立切り試合とは…「基立ち」と呼ばれる一人の剣士が、次から次へと襲い掛かる数十人の挑戦者と試合を繰り返す修行。お情け無用立切り試合実行委員長の久保木義明教士七段によると「明治維新で大きな功労があった剣豪・山岡鉄舟が、自らの道場で免許皆伝を与えるために、壮絶な試合を行ったことに由来する」という。この立切り試合に挑戦する、一人の警察官を取材した。
成し遂げれば大きな成果
久保木義明教士七段が「これを成し遂げた後には、剣道においても人間としても大きな成果が出るものであり、新たな境地がひらかれることを期待する」と話す立切り試合。一年に一度、職業に関係なく実績・実力を兼ね備えた剣士が選考され、これまでに114人が立切りに挑んできた。
![お情け無用立切り試合実行委員長・久保木義明教士七段](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/5/8/700mw/img_5884f63c925a421ffdc2b2c74558d13f86418.jpg)
アドバイスは…「やるしかない」
2024年、実行委員会から立切り試合に挑むことを認められた一人が、福島県警察本部機動隊・柏浦一輝巡査長。福島県警3400人余りの中から選び抜かれた猛者である柏浦さんは、20年以上剣の道を歩んできた。
![立ち切り試合に挑む柏浦一輝巡査長](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/4/1/700mw/img_41b98191a6fccc8f68b49cb50a8fc7c867336.jpg)
そんな柏浦さんでも「最後まで立ち切れるか不安は大きい。”やるしかない”とみなさん、口を揃えて…技術的なアドバイスはなく”やるしかない”とおっしゃって」と少し不安そうだった。
![術科特別訓練員の柏浦さんでも不安はある](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/7/6/700mw/img_76a1631fba67de1b0f1036a37c2c5c7779493.jpg)
望んだ立ち切り試合
31歳の柏浦さん。術科特別訓練員「特練員」としてはベテランの年齢となり、警察官である以上 異動もある。剣道に専念できる今、体力・気力ともに充実したこの時に「立切り試合」に挑むことを望んでいた。
![立切り試合への環境が整う](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/9/b/700mw/img_9b8a283d7b37ebfc68b762863a78daaf61036.jpg)
妻・玲莉さんは「毎日、朝早くから夜遅くまで練習しているみたいなので、本番も頑張ってほしい」と話す。
柏浦さんは「長時間試合したことがないので、未知の領域というか経験したことがない。子どもたちには、勝ち負けにこだわらず頑張ることの大切さを教えられたらいい」と話した。
![子どもたちに頑張ることの大切さを教えたい](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/c/c/700mw/img_cc086884e4639b4f584b9b848cbdb5f981041.jpg)
精鋭揃いの挑戦者と約2時間
大会当日。柏浦さんは「きのうも緊張して、ずっとソワソワしてる。試合前とは違う緊張感がある」と話す。試合相手は31人、挑戦者もまた精鋭揃いだ。最後まで、折れない倒れない覚悟を決めた。
![試合相手は31人 挑戦者もまた精鋭揃い](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/2/c/700mw/img_2ca3ad708d1a10b808863d4f91e9ac8991613.jpg)
試合時間は3分。時間内の有効打突の多い方を勝ちとし、基立ちの剣士は31人の挑戦者と試合を繰り返す。最後の試合が終わるまで戦い続ける。
![試合時間は3分 有効打突の多い方が勝ち](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/b/d/700mw/img_bd70d773599b6be15b9572a4f5bde9cc113210.jpg)
次第に思うように動けず
鋭い面を繰り出し、一方的に挑戦者をはねのけていく柏浦さん。しかし…徐々に削られる体力。竹刀を持つ手も足さばきも、思うように動かなくなってきた。
![序盤は対戦相手をはねのけていたが…](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/d/f/700mw/img_dfc12714302907169377a29d8e877ebc85364.jpg)
お情け無用立切り試合実行委員長の久保木義明教士七段は「はじめの1時間ぐらいは技を出すことができるが、1時間を超えたあたりから身体が思うように動かなくなり、最終的には自然と身体が動いてくる。試合ではそこが求められてくる」と話す。
![苦しそうな表情を見せるように](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/f/4/700mw/img_f4791f1f56b4bf55cc6d038d64f18c3364706.jpg)
限界近づく…ここで最強の相手が
ここまで20人との試合を終え、1時間。越えるべき壁が近づいてきた。大谷昇平錬士六段…機動隊剣道部の先輩であり、全日本選手権5位の最強の相手だ。
![20人との試合を終え 最強の相手と挑む](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/3/6/700mw/img_36ea64451ba52784ad6937d943f4f74074174.jpg)
圧倒的な気迫…まさにお情け無用。手加減せず、容赦のない戦いこそ挑戦者からの激励だ。最後は渾身の面で大谷先輩を破った。
![跳ね飛ばされても…](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/e/c/700mw/img_ecce60863f592e238c0b76420448375b78180.jpg)
すでに体力は限界を迎えたが、残る6人とも戦い続ける強い覚悟で挑むんだ。「チームを引っ張っていけるような選手になれるように、限界に挑戦して新しい自分が出るように」と話していた柏浦さん。戦績は、24勝6分1敗。最後まで戦い抜いた。
![最強の相手に面 31人を相手に戦い抜いた](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/6/3/700mw/img_63f83f88849ba52c9d458a329521325e84008.jpg)
思いを感じるから乗り越えられる
試合を終え、柏浦さんは「チームメイトや家族の頑張れっていう声援が、合間合間に聞こえてきて。それが頑張りにつながった。分からない人から見たら辛いだけと思うでしょうが、決して辛いわけじゃなくて、愛があって乗り越えられるというのが分かっているからこそ、厳しくやっていただいているのでありがたい。支えてくれている方が沢山いるということを胸に、頑張っていきたい」と話した。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/d/8/700mw/img_d8100943feed84ab503003016e9dacc6112602.jpg)
剣の道に、生きる…剣道に終わりはない。
(福島テレビ)