毎年約1万人以上のペースで人口が減っている愛媛県。中でも「県外に転出する人が、県内に転入する人より多くなる」、「人口流出による減少」も大きな課題の1つだ。

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愛媛県によると、この10年で転出の割合が最も多いのは20代、しかも男性よりも女性の割合が多くなっている。特に20~24歳の女性が就職をきっかけに県外へ転出。年間1,000人ほどが、そのまま帰って来ないという。

彼女たちは、なぜ愛媛を離れていくのだろうか? 20代女性の「本音」を知るため、愛媛県内の女子大学生に話を聞いた。

最も多い理由は「都会への憧れ」

集まってもらったのは、大学までを県内で過ごし、これから就職を控える3人の女子大学生だ。

1人目は、西条市出身で愛媛大学理学部の4回生・株本実果さん。この春からは、複数の県に工場を持つ大手企業に研究職で働く予定だ。

2人目は、松山市出身で松山大学経済学部3回生・白石陽菜さん。これから就職活動をスタートさせる白石さんは、まだ職種は絞り切れていないが、関東エリアでの就職を希望している。

3人目は、内子町出身で愛媛大学社会共創学部4回生・大森美里さん。この春から東京の不動産会社で営業職に就く予定だ。

県外で社会人生活をスタートする4年生と、県外での就職を希望する3年生、3人にズバリ「なぜ愛媛を離れるのか?」聞いてみた。

大学4年・4月から県外で就職 株本実果さん:
便利の面に関しては、やはり都会がいいなと思います

大学3年・県外での就職希望 白石陽菜さん:
生まれてからずっと松山に住んでいて、都会に出てみたいなという気持ちが強いです

大学4年・4月から県外で就職 大森美里さん:
ずっと私も愛媛で過ごしてきたので、ちょっと都会に出てみたいなということで東京に決定しました

3人とも愛媛で長く過ごしてきたからこそ、都会に憧れる気持ちが強いようだ。

実際に愛媛県の調査でも、大学までを愛媛で過ごした県内の大学生が県外での就職を希望する理由のうち、「都会での生活への憧れ」という回答が最も多くなっている。

中でも3人が強く訴えていたのが「都会の利便性」だった。

大学3年・県外での就職希望 白石陽菜さん:
交通の便が悪いことを直してほしいです

大学4年・4月から県外で就職 株本実果さん:
イベントをもうちょっと増やしてほしいのと、アーティストの方がいつも四国に来てくれないので、まず四国の存在を知ってほしい

大学4年・4月から県外で就職 大森美里さん:
音楽好きなので、アーティストの方とか、いつもツアーとかやっても四国だけ無視されちゃうので悲しいと思って

交通の便が良く、趣味を楽しむ機会が多い都会の利便性は、ライフスタイルの充実を重要視する20代の3人にとっては、重要なポイントだという。

生まれ育った地元の良さも実感

さらに、ライフスタイルだけでなく、働く上でも魅力的だという。

大学4年・4月から県外で就職 大森美里さん:
やっぱり賃金で結構見ていて、生活する上でお金って必要なので、やっぱり給料の差を見ると都会の方が結構高かったので

周囲の人の進路について尋ねると、次のように語ってくれた。

大学4年・4月から県外で就職 株本実果さん:
人数が多い分、職種も多いので、自分のやりたいことが見つけられるのがいいっていうことで都会に行く人が多い

大学3年・県外での就職希望 白石陽菜さん:
仕事の数も都会の方が多いですし、やっぱり楽しみも充実しているっていう

給料や福利厚生などの待遇が比較的良いことに加え、企業や職種の選択肢の多さ、それによる「転職のしやすさもメリットだ」という声が聞かれた。

一方で3人は、生まれ育った愛媛の良さも感じている。

大学4年・4月から県外で就職 株本実果さん:
食べるものもおいしいし安いし、家賃も安いしということで、住む分にはすごく充実していると思ってます

愛媛の良さを感じながらも愛媛を離れる予定の3人だが、大森さんにはこんな考えもあった。

大学4年・4月から県外で就職 大森美里さん:
明確なライフプランというわけじゃないんですけど、ただただ漠然と10年後くらいには帰ってきたいなみたいな感じで思っています

“戻りたい”若者への支援に注力

大森さんのように一度愛媛を離れた若者が、結婚や子育てをきっかけに戻ってきやすい環境をつくろうと、県も様々な取り組みを展開している。
特に県内の若者をはじめ大学進学のために県外に出た人や、愛媛で再就職したい人の支援にも力を入れている。

やってきたのは「シゴト発見フェス」。愛媛県から委託を受けた「ジョブカフェ愛work」が主催し、若者と県内企業とのマッチングをはかる。

ジョブカフェ愛work 中村真由美さん:
愛媛県で働きたいという学生がいらっしゃると思うんですけど、企業と出会う機会とか企業のことを知る機会がなかなかないと思うので、実際に会って企業の雰囲気も知りながらデータも含めて、自分に合った企業を見つけてもらえたら

今回は県内52の事業所が集まり、2023年度と2024年度に卒業予定の学生や、既卒3年以内の若者が参加した。

愛媛県は、県外にいる学生の愛媛県での就職活動を支援するために、1回最大2万円までの交通費を補助する制度を実施。今回も7割程の参加者が利用した。

県外から参加した学生2人:
愛媛での就職を考えています。愛媛が、地元が好きなので。愛媛に根差した、地域に根差した仕事がしたいなと思っていて。地域に貢献できたらいいなという風に思っています

県外から参加した別の学生:
両方で考えてるんですけど、やっぱり県内出身なので県内がいいなって。色んな人にお世話になったので、そこで恩返ししたいなっていう気持ち

愛媛に戻ってきたいと考えている若者も少なくないようだ。

ジョブカフェ愛work 中村真由美さん:
愛媛県内で生きていくこととか、働くことに関しての情報が届いていない、わからないだけで選ばれないっていうのは非常にもったいない。私たちとしても伝えたい事でもあるので、そのあたりは何か工夫をしながら届けていきたいと思います

若者にとって働くという点はもちろん、生活を楽しむという点でも魅力ある愛媛を目指していくことも、人口減少に歯止めをかけるカギの1つなのかもしれない。

(テレビ愛媛)

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