鹿児島県内の外国人労働者は2023年10月末時点で過去最多の1万2,015人。その半数以上は「技能実習生」だ。
日本で働きながら技術や知識を身につけ、母国に持ち帰るという制度だが今、見直しが進められている。

人手不足を補う「外国人労働者」

鹿児島市にある技能実習生の研修施設。「左手は自分で(袖を)通しますか?」と、要介護者役の女性に日本語で話しかける女性の技能実習生。ミャンマーから来日し、鹿児島県内の介護施設に勤務するのを前に、約1カ月間の研修を受けている。

ミャンマーから来日した技能実習生
ミャンマーから来日した技能実習生
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来日してまだ1,2カ月。ミャンマーで学んできたという日本語はなかなか流ちょうだ。本人は「まだまだです」と謙遜するが「先生たちも優しいので楽しい」と目を輝かせていた。
同じミャンマー出身の研修生の一人は「日本で5年間働き、帰国したら日本語学校を開きたい」と将来の目標を語った。

1993年から開始された技能実習制度の仕組み
1993年から開始された技能実習制度の仕組み

1993年から始まった技能実習制度。相手国の送り出し機関と、日本の監理団体を通して、企業は技能実習生の受け入れを申し込み、企業と実習生が直接雇用契約を結ぶ。日本で働きながら技術や知識を習得し、それを母国に持ち帰るという国際貢献が本来の目的だが、実際は人手不足を補う労働力としての役割を担っている。

「技能実習生」を取り巻く問題

多文化共生が専門の鹿児島大学法文学部・酒井佑輔准教授は、技能実習制度の課題を指摘する。

鹿児島大学法文学部・酒井佑輔准教授:
多くの問題がある制度と認識している。(技能実習生は)正規の労働として認められていない。(労働者としての)権利が担保されていない。

技能実習生は、配属された事業所から3年間は転籍が禁止されている。そのため、実習生が職場環境に不満を感じても、我慢を強いられることになる。

受け入れ先の企業との橋渡し役を担う監理団体の一つ、れいめい事業協同組合・加来学事務局長は「よく聞くのは寮の問題。プライバシーを守りたい子はいる。他の職種で働きたいと相談がくる」と話す。

実際に、技能実習生を取り巻く生活環境では問題も起きている。

国は寝室の広さが基準より狭く、家賃を実費より多く徴収したとして2023年、鹿児島・枕崎市の監理団体に行政処分を行った。
政府は技能実習生の実態に即して制度の目的を「外国人材の確保と育成」と見直す方針で、転籍の制限も緩和される見通しだが、国際的にはまだ後れをとっているようだ。

鹿児島大学・酒井准教授:
どの国も少子高齢化の現状を抱えながら、産業を維持するために、外国人を受け入れるか躍起になっている状況。韓国、台湾を含め、制度を精緻化し受け入れ体制を整えている。その中で日本は諸外国と比較して非常に後れている。

「技能実習生」のこれから

鹿児島市の介護施設で働くベトナム人のダオ・カー・トゥアンさん(29)は、技能実習生となって3年目。

ダオ・カー・トゥアンさん(29)
ダオ・カー・トゥアンさん(29)

「膝は大丈夫ですか。まだ、痛いですか?薬飲んでいますね」と笑顔で語りかけるダオさん。

利用者は「辛抱強い。頼りになる。日本人は介護でもなかなか続かない。ダオさんは辛抱強い」、「感心している。いつも応援している。とても優秀な方。いつも優しく話しかけてくれる。助かっている」と、その働きぶりを高く評価している。

今村哲朗施設長も「キャリアアップしてもらって、より経済的に豊かになってもらえたら僕たちもうれしいし、本人のためにもなるので、そこを施設として考えている」とダオさんをサポートする。

帰宅したダオさんは食事の準備。寄り添うのは妻と生後3カ月の長男、ダオ・クウァン・カイちゃん。

ダオさん夫婦
ダオさん夫婦

お互い技能実習生として職場で知り合って結婚したダオさん夫婦。妻は現在産休中だ。

実はダオさん、取材の時点では技能実習生だったが2024年2月1日、より高い技能を取得した外国人に与えられる「特定技能1号」という在留資格を取得したとの知らせが届いた。ダオさんは介護福祉士の国家試験も受けていて、結果は3月下旬に判明する。

職場や家族の支えを受け、技能実習生から着々とキャリアアップを進めるダオさんは「私が永住者になって、妻と息子が扶助になったらいいと思っている」と将来の希望を語った。
同じく技能実習生で現在産休中の妻、ブイ・ティ・ハンさん(24)も「鹿児島にずっといたいです」と笑顔を見せた。

現在鹿児島県内にいる技能実習生は6,200人余りで、前の年より1,000人以上増えた。少子高齢化による働き手不足の構造が変わらない中、外国人労働者は欠かせない存在。
ダオさんのように、技能実習生がしっかり将来を描けるような環境整備が企業や行政に求められている。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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