野生動物が人里で農作物を荒らす被害が全国で相次いでいるが、広島県廿日市市では20年にわたって住宅街で住民を不安にさせていたサルの群れの一斉捕獲に成功した。その裏にはサルの行動範囲を把握したうえでの、ち密な捕獲計画があった。

一度捕まえたサルにGPSをつけ放し、群れの行動範囲を把握

五十川裕明記者:
近くに小学校もある住宅街ですが、コンテナ状のワナが設置してあります。この周辺はサルの出没エリアになっていました

サル捕獲のワナ
サル捕獲のワナ
この記事の画像(15枚)

12月、廿日市市の住宅街で8匹のニホンザルがワナにかかった。

よく見ると、そのうちの1匹には首輪が…。これ実はGPS=位置情報を電波発信する装置。

1匹のサルに首輪が…
1匹のサルに首輪が…

今回の一斉捕獲作戦の始まりは2023年2月にさかのぼる。

2023年2月
2023年2月

ワナにかかった1匹のサルを麻酔薬で眠らせ、GPS発信機のついた首輪を取り付けたあと放し、群れに返した。

この位置情報が、群れの一斉捕獲に大きく貢献した。

2023年2月 眠らせたサルの首にGPS装着
2023年2月 眠らせたサルの首にGPS装着

宮園地区自治会連合会 鶴谷裕一会長:
皆さんが不安の毎日だったので、解消できたのは町内会長としては嬉しい限り。干しガキを食べられたり、家庭菜園の大根を荒らされたりとかの被害があった

10か月にわたり行動範囲を観察、餌場を作り、1か月後に捕獲

廿日市市内では20年ほど前からサルが住宅地に出没するようになり、2023年度から目撃件数が急増。

人を恐れないサルに住民らは不安な生活を強いられていた。

サルの首輪のGPSから2時間おきに発信される位置情報を読み解いた結果、廿日市市の住宅街の直径2キロから3キロの広範囲を行ったり来たりする行動パターンがわかってきた。そこで2023年11月中旬に出没範囲の中間地点に餌を入れた捕獲ワナを設置。

それも、いきなり捕まえるのではなく、1か月ほど様子をみて「安心な餌場」として学習させたところで、群れごと誘い込み、監視カメラを使って柵の扉を遠隔で下ろした。

自治会 鶴谷裕一会長:
他の地区でも団地でサルの被害とかがあると思うんです。GPSを使った行動調査を活用してなんとか対策してもらえたら

12月26日に8匹が捕まってちょうど1か月。廿日市市は周辺にサルの群れが複数いるとみていたが、今回の捕獲以降、目撃情報は一件も報告されていない。

群れで行動する野生動物への対策として、位置情報の活用が有効なことが改めて証明された。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
テレビ新広島

広島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。