能登半島地震によって、富山県内で多くの人の生活に影響したのが、復旧まで3週間を要した「断水」。複数の水道管が破損し、貯水池が2時間で空となり漏水個所を特定できず、復旧作業に時間がかかった。進めたい耐震化は、減り続ける料金収入に変わらない維持管理費…厳しい現実があった。
3週間続いた断水 貯水は2時間で空

地震発生後、氷見市や高岡市、小矢部市など富山県西部を中心に1万9000戸あまりで発生した断水。
氷見市では全域が断水する事態となり、市民生活に大きな影響を及ぼした。

氷見市民:
「全然出ませんね。ご飯炊いたり、洗面とか歯磨きはどうしても必要になる」
「水が一番ほしい」
「復旧の目途がついていないと聞いた。いつになるのか…」
氷見市の断水が全て復旧したのは、1月21日。地震から3週間を要した。
なぜ、すぐに復旧できなかったのか。
その理由について、氷見市上下水道課の足立章夫課長は「水が漏れている水道管の破損箇所を特定するのに時間がかかったため」と説明した。

氷見市上下水道課 足立章夫課長:
「地震が発生して氷見市内でたくさんの漏水が発生しました。そのことから、上田子浄水所の配水池の水が2時間たらずで空になった。空になると漏水の場所が分からなくなってしまいます」
市内の水道管の破損は、確認されているだけでも約200か所に上る。

修復するには、まず水道管に水を流して、どこが破損しているのかを特定する必要があったが、地震発生時に市内のいたるところで水道管の破損による水漏れが生じ、水を供給するもととなる配水池が、地震からわずか2時間で空に。破損個所の特定が難しくなった。
氷見市上下水道課 足立章夫課:
「(配水池が)空になると、漏水の場所が全く分からなくなる。一度配水池に水を貯めて漏水の箇所を探しながら順次エリアを拡大していく必要があった」
欠かせないインフラ 進まない耐震化
今回の事態を踏まえ、氷見市では、水道管の耐震化の重要性が再認識された。
氷見市上下水道課 足立章夫課:
「耐震管路で漏水は発生していない状況。管路の耐震化を進めるのは有効な手段。耐震管路を増やしていくのが今後の防災対策に繋がる」

耐震管路とは、一定の間隔で伸び縮みするつなぎ目がある、地震で破損しにくい水道管で、阪神大震災以降、氷見市でも導入を進めてきました。
しかし、耐震適合性がある水道管の割合は、2022年度時点でわずか2割あまりに留まっている。

氷見市 林正之市長:
「これまでも水道管の耐震化を進めてきたが、やはり耐震化率も低かったというのも(水道管の被害に)影響している。もう少しスピードアップをしてやっていかねばならない」
水道管の耐震適合率は、県内全体でも4割あまり。(県内42.4% 全国42.1% 2021年度)
生活に欠かせないインフラであるにも関わらず、耐震化が進んでいないのが現状だ。
人口減少…厳しい水道事業の経営

県生活衛生課 藤本昭彦課長:
「(耐震化を)一気にやれればいいが、やるとなると多額の予算が必要になる」
水道行政を担う県生活衛生課の担当者は、耐震化が進まない背景には、人口減少による収支の厳しさがあると言う。
県生活衛生課 藤本昭彦課長:
「(水道事業は)原則として市町村が水道料金を財源に独立採算で運営しているので、水道管の更新や耐震化にかかる経費についても基本は水道料金で賄うということになります。人口減少で供給水量は減少している。それに伴って当然料金収入も減少する。一方で水道施設の維持管理とか更新費用は減ることがないので厳しい経営を余儀なくされている。料金収入(水道料金)をあげればもっとできるかもしれないが安易にそういったこともできないので限界はある」
県内の水道管の耐震適合率は、年間1~2%の微増で推移している。
国は2028年度末に60%以上とする目標を掲げているが、厳しい現実が立ちはだかっている。
氷見市では、年間5億円を投じて、耐震性のある水道管への更新を進めているが、市内の広い範囲で耐震化を図るには、相当な時間がかかるとみられる。
(富山テレビ)