海外旅行先でまさかの「入国拒否」が増えている。

背景には、日本人女性による海外での“出稼ぎ売春”があるというが、アメリカのビザに詳しい佐藤智代行政書士に、どのような渡航者が疑われやすいのか、移民局での尋問の様子などについて聞いた。

2020年末頃から増加

ーー売春目的を疑われる入国拒否が増えている?

アメリカでの不法就労を疑われて入国拒否されたという相談は、コロナ禍から増えてきています。

特に「売春を疑われて入国を拒否された」という相談は、2019年までは年間3~4件だったのが、2020年末頃から非常に増えて来ました。

佐藤智代行政書士
佐藤智代行政書士
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ーー“出稼ぎ売春”が増えた背景は?

売春目的で渡航する理由は、報酬が日本と比べて圧倒的に高く、月300万、800万という形で稼げるということです。

尋問を受けた人の中には、移民局がその人が過去にどういう人とコネクションがあり、どういった活動をしていたかを把握していたケースがあります。

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入国の際に売春あっせん者とコンタクトを取っていた人は、密室での尋問の際、その点を厳しく聞かれています。

移民局はかなり警戒

こうした中、純粋に観光目的で渡航した女性も、あらぬ疑いを掛けられて入国を拒否されるケースが出ているという。

ーー観光目的での入国も困難になってきている?

コロナ前も、エスコートや売春など性サービスを提供するために渡米したり、留学ビザで滞在しながらそういった活動をしていた人がいたのは事実です。

そうした中、コロナ禍で入国者が非常に少ない時期に、女性1人で渡米し、「どこに行き」、「誰に会い」、「どこに泊まるのか」を入管に説明できない女性が増えました。

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疑いを持たれ別室で厳しい審査を受ける中、実は“性サービスを提供する目的”での入国ということが発覚し、同様のケースが他にも複数あると判断され、そこから女性に対する入国審査が厳しくなった印象です。

尋問中にスーツケースを開けてみたら大量の下着が入っていたり、多数の男性とのやりとり記録が残されていて入国拒否となった女性は多いです。

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ーー入管は警戒している?

移民局はかなり警戒しています。

1人で入国する女性以外にも、婚約者や彼氏、女友達と一緒でも、かつて売春目的で入国拒否を受けたり、アメリカ国内での売春活動が発覚して強制送還された人とのコネクションがある場合は、入国を拒否されます。

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売春関係者とのコネクションがある人たちは非常に厳しい審査を求められます。
一次審査の時にすでにフラグが立っているので、すぐに別室に連れて行かれる流れになります。

売春は犯罪ですから、活動への関与が疑われただけで入国拒否の決定を受けます。

1週間に6件の入国拒否相談も

渡航条件が大幅に緩和された2023年5月末頃から急増したという入国拒否。

佐藤さんはSNSなどを通じて警鐘を鳴らし続けてきたが、“パパ活”などで安易に渡航する若者の多さに悲しみを感じると話す。

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ーー怪しい人にはどういう質問をする?

「会う人のフルネームを言いなさい」とか、「誰がホテル代を支払うのか」「その人との関係性」などを聞かれます。

これらに答えられないとスマホの中身を見られたり、スーツケースの中を確認されたり、唾液のチェックまで求められます。

疑われやすい職業は、やはりキャバクラで勤務している方です。
お客さんと一緒に渡航していれば、売春目的で来たと判断されます。

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ーーチェックが厳しいエリアは?

私はアメリカの専門なので他の国はわかりませんが、アメリカ国内であれば、ハワイやニューヨーク、ラスベガス、ロサンゼルス、シアトルで入国拒否を受けたという相談が多くあります。

増え始めた2020年末からは1か月に8件ほどで、夏やゴールデンウィーク、冬休みなど渡航者が増える時期はそれに伴って増加しました。

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渡航にワクチン証明が必要なくなった2023年5月末頃からは、1週間に6件もの相談が寄せられる時期もありました。

ただ、9月以降は「どうしたら入国拒否を受けないようになりますか?」といった問い合わせの方が多くなり、それからは入国拒否を受けたという相談は減ってきています。

12月は相談は無く、2024年1月も1件だけです。

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ーー1週間に6件もの相談が来た時はどう思った?

SNSなどを通じて警鐘を鳴らし続けていたので、なかなか浸透しないなという思いはありました。

“パパ活”や“ギャラ飲み”などで報酬を得るために、安易に一緒に渡航する若い人たちが多くて非常に残念です。

滞在先、旅行日程の説明準備を

こうした中、入管手続き中に疑いを持たれないためには、「旅行日程」や「宿泊先」など滞在中のプランをしっかり自分で説明できるよう準備する必要があると佐藤さんは話す。

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ーー無実なのに疑われて入国拒否された場合は?

合法的な目的で渡航したのに疑われた人は、観光ビザ、商用ビザを在日アメリカ大使館で取り直せば入国できます。

しかし、売春目的での入国が確定した人たちは、「移民国籍法」の売春に関わる犯罪の条文に従い、10年間は入国禁止となります。

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ーー疑われないための対策は?

女性が1人で渡航する場合は、派手な格好で行かない、高価なブランドものを身につけない、航空券やホテルは自分のクレジットカードで支払う。

また、観光目的での滞在であることがしっかりと示せるようなスケジュール表を準備したり、誰かに会うのならばその人の名前と関係性を詳しく話せるようにしておくことが大事です。