パンクした車のレッカー移動をインターネットで検索した業者に依頼したら24万円を請求された。「高い」と抗議をすると、抗議を聞く時間も「作業時間になるから」と追加料金をちらつかせた。無許可営業やウソの広告などで警察に摘発された悪質業者の手口を、被害者が語る。

「最速5分」が到着まで1時間

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2023年4月 静岡県浜松市に住む20代の女性が市内で車を運転していたところ、縁石にタイヤをぶつけてパンクしたため、近くのコンビニの駐車場に車をとめてインターネットで検索したレッカー業者に搬送を依頼した。

女性は「スマホで『浜松 タイヤ レッカー』と検索して、一番上に出てきたところに電話をかけた。サイトには『(現場到着まで)最速5分』と書いてあったので、ここでいいやと思って」と、問題の業者に依頼した経緯を話す。

レッカー業者の到着は依頼の1時間後
レッカー業者の到着は依頼の1時間後

しかし、「最速5分」とうたっていた業者が到着したのは約1時間後、さらにレッカー移動の後に請求された料金は17万円余りだった。
女性は現金やクレジットカードを持っていなかったため、代車を借りていったん自宅に戻った。料金などを含め経緯を話すと母親が不審に思い、一緒に業者が待つ場所に戻り料金への不満を訴えた。

抗議を聞くのも“作業時間”で追加料金

その時に女性が撮影した映像を見せてくれた。
母親が「高いなと思っているので」と抗議すると、業者は「あ、そうなんですね。まあ思うのは自由なんで」と答える。
さらに業者は「これ以上 (抗議で)拘束されるようでしたら、作業時間がかかってきますので、我々拘束されるので」と、話が続くようなら追加料金が発生することをほのめかす。

母親が「作業は何もしてないじゃないですか、もうお金を払ったから」と言うと、業者は「この話をしているのだって作業ですよ、ボランティアでやっているわけじゃないので」と言い返していた。

レッカー移動と“待ち時間代”で24万円

最終的に女性が支払った代金は24万円余り。コンビニ駐車場からタイヤを交換するカー用品店まで車を移動させた距離は約2.5km、レッカー移動にかかった時間は30分ほどだったという。
当初請求されていた17万円に、女性が自宅に帰り戻ってくるまでの約1時間半の“待ち時間代” 7万円が加算されていた。

被害にあった20代女性:
最初は(業者を)呼んでちゃんと運んでくれて直してくれると信じていたのに、最終的に24万円を請求されて、信じたのが悔しいなって思います

インターネットでウソの広告

「パンク修理4400円~」、こちらが女性が依頼した業者のサイトだ。

さらに目を引くように書かれた「国家資格保有の整備士」という文字。しかし、実際には国家資格を持つ整備士はおらず、警察は2024年1月 ウソの広告を掲載した不正競争防止法違反(誤認惹起行為)の疑いで、このレッカー会社の40歳の社長を逮捕した。

送検されるレッカー会社社長(2024年1月・藤枝警察署)
送検されるレッカー会社社長(2024年1月・藤枝警察署)

サイトを見て車のレッカー移動を依頼した人は警察が把握するだけで173人、売り上げはわずか1年半で4500万円にのぼるとみられている。

押収されたレッカー車(藤枝警察署)
押収されたレッカー車(藤枝警察署)

社長や従業員はレッカー業を無許可で営んでいた道路運送法違反のほか、高速道路を使用していないにもかかわらず「高速道路をつかって運送した」と虚偽の説明をして料金をだまし取った詐欺の疑いでも2023年11~12月に逮捕され起訴されている。

レッカー会社の事務所を取材する斉藤記者
レッカー会社の事務所を取材する斉藤記者

社長が運営するレッカー会社を記者が訪ねると人の気配がなく、関係者によるとほとんどの従業員が退職したという。金の管理はすべて社長が行っていたとみられる。
警察は余罪が複数あるとみて、事件の全容解明を進めている。

プロが指摘する“不適切な点”

このレッカー会社の従業員が実際に車を運搬した際の映像(静岡県警提供)を、静岡県レッカー協同組合の加藤紀明 理事長に見てもらうと、「レッカー業者として適切ではない点がいくつもある」と指摘した。

静岡県レッカー協同組合・加藤紀明 理事長:
まずヘルメットしていないですよね。レッカーの会社の方は帽子なりヘルメットなりをかぶっています。何があるかわからないので安全のために、そうしています

静岡県レッカー協同組合・加藤紀明 理事長:
あと靴もこれを見る限りただのスニーカーに見えますね

レッカー作業でも車を止めようとして止まらず慌ててサイドブレーキを踏んでやっと止める場面があり、加藤理事長は「プロの仕事というより素人っぽい」と感想を漏らす。

レッカー業者の利用明細書
レッカー業者の利用明細書

不審な点は明細書にも見つかった。「積込み」と「ウインチ使用」と別の項目で料金を請求しているが、加藤理事長によると「通常はウインチを使って積み込むので、これでは料金を二度とっている」と指摘する。

「高速道路出動」という料金項目にも疑問を投げかける。加藤理事長によると「高速道路出動」は一般に高速道路上での作業の時に安全対策費や危険手当として請求するもので、「高速道路を使って行ったから『高速道路出動』というのはおかしいですね」と話す。

高額請求被害にあわないために

こうした被害にあわないように、加藤理事長は「信頼するディーラーや自動車保険の保険会社にまずは連絡することが大切」と話す。連絡先は保険の証書などに記されている。多くの自動車保険には、走行中の事故や故障の際にけん引などをしてくれるロードサービスが付帯されている。

押収されたレッカー車(藤枝警察署)
押収されたレッカー車(藤枝警察署)

静岡県によると消費生活相談窓口に寄せられた「インターネットで依頼したロードサービス」に関する相談件数は2023年4月から12月までで40件で、前年の同じ時期(21件)の約2倍だ。
ロードサービス業者とその場で契約した際 サイト等の表示額と実際の請求額が大きく異なる場合は、特定商取引法の「訪問販売によるクーリング・オフ等」が適用できる可能性がある。
説明されていない費用やキャンセル料などでトラブルになった場合は、消費生活センターなどに相談するよう呼びかけている。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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