能登半島地震の発生から3月1日で2カ月。
全国の研究チームがその被害を調査しているが、地震が「海底に与えた影響」は未知数だ。こうした中、金沢大学のチームが2月から石川・珠洲市の沖合などで地質調査を行っている。
海底ではどんな変化が起きているのか取材した。
地震による生態系への影響を示唆
2月3日、金沢大学で能登半島地震調査・支援活動報告会が行われた。
この記事の画像(11枚)この報告会でロバート・ジェンキンズ准教授は「地震と津波によって海底がどう変化したのか。ここはナマコがすごくいるところなんですが、ほとんどいなくて。水深16m~20m位なんですけども、礫(れき)がない所だったにも関わらず、礫がゴロゴロしていると。大きな海底での変化が起きているという事は間違いないというところです」と地震による生態系への影響を示唆した。
ジェンキンズ准教授の研究チームは、1月から能登半島地震による海底の変化やそれに伴う生態系への影響がないか珠洲市の沖合や能登町の九十九湾で調査を実施している。
この2カ月で海底はどう変わったのか?
ロバート・ジェンキンズ准教授チームが撮影した九十九湾のダイビング映像をみると…。
金沢大学 ロバート・ジェンキンズ准教授:
大きな角張った「礫」ですね。ここはもう泥地ですけども、泥地のそばに礫が積み重なっていて。津波の大きな波によって普段沿岸域から運ばれないような「礫」がどさっと運ばれて、礫と泥の組み合わせで覆われた海底が今出来上がっているというところです。
普段は波穏やかな九十九湾。今後この礫が元に戻ることは考えにくいという。
金沢大学 ロバート・ジェンキンズ准教授:
今後は、普段から(海底に)供給される泥がちょっとずつちょっとずつ積もっていくと思うんですけどそれは九十九湾にとっては相当な年月が必要だと思います。
一方、1月ほとんど見られなかったナマコは、増えている事が確認された。
金沢大学 ロバート・ジェンキンズ准教授:
元々ナマコは岩の下とかに隠れたりすることがあるんですね。隠れていたナマコが、ちょうど今這い出してきているかなというところなんですけど。
さらに、エビやゴカイなどの巣穴も確認でき、「生物活動が見られているというのは、割と速やかな生態系の回復にもつながるんじゃないかというふうに憶測ですけども期待しているところですね」とジェンキンス准教授は話した。
海底の堆積物で何があったかわかる
珠洲市沖合では海底の堆積物を採取した地質調査も行っている。
金沢大学・佐川拓也准教授:
下から上に、古いものから新しいものがたまっているのとか、表面の状態が、海底がどうなっているのかが分かるような状態で取れる機械なので。ちょっと押すことはありますけど、基本的に上手く刺されば(海底を)そのまま「下の方に何があって、その上に何が積もったか」というのが分かる。
このように採取した堆積物についてジェンキンス准教授は「ここまでが地震前の堆積物ですね。そこに津波等で海底がかき混ぜられて、砂だけがたまっていって、その後に海底が撹拌されて泥が舞い上がるわけですね。その泥がふわっと降り積もった層というのがこの部分になるという」と堆積物で時系列がわかるようになったことを説明してくれた。
さらに、「我々スキューバダイビングで潜って、もう礫がガチャガチャ…と集積しているようなところがあって、これから生態系がどうなっていくのかなというのは注視しているところですね」と話した。
今回採取した海底の堆積物と1月に採取した堆積物を比べることでこの1カ月間の海底の変化が分かるという。
1月に採取したものは、1番上に1cm弱の厚さで明るい茶色の層があり、その上に粒々が見えほどすごく細かい泥が乗っていた。
この泥は地震の際、各地で発生した土砂崩れの土が川から海に流れ込んだものだ。
2月の調査で佐川准教授は、「1月の時と比べるとちょっと厚さが薄くなっているというのは印象としてあります」と話し、「大量の土砂が供給されて厚く積もったたが、それが波の力とかでまた巻き上げられてなくなっていって何となく元の状態に戻りつつあるのかなという風に今考えています」と、採取した堆積物について話した。
今後も継続的に調査する方針
気になるのは、この海底の変化が今後能登の漁業にどのような影響を与えるのか。
金沢大学・佐川拓也准教授:
移動できる魚に関してはそれほど大きい影響はないんじゃないかと思うんですけど、例えばカニですとか、籠を入れたりする…底質に何か物を入れて捕まえているとか、そういう生き物に関してはもしかしたら影響があるのかもしれないですね。
海底の変化が海の生態系にどんな影響を及ぼすのか。
グループでは今後も継続的に調査する方針です。
(石川テレビ)