衆院の政治倫理審査会は3月1日、前日に続いて、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる審査を行う。前日は岸田首相と二階派の武田元総務相が出席したが、1日は安倍派の幹部である西村前経産相、松野前官房長官、塩谷元文科相、高木前国対委員長の4人が出席する。

ポイントは、大きくあげると以下にまとめられる。
1、安倍派のパーティー券収入のキックバック不記載の実態と開始時期
2、座長や事務総長経験者としてキックバック不記載に本当に関与しなかったのか
3、安倍元首相が不記載の廃止を検討したものの死去後に不記載継続を判断したのは誰か
4、不記載額の使い途は?政治活動以外の使途はないのか
5、自身の責任の取り方

これらのポイントについて、各幹部がどう証言し、そこに矛盾がないかに注目が集まる。

1については、自民党の調査報告書においてキックバックがあった85人中それを認識していたのは32人にとどまったとしている。この結果にも疑問が残るが、今回出席する4人はベテラン議員であり、制度について知っている蓋然性は若手に比べれば高い。

そして、制度がはじまった経緯について調査報告書には「おそらく30年くらい前からの慣習が残ってしまったのだと思う」「20数年前の当選後に先輩から聞いた記憶がある」などの証言があり、「いつどのようにして始まったのかまでは判然としないものの、還付金等や収支報告書に記載しない取り扱いは、遅くとも10数年前から行われていた可能性が高い。場合によっては20数年以上前から行われていたことも窺われる」と結論づけている。

4人には制度の実態はもちろん、制度がはじまり受け継がれてきた経緯についても、できるだけくわしい説明が求められる。

そして2の不記載への関与については、4人はいずれも座長や事務総長の経験者だが、政倫審への審査申立書の中で一様に関与を否定している。中でも西村氏は申立書で「事務総長としての私の役割は、若手議員の委員会・党役職人事の調整のほか、当時施行を控えていた参院選の候補者の調整・支援活動等であり、清和会の資金関係については、帳簿、通帳、収支報告書等を見たことすらなく、本件には一切関わっておりません」と記している。ほかの3人は具体的には書いていないが「本件には一切関与しておらず」と記している。
 
しかし永田町では一般的に、派閥のお金については会長や事務総長が最終的に関わるものと認識されている。各派あるいは個人ごとに関与の仕方は変わるが、幹部として派閥の運営にどう関わっていたのか、西村氏の主張との違いの有無も含めて注目される。

そして3の安倍元首相が会長就任後にキックバック分不記載の廃止を主張したにも関わらず最終的に不記載が継続された経緯は、これまで明らかになっていない。この判断を事務局長だけで行うのは難しいのではないか、政治家の関与があったのではないかとの疑念は強い。それだけにその時期に事務総長を務めていた西村氏と高木氏がどのように説明するかは注目で、真相を語ることが期待される。

さらに、4の使途については、松野氏や塩谷氏が収支報告書の訂正にあたって、会合費などを店名とともに追加している。どういう会合だったのかや、当初収支報告書に掲載しなかったのはなぜか、そして他の幹部も使途についてどう説明するかは焦点だ。
 
また、5の責任の取り方をめぐっては、岸田首相が29日の政倫審で「党として処分を含め政治責任について判断を行っていく」と語っている。一方で安倍派幹部には、それぞれ政府や党の役職を辞任したことですでに責任は取っているとの認識も強いとされる。党からのさらなる処分について何らかの認識を示すかどうかも注目点だ。

政倫審初日の審査を受けて、新聞各紙には「解明進まず」「新たな話なし」「パフォーマンス」など予想通りの見出しが並んだ。とはいえ、政倫審をやらない方がよかったかいうとそれも違うし、説明の場があること自体に異論は少ないはずだ。それだけに、安倍派の4人が国民の疑問に答えることを最優先に、真相について踏み込んで語ることが期待される。

(フジテレビ政治部デスク 高田圭太)

髙田圭太
髙田圭太

フジテレビ報道局  政治部デスク 元「イット!」プロデューサー