど、議員によって認識に差があることも露わになった。

橋本氏の会計責任者団体問題に見る「議員の財布」の闇

そして橋本聖子氏の質疑では、興味深い点が浮き彫りにされた。

橋本聖子元五輪相
橋本聖子元五輪相

立憲民主党は、橋本氏が代表と会計責任者の両方を兼務する政治団体が、今回の安倍派のパーティーをめぐる事件を受けて、収支報告を訂正していたことを指摘したのだ。

政治資金規正法は違反行為について、一義的に会計責任者の責任を問うことになっているので、これだと会計責任者になっている橋本氏の責任が問われる構図になると追及したのだ。

橋本氏は、自身が代表を務める自民党支部を派閥のパーティー券分を収入に計上する資金管理団体として使っていたが、東京五輪対応のため離党を余儀なくされた際に、この党支部から、自身を代表兼会計責任者とする別の政治団体に資金を移し替えたため、今回、修正の必要が出たことを明らかにした。

ここから見えるのは、議員が企業献金も受けられる政党支部や複数の政治団体を使いわけ、金を移動させながら、政治資金を巧みに運用している実態だ。

今回の安倍派の政治資金をめぐる実態解明はもちろん、その裏には、政治資金をめぐるより大きな不透明さがあることも、今回の政倫審を通じて浮き彫りになった。

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政治部
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