日本ではまだ公開されていない、アカデミー賞7部門を制した映画「オッペンハイマー」の国内初の試写会の場所に被爆地広島と長崎が選ばれた。広島では、一般向けの試写会に高校生と大学生が招かれ、パネラーとの間で核兵器や平和についての議論が広がった。
被爆地として原爆開発者の映画と向き合う
予告編(ナレーション):
一人の天才科学者の創造物が世界の在り方を変えた。その世界に私たちは今も生きている

予告編(オッペンハイマーの台詞):
「アメリカのすべての産業力と技術革新をここに集めた。秘密のラボだ」「創り出してもいいのか、このような兵器を」

第二次大戦下、世界で初めて原子爆弾を開発したオッペンハイマー。その人生を描いた映画はアメリカでは2023年7月に公開されたが、被爆国の日本での公開は遅れ、3月29日から。

公開前に、一般向け試写会の場所は、被爆地の広島と長崎だけ。12日の試写会は、まず被爆地の若者に見てほしいと企画され、広島在住の高校生と大学生約110人が招かれた。

映画は戦後、オッペンハイマーが自分が作り出した「恐ろしい可能性」に苦悩する様子が描かれ、核開発競争の愚かさを観客に伝える。

その一方で、広島、長崎の被爆や戦争の惨さは直接的には描かれておらず、観客の想像力に委ねる作りになっている。

元広島市長「描かれてはいないが、核兵器の恐ろしさは伝えている」
12日の試写上映の後、元広島市長の平岡敬さんらを招いて意見交換が行われた。
元広島市長・平岡敬さん:
想像力を働かせると、核兵器がいかに恐ろしいかをこの映画は伝えていると思いますけれども、広島の立場としては、もっともっと核兵器の恐ろしさが描かれてもよかったんじゃないかなという気がしています

詩人・絵本作家 アーサー・ビナードさん:
ハリウッドからこういうものが出てくるのは、ちょっと前代未聞に近いかなと思います

映画監督・森達也さん:
ロシア・ウクライナ、そしてイスラエル・ガザで戦争が実際に今、起きている。想像力をもってください。きっとどこかで、まだまだたくさんの人がうめいているんだ、苦しんでるんだ、助けを求めてるんだって気持ちで世界に接することが大事

高校生からは「まだ知らないことが多いことに気づいた」
試写を見た若者との間で、核兵器や平和についての議論が広がる。
高校生:
どうやったら核なき世界が訪れることが可能になるのか?

元広島市長・平岡敬さん:
広島の惨劇を伝え続けるしかない

高校生:
自分が知っていた事実には、欠けている視点だったり、まだまだ知らないことがたくさんあるなっていうことを改めて思い知らされたような感じがしました

元広島市長・平岡敬さん:
いろいろなことを考えさせてくれる映画でしたね。今、私たちは「平和、平和」って言っているけど、それを言えなくなる時代が来るかも分からない。そうさせないように若い人たちに頑張ってもらわなきゃいけない

映画「オッペンハイマー」の日本公開は3月29日から。
(テレビ新広島)