能登半島地震で震度5弱を観測した石川・内灘町。ドローンで町を見てみると、地震の揺れによる建物倒壊とは異なる深刻な液状化被害の実態が浮き彫りになった。再建の見通しが立たない中、町長は被災した地区ごと避難する“集団移転案”に言及した。

ドローンで見た“液状化した町”

亀裂が入ったコンクリートの地面から溢れ出した茶色い“泥水”。

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家や田畑など街の至るところで、液状化が起きていたことが確認できる。

液状化の影響で街灯が人の手に届く位置まで下部が埋まってしまった電柱も
液状化の影響で街灯が人の手に届く位置まで下部が埋まってしまった電柱も

液状化の影響で、電柱の下が埋まってしまい、街灯が人の手が届く位置まで来てしまっている被害もあった。

さらに低空飛行で見てみると、激しく波打つ道路。

家の塀は大きく傾き、植えられた植物が道路にはみ出している。

内灘町は地震から1カ月以上経った今も、被災住宅は1463棟に上っている。

町の人からは「今まで一生懸命してきたけど、そろそろこんな生活も疲れた」といった嘆きの声も聞かれた。

町の特殊な地形が液状化の原因

石川県内灘町は、隣接する金沢市から車で約20分の位置にあり、ベッドタウンとして栄えてきた。

地震発生前(内灘町公式YouTube)
地震発生前(内灘町公式YouTube)

町には海水浴場や公園などもあり、子育て世代が多く暮らしていたが、住宅地の光景は地震で一変した。

地震発生直後
地震発生直後

地震発生時の映像を見ると、アスファルトに亀裂が入り、地面から茶色く濁った泥水が噴出。辺りは瞬く間に冠水してしまっていた。

なぜここまで被害が深刻化したのか?特に被害が大きかった西荒屋地区を歩いてみると、町の至るところで砂が目についた。砂は、触ってみると粒が細かく、海岸にある砂のような手触りだ。

内灘町は砂丘の上にあり、湖を埋め立てた場所にできている。被害が多かったのは、砂丘の陸側にある住宅街だった。

専門家は液状化の原因は、そうした“町の特殊な地形”にあると見ている。

防災システム研究所 山村武彦所長:
内灘町は緩い斜面になっていて、液状化の危険性は以前から指摘されていた。

山村氏によると、地震の揺れで地下水に砂が混じって液状化。そこに緩やかな傾斜があったため、低い場所にある住宅地に一気に流れ込んだという。

防災システム研究所 山村武彦所長:
液状化対策をすればいいが、しないと液状化を繰り返す可能性があるので住むことが難しい。(液状化対策は)住民全体の合意と予算の負担を県と市がどう対応するのか。リーダーシップの本気度が見られると思う。

地区ごと移動“集団移転”の案も…

再建の見通しが立たない中、内灘町の川口町長は被災した地区ごと避難する“集団移転案”に言及した。

内灘町 川口克則町長:
極論を言えば“集団移転”という考え方も出てくるのではないか。

街の外への避難が難しい高齢者を念頭に、町内の別の場所で暮らすという“集団移転”。町には今、今後のまちづくりの方針を早期に示すことが求められている。
(「イット!」2月8日放送分より)