ウクライナ、ガザで戦争が続く中、被爆2世として、平和への思いを絵に込める画家が広島にいる。画家のガタロさんは、戦争で追い詰められた人たちへの共感から絵筆をとっているという。

戦争画を中心とした個展

2月、広島、三原市でガタロさん(74)の個展が開かれた。ウクライナ、ガザで戦争が続く中、1991年に第一次湾岸戦争の際に描いた絵が今、再度注目されている。ガタロさんはこの年に生まれた自分の子どもの姿を戦場と重ね合わせた。

1991年 湾岸戦争を題材に描いた絵 「戦争はナニモカモウバッタ」と書いてある
1991年 湾岸戦争を題材に描いた絵 「戦争はナニモカモウバッタ」と書いてある
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三原アーカイブスギャラリー 友宗邦夫さん:
戦争画のシリーズ。特に湾岸戦争の抗議の絵を見て、これはぜひ見てもらいたいという気持ちが起こりました

1991年 湾岸戦争を題材に描いた絵 「トモダチカエセ」と書いてある
1991年 湾岸戦争を題材に描いた絵 「トモダチカエセ」と書いてある

絵筆をとって40年 今の戦争で破壊された建物と原爆ドームがダブる

広島市在住で被爆2世の画家のガタロさんは原爆ドームの絵を500枚以上描いてきた。
ガタロさん:
原爆ドームが泣いとる。人間の愚かさに対して。ウクライナの侵攻から描き始めた原爆ドームのスケッチが、ウクライナの破壊された建物とすごく重なり合う。僕は原爆ドームを描いていて人間の墓標、世界の墓標のように思えて仕方ない。最期の姿のように思えて仕方ない

ガタロさん 2022年4月
ガタロさん 2022年4月

ガタロさんは約40年、清掃の仕事をしながら絵を描いてきた。30代のころ、365日、毎日原爆ドームへ通い描いた。
ガタロさん:
たぶん500枚ぐらいは描いてきたと思う。原爆ドームって色がないっていうか、四季もないんです。86の日(原爆が投下された8月6日)で時間が止まっている

原爆で家族を亡くした父 40代で突然、鼻血を

ガタロさんの父親は、原爆で父、弟、妹を亡くした。被爆しながらも自身は生きのびたが…
ガタロさん:
放射能被害なんだろうけど、親父が40代のころに、寝とったら突然鼻血を噴き出だして、「うわー」と声を上げて叫んどった。最期はノイローゼみたいになっとったと思う

その後、父親は亡くなったという。

ロシアのウクライナ侵攻後、コロナ禍で閉塞した空気が漂う中、開いた展示会では、ガタロさんが昭和の風景を描いたものが目を引いた。中には、鼻水をたらした「月光仮面」が…。だれもが「正義のヒーロー」になれた。

ガタロさん:
ウクライナ侵攻後に描いた絵なんです。どこの国もわしんとこが正しいと言うとる。わしの平和が正しいんだって言ってるわけ。だけど、それは本物かな?と思うんです

広島サミット後に「絶望」の個展

2023年5月、G7広島サミットでは、核保有国の首脳たちが原爆資料館を訪れ、被爆の実相に触れた。

「絶望御美術展」サミットの10日後、ガタロさんは「絶望」と名付けた個展を広島市の書店の奥にある小さな展示スペースで開いた。

ガタロさん:
裸電球に集まっとる人間という感じで、裸電球の周りに顔を集中して置きたいわけ
元画廊の友人 平石もも さん:
大きい絵の一部に見える

2023年に描いた絵
2023年に描いた絵

平石さん:
久しぶりにたくさん作品が見られてうれしいです。自画像じゃないんですよね
ガタロさん:
まあ自画像みたいなもんやね

ガタロさん:
人間がとぐろを巻いとる感じ。有象無象が集まって。物言わぬ人間たちの情念というか…。そういうものを表現した

ガタロさん:
これは、フラッグ、旗。原爆ドームがあって。7本の真っ黒な旗に血が滴っとる。フラッグってね象徴的なものだ

Q:G7?
ガタロさん:
そう

ガタロさん:
ヒロシマに行くことに厳粛さがみじんもない。やれ、もみじまんじゅうがどうのとか、お好み焼きがどうのとか、ほんまにまつりごとにしてしもうた。皮膚も焼かれ、骨まで焼かれて無残な死に方、そういうことへの痛切な想像力、絶望ということへの想像力なくして希望なんて絶対出てこない

ガザやウクライナへの共感を

先月の三原市での個展には、自画像も出展。
Q:今まで自画像は描いてました?
ガタロさん:
何点か描いた。あまり自分自身に向かい合うことはあえて、せんかった

画家、ガタロさんの人生をたどるように、これまで描いてきた作品が並んだ。やはり目を引くのは、戦争に関する絵。

展示を見た人は…:
今の時代にこんな状況って、私には受け止められない。それを表現されるのは、すごいつらかったと思う

ガタロさん:
わずかでもガザやウクライナへの痛みに対する共感。追い詰められた人間、捕らわれた人々に対する共感。そのようなことを思ってるんだけど

戦争がなくならない世界へ向け、ヒロシマからガタロさんの平和への絵筆の訴えは続く。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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