石川県内の公立中学校のトップを切って、能登半島地震から今も断水が続く七尾市の4つの中学校で卒業式があった。一方、輪島市では卒業生が集団避難を終えて地元に戻り、3月9日に卒業式を迎えた。

苦難乗り越えた卒業生が笑顔の巣立ち

七尾市の七尾中学校では、断水が続くなどしたため、通常の授業に戻るまで約1カ月半かかった。そんな苦難を乗り越えた卒業生約140人が、3年間の学びやに別れを告げた。

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卒業生答辞・小田雄斗さん:
私たちが忘れてはならないのは、能登半島地震を経て「当たり前」への感謝です。地震の前まで当たり前だったことも今はとてもうれしく、生きていることへの感謝があふれてきます。

全半壊などした家が1万5000棟以上で確認されている七尾市では、一部の地域で今も断水が続いている。卒業生の中には、8日も避難所や親戚の家から通う生徒も多くいたという。新型コロナウイルスの苦難も経験したこの世代。幾多の困難を乗り越えて笑顔の巣立ちとなった。

約50日ぶりに再会する家族「おかえり」

8日朝、白山市にある白山青年の家では、ここで約50日間にわたり集団避難していた輪島市の中学3年生が旅立った。

手を振って学生を見送る職員たち
手を振って学生を見送る職員たち

能登半島地震で、安全と学習機会を確保するため実施された異例の集団避難は9日の卒業式を前に、8日に解除され、最後まで残っていた73人が職員約20人に見送られながら3台のバスで地元に戻った。

その子どもたちが向かったのは輪島市にある消防署だ。輪島中学校は学校が避難所となっていて、体育館も使えないことから消防署の2階で卒業式を行う。8日は卒業式の予行練習が行われた。

午後3時半に消防署へ向かったのは、集団避難していた小住優太さんの父・夏樹さんだ。

小住優太さんの父・夏樹さん:
輪島で会うのは1月17日、送り出して以来。きょうはゆっくり寝かせてやりたいな。

1月17日に涙で離ればなれとなった親子。

小住優太さんの母・淳美さん(1月17日​):
頑張ってこい。

小住優太さんの父・夏樹さん(1月17日​):
楽しんだもん勝ちや。

優太さんを見送る際、父・夏樹さんは「やっぱりだんだんさみしくなってくる…」と漏らしていた。

再会した小住さん親子
再会した小住さん親子

そして午後4時、ついに優太さんに再会することができた。
「優太」と呼びかける夏樹さん。だが、優太さんは「お父さん、まだ持ってこれていないものがあるので手伝って」とお願い。その後、「おかえり」「ただいま」とあいさつした。
思っていた再会とは違ったものの、夏樹さんは「あいつらしくていいなと思いましたよ」とホッとした表情を見せていた。

小住優太さんの父・夏樹さん:
どうやった受験?

小住優太さん:
やれたけど、ちょっとやばかった。

小住優太さんの父・夏樹さん:
楽しかったんならそれでいいよ。向こうの生活どうやった?

小住優太さん:
部屋騒がしかったけど楽しかった。なかなかない体験ができたなって。

さらに、坂口さん親子も再会を喜んだ。

坂口こころさんの父・政昭さん:
会うのは行ったっきり。

坂口こころさんの母・清子さん:
どう勉強した?

坂口こころさん:
勉強は頑張ったよ。毎日友達と一緒に過ごせて本当に楽しくて、あっという間に2カ月がたちました。

坂口こころさんの父・政昭さん:
これから現実が待ってるぞ(笑)まぁ元気に帰ってきてよかった。

輪島中学校の卒業生は9日に、消防署の2階で学びやへの別れを告げる。なお、小住さん一家はまだ加賀市で二次避難中のため、卒業式後に家族で二次避難先に戻るという。

卒業生に4人のシェフから“特別給食”

卒業式を翌日に控えた能登町の中学生に届けられた特別給食は、煮込みハンバーグやミネストローネだ。

特別給食を作るシェフ
特別給食を作るシェフ

このメニューを作ったのは、羽咋市で飲食店を営む4人のシェフ。自らも被災して営業再開ができない中、子どもたちを元気づけようと8日未明から調理に励んだ。

橋田祐亮シェフ:
せめて僕たちにできることをということで、おいしい給食を届けて思い出に残る日になればいいなと思います。

完成した卒業記念給食は、能登町の小中学校5校へ届けられた。能登町の小木中学校では、1年生から3年生までの29人に記念の給食が配られた。

学校は1月22日に再開したものの、共同調理場で断水が続いているため、給食はこれまでご飯と汁物やおかず1品のみの提供だった。

豪華な給食に子どもたちは、「いつも食べている給食と比べて、すごくおいしいと思います。僕たちが卒業することを、こういう形で祝っていただけたのはすごくありがたい」「普段の生活に戻って、こうやっていつものようなご飯が食べられてうれしい」と喜びを語ってくれた。

小木中学校・柿本義浩教頭:
卒業生にとっては最後のお昼ご飯なので、すごくいい思い出作りができたと思います。

振る舞われた”特別給食”
振る舞われた”特別給食”

今回の給食はアレルギーにも配慮をしていて、全員が同じ食事を味わうことができたという。小木中学校では9日に卒業式が行われ、10人の生徒が学舎を巣立った。

(石川テレビ)

石川テレビ
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