“巨大な段ボール箱”のような見た目で広島の街を走り、SNSでも注目を集めた「段ボール電車」がラストランを迎えた。愛好家が15分の1サイズの本物の段ボール電車を作ってしまうほど、その存在感は大きかった。
段ボール電車、朝日を浴びてラストラン
2月7日、午前5時40分。夜明け前のホームに宮島口行きの路面電車が入ってきた。その車体はまるで「巨大な段ボール箱」のよう。
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これは、広島市内の段ボール製造メーカー「桐原容器工業所」が広告主となって、2021年12月から走らせてきたラッピング車両だ。本物の段ボールにそっくりな見た目は、SNSを中心に話題を呼んだ。
電車の外側だけではない。2023年11月には、本物の段ボールを使った“中づり広告”で電車内もジャック。広島の春夏秋冬の風景を立体的に切り出し、段ボールの使い方の多様さをPRした。
![「路面電車と紅葉」を段ボールで立体的にデザインした中づり広告](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/a/5/700mw/img_a5f307e194d0d83d103b1ac8ca1141ff210134.jpg)
コロナ禍をきっかけに、取引先以外にも会社を知ってもらおうと始めた「段ボール電車」だが、運行開始から丸2年が経ち、節目を迎えたとして段ボールのラッピングが取り外されることになった。
広電も運行終了を惜しむデザイン性
2月7日のラストランは、通勤時間帯の広島市街地。午前8時半、最後の乗客を乗せ、広電西広島駅に到着した。
駅に居合わせた人:
古い見た目ですけど、それでもかっこいいです
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「段ボール電車」は車体広告でありながら、広島電鉄の担当者も運行終了を惜しむほどデザイン性が際立っていた。
広島電鉄・経理部 森下俊英 資材課長:
企業広告をドーンとやるのが一般的なラッピング車両のパターンなのですが、桐原容器工業所は、あまり会社の名前を大きく出していない。そういうところがすごく面白い
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2023年度、広島電鉄(路面電車とバス)の交通広告の売り上げは、初めて「車内」よりも「車外」が上回った。コロナ禍とデジタル化の普及によって、乗っていない人にも伝わる広告が重宝されてきているという。
愛好家が300時間かけて忠実に再現
ラストランが迫る1月13日、一企業のラッピング車両としては異例のイベントも開催された。ネット上で存在を知った静岡県の愛好家が、趣味で15分の1サイズの“本物の段ボール電車”を作ったのだ。
![“本物の段ボール”で制作した15分の1サイズのミニチュア](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/2/5/700mw/img_25d80b972ff532517c77f83423040161251811.jpg)
本物の段ボール電車 制作者・伊藤元陽さん:
のべ300時間くらいかかりました。段ボールの断面を表現に使うのが好きなんですよ。この車両はデザインに断面を使っていたので、これは私が作りたいと思いまして
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細かいデザインまで段ボールで忠実に再現。桐原容器工業所の社員たちも舌を巻く精度の高さである。
桐原容器工業所・桐原真一郎 社長:
電車を走らせたものとして、こんなにうれしいことはないですね。本当に良かったと思います。惜しまれながら消えていくのがいいんでしょうけど、いつかまたどこかで段ボール電車をやりたくなってきています
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遊び心満載のデザインで広島の街を駆け抜けた「段ボール電車」。本来の広告以上の存在感を放ち、一つの作品として多くの人を魅了した。
(テレビ新広島)