ペットと暮らす人にとって、災害時の避難は大きな問題となる。能登半島地震でも、一緒に避難するケースが多く見られるが、避難所へ行かない選択をするなど、ペット同伴の避難には課題もある。また環境が大きく変わる災害時、ペットと安全に避難するためには日頃からの取り組みが大切だという。

一緒に車中泊をする人も

能登半島地震で甚大な被害が出た石川県輪島市では、駐車場で「車中泊」する人も少なくない。中にはペットと一緒という被災者も。話を聞くと「避難所に入れないこともないけど、犬も人が多いところだとストレスがあるので家族でいる」という声や「家もだめになって、仮設住宅ができるまで車生活になるのでは」という声が聞かれた。
避難所にペットを連れて行けず、自宅に留まったり車中泊を続けたりする人たちを支援しようと、石川県獣医師会ではペットを1カ月間無料で預かる取り組みを始めている。

避難所にはいかず車中避難を選択する人も
避難所にはいかず車中避難を選択する人も
この記事の画像(10枚)

東日本大震災のケース

福島県三春町の県動物愛護センターは、2011年の東日本大震災の時、警戒区域に取り残された犬や猫が保護されていた場所だ。野口みき所長は「発災直後の混乱した状況ですから、人命や生活が第一。私たち行政が、ペットフードの配布をしたり、獣医師会の先生と避難所まわりしても、なかなか受け入れていただける状況ではなかったのが現状だった」と語る。

警戒区域に取り残されたイヌやネコを保護
警戒区域に取り残されたイヌやネコを保護

野口さんによると「動物が苦手」「アレルギーがある」など様々な理由から、ペット同伴の避難が全ての人に受け入れられるのは難しいという。

ペット同伴の避難が受け入れられるのは難しい
ペット同伴の避難が受け入れられるのは難しい

クレートトレーニングで備える

そこで重要になるのが日頃の備え。今回はメスの雑種犬・チョコに協力してもらい、飼い主がやるべきことを教えてもらった。
緊急時にペットの小屋代わりになるクレート。避難する場合を想定し、普段から慣れさせておくことが大切。

普段からクレートに慣れさせることが大切
普段からクレートに慣れさせることが大切

このトレーニングのポイントを野口さんは「おやつをクレートの中に投げ入れて、入ったら閉めない。閉めると“騙された”“閉じ込められた”と思ってしまうので、入ったらよく褒めてあげる。そうすれば犬は、ここに入ればおやつは食べられる、大好きな飼い主には褒められる、ここに入るってすごく良いことなのだという意識づけをする」と話す。

よく褒めて 入ることはいい事という意識づけ
よく褒めて 入ることはいい事という意識づけ

そして一番やってはいけないのは、いたずらをした時などに閉じ込めてしまうこと。お仕置きされる嫌な場所と認識して、入らなくなってしまう。野口さんは「犬を押し込む時間よりも、ハウス!という命令で、すぐ入って扉を閉めて持っていける方が、絶対避難もスムーズに出来る。その練習はやはり必要」だという。

お仕置きの嫌な場所と思わせない
お仕置きの嫌な場所と思わせない

ペット用の防災グッズを備える

人間と同様に、ペットのエサや水、トイレグッズなどは災害用に備蓄し、できれば一週間分を用意すること。事前に、量や重さを把握しておくことが重要。ペット用に加え、自分用の防災グッズを背負い、ペットを連れて歩くことになる。犬だと引っ張られる場合もあるので、体への負担がかかる。災害時は道路が被災していることもあるので、日頃からの心構えと備えが大切になる。

約1週間分 ペット用の防災袋の準備を
約1週間分 ペット用の防災袋の準備を

名札やマイクロチップの装着も

はぐれてしまった時のために、首輪に名札をつけたりマイクロチップを装着したりして飼い主の情報が分かるようにすることも、大切なペットを守ることに繋がる。
野口さんは「ペットにとっては飼い主が唯一頼れるものなので、自分のペットは飼い主がしっかり守るって心構えが必要」だと話した。

はぐれても分かるよう名札やマイクロチップを
はぐれても分かるよう名札やマイクロチップを

福島県の同伴避難所はわずか1カ所

福島市では2021年9月から、災害時にペットを避難所内に受け入れるペット同伴避難所を開設した。最大24世帯の飼い主とペットが、避難所内のテントで過ごすことができるが、福島県内では福島市の勤労青少年ホーム1カ所に留まる。

福島県のペット同伴避難所は1カ所に留まる
福島県のペット同伴避難所は1カ所に留まる

ペットを飼っている人にとっては、災害で不安に思う時こそ一緒にいたいものだと思う。その受け皿が、多いに越したことはないのではないか。

(福島テレビ)

福島テレビ
福島テレビ

福島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。