理化学研究所が「超薄型有機太陽電池」を開発した。
水に強く、洗濯可能で柔軟性があり、ウェアラブルデバイスへの電源供給が期待されている。
ただしビジネス成功には、技術の量産化と価格低下が課題で、これが克服されればアパレルの機能向上が見込まれる。

柔軟性・耐水性OK“超薄型”太陽電池

これまで弱点だった「水」に強く、服につけたまま洗濯しても問題ない、“超薄型”有機太陽電池が開発された。

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水の中でも光を当てると発電する太陽電池。
理化学研究所が新たに開発に成功した、水中でも発電できる、厚さ3マイクロメートルの「超薄型有機太陽電池」だ。

これまでの超薄型有機太陽電池は、水に弱いという弱点があったが、今回開発された電池は、酸化銀を用いた新たな技術で、薄さや軽さのほか、折り曲げても問題のない柔軟性を維持しつつ、耐水性を実現した。

これにより、従来では発電できなかった水中でも、1時間以上連続で発電することができるという。

洗濯しても問題がなく、今後、服に取りつけたままの活用や、雨や手洗いの際にぬれても使えるため、ウェアラブルデバイスへの電源供給で応用が期待される。

研究レベル開発から量産化の実現を

「Live News α」では、早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
── 超薄型の有機太陽電池。いかがですか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
これまでにも、自動車の流線型のボディーに曲面の太陽光パネルを使うなどの例がありました。ただ、このケースでは曲面はできても、形を柔軟に変化させることができませんでした。

今回の新型パネルは、自由自在に形が変わることができるわけです。しかも、耐水性があり、洗濯も可能になるということで、アパレルの機能的な価値が、変わるかもしれません。

堤 礼実 キャスター:
── 洋服が、どのように変わっていくのでしょうか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
太陽光で発電する洋服の登場が期待できます。例えば、夏に工事現場などで着用される小型のファンで風を送り込む空調服も、昼間は太陽光から電力を得ることが考えられます。

将来的には、洋服にディスプレイや空気清浄などの機能性を加えることも、可能になるかもしれません。

これまでウェアラブルというと、時計やメガネなどの固体の機器でしたが、今回の技術によって、洋服がデバイス化していく未来を想像すると、どこかワクワクしますよね。

堤 礼実 キャスター:
── 洋服の機能性というと、暑さや寒さをしのいだり、ポケットの収納性などのイメージがありますが、それが変わっていくんですかね?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
アパレルの機能的な価値が広がるためには、今回の技術が量産化され、価格が下がる必要があります。

この量産化の際に懸念されるのは、日本の場合、新しいデバイスなどを研究所レベルで開発するのは得意なのですが、技術で先行して、ビジネスで追い抜かれる傾向があることです。

技術はあくまでも成功への手段

堤 礼実 キャスター:
── 日本で生まれた技術が、ビジネスでも成功するためのポイントは、どこにあるのでしょうか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
技術は成功するための1つの手段でしかない」、この素朴な経営の話をもう1回思い出す必要があるように思います。

半導体・液晶パネル・リチウムイオン電池など、技術で先行した日本企業が敗れた例を分析すると、技術的に製品化できたことで満足してしまい、大量に、しかも、安い価格で、安定してもうかる生産技術の確立に欠けていました。

今回の技術が、ビジネスでも成功することを期待したいです。

堤 礼実 キャスター:
日本で生まれた技術を大切に育てていきつつ、弱点を強みに変えた製品が、日常生活はもちろん、幅広い分野で生きていくことを期待したいですね。
(「Live News α」2月1日放送分より)

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