世界的にも注目が高まるメタバース。地域の交流拠点や学校に通いづらい子供たちのための学びの場、そして“仮想旅行”の旅先の一つに「しまなみ海道」が選ばれるなど、愛媛でもその活用が広まっている。

“メタバース”で愛媛を知ってもらう

会場を埋め尽くすのは、3Dで描かれた愛媛県イメージアップキャラクターの「みきゃん」。このイベントは、インターネット上の仮想空間「メタバース」で開かれたものだ。

メタバースとは、「超越した世界、宇宙」などを意味する造語で、インターネット上の仮想空間でユーザーが自分の分身となる「アバター」で参加し、様々な活動ができるサービスなどを指す。

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このイベント「メタバースえひめ」の会場は、愛媛県の道後温泉本館の浴室を再現していて、司会者や参加者は、「みきゃん」など自分の分身となるアバターで入場している。
メタバースのプラットフォームを展開する東京の企業が、1月からサービスを始めた。

クラスター エンタープライズ事業部・亀谷拓史マネージャー:
今まで2Dでしか表現できなかったインターネットの世界が3Dになる。いわゆる奥行きが出る。自分の体の代替となるアバターで何かを持ったり、投げたり、話したり、身体性が伴う体験がインターネットでできる

「メタバースえひめ」では道後温泉本館をはじめ、飛鳥乃湯泉や県庁、松山市の中島をモチーフにしたビーチを再現していて、利用者はアバターを通してこの仮想空間を自由に動いたり、ほかのユーザーとコミュニケーションを取ることができる。

その狙いについて亀谷マネージャーは、「県内の利用で言うと、例えば行政が住民と交流したり、声が届くようなイベントが開けるオンラインの会場として使っていただく」と話す。

目指すのは、メタバースにおける地域のコミュニケーション拠点。さらに、再現する街や観光地を増やしていくことで、県外や海外の人たちに愛媛を知ってもらうチャンスになるという。

クラスター エンタープライズ事業部・亀谷拓史マネージャー:
距離とか時間、物理的制約によって行きづらい、来訪しづらい課題を抱えている自治体にメタバースは親和性が高い

教育の分野でもメタバースを活用

愛媛では、教育分野でもメタバースが活用されている。

メタバース上の学びの場「メタサポキャンパス」は、様々な理由で学校に通いづらい不登校の子供たちのための学びや交流の場として、2023年に愛媛県教育委員会が開設した。

愛媛県教育支援センター・坪田朋也指導主事:
自宅からでもつながり作りができることは何かといったときに、メタバースを活用した支援がスタートしました

「スタートルーム」という空間では、利用する子供たちは座席に座り、学校で言う「朝の会」のような事が開かれるという。実際の映像を子供たちに発信しながら、きょう1日の活動の確認や、職員や大学サポーターからのスピーチをする活動を行っている。

このメタサポキャンパスは「スタートルーム」のほか、「スタディルーム」や「クッキングルーム」など、利用の目的ごとに8部屋に分かれている。

子供たちは自宅のパソコンから入室・退室し、キャンパス内はアバターで活動する。県教育支援センターの職員や大学生のボランティアはスタッフとして子供たちのサポートにあたっている。

愛媛県教育支援センター・坪田朋也指導主事:
実際の対面ではないので、子供たちがどんな状況なのかというところを丁寧に関わっています。例えばチャットの内容、音声の声のトーン、そういうところから支援をしています

メタサポキャンパスでは、子供たちが「所属感」を得られるよう、スタッフとのコミュニケーションや掲示物による情報発信などを大切にしていて、これまでにキャンパスでの活動を経て再び学校に通い始めた子供もいるということだ。

坪田指導主事は、「子供たちの自立に向けてのつながり作りの入り口がメタサポキャンパス。子供たちが今後どうなりたいか、大事にしながら支援していきたい」と語っている。

“仮想旅行”体験してみた

画面に映ったのは、風光明媚な京都のまちなみ。実際の映像かと思いきや、これもメタバースだ。

「ANA GranWhale」は、全日空のグループ会社が2023年12月からスタートしたメタバースサービスで、仮想旅行が楽しめる。旅行先は、メタバース上に再現した京都や北海道など、国内を中心とした64カ所の観光地で、ユーザーは仮想旅行のほか、ショッピングなども楽しめるのが特徴だ。

ANA NEO事業開発部・吉田満里菜アシスタントマネージャー:
仮想空間での体験がリアルであればあるほど、実際にその場所に行きたいと思っていただく後押しになるようなものになると思っています

ユーザーが興味のある観光地をまずはバーチャルで体験して、リアルな旅のきっかけにしてもらおうというわけだ。
そして「ANA GranWhale」の旅先の一つとして、愛媛からは今治市の「しまなみ海道」が選ばれた。

メタバースで再現された「しまなみ海道」にテレビ愛媛・鈴木瑠梨アナウンサーが仮想旅行してみた。

鈴木瑠梨アナウンサー:
着きました!このオブジェ私も行ったことあります。サンライズ糸山だ。360度、色んな方向に歩けるので実際に自分が歩いているような感覚です

また、旅先ではガイドが登場し、そのスポットの見どころを紹介してくれる。ちょっと角度を変えてみると…しまなみの絶景が広がっていた。バーチャル空間とは思えない、実際の景色のような再現度の高さもこだわりの一つだ。

また、旅先の選定には知名度や人気だけでなく、「その観光地が持つストーリー」も大事にしているそうだ。

ANA NEO事業開発部・吉田満里菜アシスタントマネージャー:
来島海峡エリアは日本三大旧潮流の一つで、渦潮が発生し、掘り下げると村上海賊の歴史があり、語れるポイントがたくさんあると思っています。今まで知らなかった知識を得ることで実際に行ってみたい、一度行ってみた方でももう一回行ってみたいと思ってもらえるコンテンツを目指しています

バーチャルとリアルを結ぶ未来を見据えた取り組み。一人一人がアバターを持つ、そんなメタバースな世界が現実にやってくるのかもしれない。

(テレビ愛媛)

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