通常国会が開会した。岸田政権にとっては、政治と金問題という難題と、能登半島地震の復興が喫緊の課題となる。加えて、政権発足以来の最重要課題が「賃上げ」だ。1月から働く人の賃上げ交渉、春闘が始まるなか、世論調査で、岸田首相が「今年の夏頃に」と掲げる「物価高を上回る賃上げ」の実現への期待を聞いたところ、「期待する」41.5%、「期待しない」が57.3%となった。

約6割が「期待しない」結果となり、岸田首相にとっては厳しい結果となった。これを支持政党別に見てみると、自民支持層からは「期待する」55.2%、「期待しない」44.5%、と結果は反転して、6割近くが「期待」していることが明らかになったが、世論調査で有権者の半数近くを占め、最も多い無党派層は期待しないこと「期待する」35.0%、「期待しない」63.2%、足下の自民支持層こそ期待しているが、全体的には期待は広がっていないことがわかる。
FNN世論調査では、岸田首相の「物価高を上回る賃上げ」への期待について、2023年11月、経済対策を公表した当時にも質問を行っている。経済対策では、非課税世帯に1世帯当たり7万円の追加支給や、1人あたり4万円の定額減税を行うことなどを表明したが、当時「物価高を上回る賃上げ」については「期待する」27.0%、「期待しない」71.0%と期待しない声は、今回よりも10ポイント以上高かった。
同じく自民党支持層でも、「期待する」50.3%、「期待しない」48.4%、無党派層では「期待する」17.6%、「期待しない」80.2%で、各支持層ごとに期待の度合いは違うものの、去年の11月に比べて、賃上げが実現することへの期待は高まっていることが今回の調査で明らかになった。

【岸田首相の掲げる「物価上昇を上回る賃上げ」への期待】
(今回)
期待する 期待しない
全体 41.5% 57.3%
自民支持層 54.4% 44.5%
無党派層 35.0% 63.2%
(2023年11月)
期待する 期待しない
全体 27.0% 71.0%
自民支持層 50.3% 48.4%
無党派層 17.6% 80.2%
“景気・賃上げ対策”に求められる難しい判断
この2カ月、賃上げに関連して岸田首相は、経団連の十倉会長、連合の芳野会長と「政労使会談」を2023年11月、2024年1月22日と2度にわたり行った。1月末に始まった春闘直前の「政労使会議」で岸田首相は「物価高を重視し、昨年を上回る賃上げ」を要請した。財界代表の経団連十倉会長は、会談後「経済も賃金も物価も安定的に上昇して、好循環にまわす」と述べ、正念場としつつ「賃金上昇」にも言及する会見を行った。
また、これに先立つ1月19日には、医療・介護・障害福祉関連団体のトップに対し首相官邸で「賃上げの実現」を念押しした。さらに、この2カ月の動きとして。年末から今月にかけて、経済対策のうち住民税非課税世帯への1世帯当たり7万円の給付が全国の自治体で始まった。こうしたことも期待が“じわり”と高まっている要因と考えられる。さらに、岸田首相は、6月には1人あたり所得税を4万円引き下げも予定している。

一方で、ガソリン価格の抑制の補助金は今年4月までの予定で、今後の見通しは決まっていない。兆円単位の財源投入には慎重論も出ていて、補助金延長を世論がどう考えるか、打ち切りとなりガソリン価格が値上がりした場合、賃上げ実感はどうなるのか、岸田政権の景気・賃上げ対策は、今後も難しい判断が求められる。
【執筆:フジテレビ政治部 西垣壮一郎】