刑務所や少年院などの矯正施設に服役し、出所した後に犯罪を繰り返してしまう再犯者の問題。

出所者の支援を保護司や協力雇用主などが行うだけでなく、この問題を社会全体で解決するために、出所者の「親」となり、刑務所や少年院を出た人に就職する機会を与えることで、社会復帰を支援しようというプロジェクトがある。

企業が出所者の「親代わり」に

法務省の令和5年度版「犯罪白書」によると、刑法犯の件数は年々右肩下がりになっている一方で、再犯者の数は減少幅が小さく、割合的には増加傾向にある。令和4年度の再犯者率は47.9%と、前年度より下がったものの、2人に1人に迫る勢いがあり、依然として高い傾向にあることがわかる。

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こうした背景から、刑務所や少年院などの矯正施設を出所した後の円滑な社会復帰を支援し、再び罪を犯さないようにしようとする「日本財団職親プロジェクト」と呼ばれる取り組みが行われている。

このプロジェクトを推進する日本財団によると、この取り組みは、2013年2月に、関西地方に拠点を置く企業と矯正施設やそれを管轄する法務省などが、官民一体となって連携することで開始された。

出所者を雇用する「職親企業」は出所者を雇用し、働いている時間だけではなく、生活指導も行うこととなっている。また、受刑者の就労意欲を高めるため、企業説明会(=「仕事フォーラム」)も実施される。

開始から10年以上が経った2023年6月末の時点で、843人の応募者に対して、477人が実際に就職することに成功しているという。出所者の親代わりをする「職親企業」は、北海道・東北・関東・新潟・大阪・和歌山・福岡地区の企業、業種においては建設業・飲食業・運送業・美容業・介護業などにまで拡大している。

日本初!「メタバース」活用した企業説明会

今月2日に、このプロジェクトをさらに加速させる取り組みが実施された。

日本財団によると、基本的に対面で実施される企業説明会において、参加する企業側は各矯正施設まで直接行く必要がある一方、受刑者からしても、現在収容されている施設と今後住む場所が異なる場合が多いため、受刑者側と企業側のニーズにミスマッチが生じている部分があったという。

「メタバース」を活用した企業説明会の様子(2月2日)
「メタバース」を活用した企業説明会の様子(2月2日)

そこで、このようなミスマッチを解消する目的で、日本財団と法務省が連携して、「メタバース」を活用した企業説明会が実施された。

メタバースを活用することで、各矯正施設から離れた距離にある企業が参加しやすくなり、受刑者側も複数施設の企業ブースを回ることが出来るようになる。対面では直接聞きづらい給与に関することや休暇のことについても、聞きやすい雰囲気を作る狙いもあるという。

また、受刑者が以前住んでいた場所ではなく、新たな場所で職に就くことが出来れば、罪を犯した場所での人間関係を断ち切り、再チェレンジすることも可能となる。

このメタバースを活用した企業説明会は日本初で、東京・神奈川・埼玉など首都圏から大阪・福岡まで13の企業が参加した。業種は、建設業・飲食業・人材派遣業・介護福祉業など多岐にわたった。

日本財団公益事業部 福田英夫部長
日本財団公益事業部 福田英夫部長

今回の取り組みについて、日本財団公益事業部・福田英夫部長は「メタバースを活用することで企業と受刑者を結ぶことが時間的・物理的に容易となる。その結果、企業にとっては雇用促進を図ることができ、受刑者にとってはより多くの業種・企業と接することになるため、職の選択肢が広がる。今後、この取り組みを全国に広げていきたい」としている。

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プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。