台湾の半導体製造大手・TSMCの日本で初めての工場が完成し、2月24日に熊本・菊陽町で開所式が開かれた。
国内外のメディアが注目する中、岸田首相はビデオメッセージで熊本に建設される「第2工場への支援も決定した」と発表した。
東京ドーム4.5個分の敷地に巨大な工場
東京ドーム4.5個分、敷地面積約21ヘクタールに造られた台湾の半導体製造大手・TSMCの日本で初めての工場には、オフィス棟と工場棟と大きな建物が並ぶ。
TSMCの子会社・JASMが運営するこの工場では、ロジック半導体と呼ばれる人の頭脳に当たる半導体が作られる。
半導体の回路の線の幅は12ナノメートルから28ナノメートルで、一般的に回路の線の幅が細いほど高性能といわれていて、日本国内で作られる半導体はこれまで40ナノメートルが限界だった。
世界が注目 創業者モリス・チャン氏も
2月24日の開所式には、国内外のメディアが注目する中、TSMCからマーク・リュウ会長やシーシー・ウェイCEOが参加し、環境への配慮をアピールした。
TSMCマーク・リュウ会長:
再生可能エネルギーを100パーセント使うことを約束する。水の効果的なリサイクルも行う。使った分の水の地下水保全にも専念する
開所式では、TSMCの創業者、モリス・チャンさんも登壇。ソニーの創業者の一人、盛田昭夫さん(故人)との日本でのエピソードを交えながら「日本の半導体製造のルネサンスの始まりだと期待している」と述べた。
ソニー・デンソー・トヨタのトップも参加
また、JASMに出資するソニーグループの吉田憲一郎会長やデンソーの林新之助社長も出席。先日、TSMCが「熊本での第2工場建設」を発表したことに合わせて、新たに出資することを明らかにしたトヨタ自動車の豊田章男会長の姿もあった。
TSMCの第2工場では6ナノと40ナノの半導体製造を新たに計画。6ナノの先端半導体は自動車の自動運転に、そして40ナノの半導体はマイコンと呼ばれる自動車に多く必要な半導体に使われる予定だ。
3兆円規模の投資 国が最大1兆円超支援
開所式が行われた第1工場と計画中の第2工場合わせて総投資額は3兆円規模で、雇用は3400人に上るとみられている。
式では、政府から齋藤経済産業相や坂本農林水産相、木原防衛相なども参加した。
岸田首相:
JASMの2号棟(第2工場)についても支援を決定した
岸田首相はビデオメッセージを寄せて、第2工場へ最大で7320億円を助成することを明らかにした。第1工場と合わせると日本政府の支援額は最大で1兆2000億円を超える。
この前例のない民間への巨額支援に対して齋藤経産相はその必要性を説明した。
齋藤健経産相:確かに(第2工場に)7320億円と第1工場と加えると1兆円を超える巨額の支援ではありますけれども、世界では半導体製造能力の確保に向け各国が巨額の予算を投じる大競争時代を迎えている。産業発展・経済安全保障にとって今回の支援は私は必要だと思う
一方で課題の地下水保全 知事などが視察
一方で、TSMCの第1工場をめぐっては、1日当たり8500トンの水を使うことから、地下水保全が課題の一つになっている。
開所式終了後、蒲島熊本県知事や大西熊本市長などは工場の水処理施設を視察した。
蒲島郁夫熊本県知事:
(県民は水を)一番心配しているんじゃないかと思う。それに対応する態勢がJASMはできていると思う。環境と経済の共生のベストバランスをやってほしいし、環境や地下水に力を注いでいると感じた
大西一史熊本市長:
世界のトップレベルの環境基準を達成していると思った。一方で、処理をされた水や地下水の量は行政として厳しく見ていかないといけないし、情報公開することが、安心につながる
一方、取材に応じたJASMの堀田祐一社長は「高品質のものづくり以上に自然との共生を図っていきたい」と話した。
TSMCの第1工場は年内の量産開始を目指している。
(テレビ熊本)