「黒いギャング」と呼ばれる鳥が、広島・廿日市市の宮島に居座るようになり、貴重な原生林に被害を与えている。県や市の職員などが対策にあたるが、数千羽にのぼる大群の撃退法に頭を悩ませている。
“黒い厄介な鳥”の正体は…
日本三景の一つ、宮島。その原生林の一部が雪の積もったように白く変色している。
この記事の画像(12枚)五十川裕明 記者:
木が少し白くなっている部分に、黒い物体がたくさんいるのが見えます。わ!飛んだ、飛んだ!黒い大群が海に向かって一気に飛んでいきました
宮島から一斉に飛び立った鳥の正体は「カワウ」。羽を休めるだけならいいのだが、手つかずの自然にダメージを与える厄介者になっている。
宮島漁業共同組合・丸本孝雄 組合長:
カワウのフンで木も根も全部枯れていく
雄大な自然をむしばむのはカワウのフン尿に含まれる酸性の物質だ。
五十川裕明 記者:
カワウの寝床になっている部分が白くなっています。ものが腐ったような独特なにおいもします。木の幹の部分まで白くなっています。触ってみると、白いパウダー状の粉のようなものが手につきます。それが緑の木々に上からかぶさっている状態です
風になびく「テープ」で撃退なるか?
ここ数年、宮島は県内最大の「カワウの寝床」と化している。冬場に餌となる魚が豊富な瀬戸内海へ主に関西方面から飛来し、居座るようになった。推定の個体数は数千羽単位にのぼる。
1月18日、広島県と廿日市市の職員などが宮島沿岸に上陸し、対策をとった。
廿日市市 農林水産課・鹿野陽介さん:
釣りざおでテープを付けた重りを投げて…。バタバタと音が鳴りますので、カワウが嫌がって逃げていくと
使うのは、環境に配慮した「テープ」。木々に張り巡らせたテープが風になびくことで警戒心の強いカワウを視覚と聴覚で追い払う作戦だ。
広島県 農林水産局 水産課・山地幹成さん:
カワウに見える表側にテープを張ろうとしているんですけど
島の北東側の沿岸約300メートルにテープを張った。
「被害の大きさが知られていない」
廿日市市 農林水産課・鹿野陽介さん:
まだ被害の大きさを知らない人が多いのかなと思います。植林などが難しいので、今ある木を大事にしないといけない
宮島は島全体が特別史跡と特別名勝に指定されるなど自然保護に法的な縛りがあり、木が枯れても自生する植物の回復を待つしかない。2023年10月、初めて対策に乗り出したが、それまで寝床だった場所は一気に朽ち果て、山肌の土があらわになってしまった。
一時的に“テープ張り”の効果でカワウが島によりつかなくなったものの、2カ月足らずで目と鼻の先を新たな寝床とし、根本的な解決にはつながっていない。
宮島漁業共同組合・丸本孝雄 組合長:
放置して厳島神社の方へ進んでいくと大変なことになるので、今、食い止めておかないと
世界遺産・厳島神社を有する宮島の自然と景観を守るためにも対策が急がれる。
(テレビ新広島)