3月、ある男性が自らの半生をつづった本が出版される。中学2年生から17年もの間「ひきこもり」だった男性の苦しい経験と、閉ざされた心を開いた過程。今だからこそ書き残したいことがある。
■ひきこもりの経験をした自らの半生を本に「社会に知ってほしい」

兵庫県丹波市に住む糸井博明さん(49)。 自らの半生をつづった本が、17日、自宅に届いた。
(Q.どうですか、本に糸井博明って自分の名前が書いてあるのは?)
糸井博明さん(49):ちょっと信じられない。ここまで生きてきたことを記せて良かったです

そこに書かれているのは、17年間ひきこもった自らの経験だ。

糸井博明さん(49):虚無というか、何もない空間の中で。この部屋の中が、私の世界だったかもしれない
中学校での成績不振などをきっかけに、14歳から自室にひきこもった。

自ら描いた表紙には、やるせなさやふがいなさといった、思いのたけを社会に知ってほしいと願う、当時の自分が表現されている。
糸井博明さんの著書より:季節の感覚も、時間の感覚もわからず、急激に体調が悪くなって、もう死ぬのではないか、このまま死んだら、誰も私が生きていなくても、その翌日も、何も変わらぬ毎日が続くんだと思っていた
■31歳入院で引きこもりを脱し、34歳で就職

精神科の閉鎖病棟への入院という形でひきこもりから脱したのは、31歳の時。 退院した後は、社会に復帰しようと、もがく日々が続いた。周囲に助けられながら34歳で初めて豆腐店に就職し、閉ざされた心が徐々に動いていった。
糸井博明さんの著書より:商品を家におみやげとして持っていくと喜んでくれたり、苦労話を聞いてもらえた時は、私も社会人として肩を並べられた気がした
■ひきこもり状態の解消ではなく「道しるべ」になれば

現在は、兵庫県丹波市内の福祉施設で働く糸井さん。 自分と同じひきこもりの状態にある人たちの「道しるべ」になればと願っている。
糸井博明さん(49):いまひきこもっている人とか、行動を起こせない人に、同じ気持ちを持っている人がほかにもいるし、社会復帰をした人もいるって知ってもらえたら。ひきこもりという状態の解消ではなくて、視野が広がったらいいなと思います
糸井さんの経験をまとめた本は3月に出版される。国の調査によると、ひきこもり状態の人は146万人いて、大きな社会課題の1つとなっている。ひきこもり状態の人の手元に、糸井さんの本が届くことで、何か状況が変わるきっかけになるかもしれない。
(関西テレビ「newsランナー」2024年2年19日放送)