能登半島地震では地震発生後まもなく新潟県内の沿岸部に「津波警報」が発表された。この津波警報を受けて自治体の対応が分かれたのが住民への「避難指示」だ。避難指示を出さなかった自治体にその理由を取材した。

新潟・上越市で最大2mの津波か

元日に発生した能登半島地震。

新潟県内でも震度6弱を観測する中、地震の発生から約20分後…新潟県上越市関川に設置された国土交通省の河川カメラには津波が川を遡上する様子が映されていた。

上越市関川(提供:国交省)
上越市関川(提供:国交省)
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新潟県内では地震発生後、津波警報が発表され、柏崎市鯨波で最大40cm、新潟市と佐渡市鷲崎で最大30cmを観測。

柏崎市(視聴者撮影)
柏崎市(視聴者撮影)

また、地域によっては2mほどの高さにまで津波が達したとする専門家の分析もある。

8分で津波到達…糸魚川市は避難指示出ず

人的被害はなかったものの、今回の津波警報で自治体の対応が分かれたのが、住民への「避難指示」だ。

専門家の分析で、地震発生からわずか8分後には津波が到達したとされる糸魚川市。

糸魚川市消防本部の竹田健一消防長は当時の対応について、「今回は避難指示ではなく、津波警報により皆さんがご自身で身の安全を確保していただくと市長から判断いただき、避難指示を出さない対応となった。避難指示を発令する際には、避難する範囲などを決めてからということなので時間がかかる。あと、市民の皆さんが混乱する場合もあるので」と話した。

糸魚川市消防本部 竹田健一 消防長
糸魚川市消防本部 竹田健一 消防長

これまで毎年1回、津波などの災害を想定した避難訓練を実施してきたことから、避難は住民の判断に任せるとして避難指示を出さなかったという。

糸魚川市 米田徹 市長
糸魚川市 米田徹 市長

米田徹市長も「指示待ちをしていることによって、生命の危険になることが多いのではと思っている。常日頃から避難訓練の場合においては、そういうようなお願いをさせていただいている。色々な自然災害が発生する部分があるので、一つの基準だけの判断をするというのは難しいところがある」と避難指示を出す基準やタイミングの難しさについて語った。

「訓練は大きい」自主的に避難場所へ

日本海が目の前に見える糸魚川市大町地区では、この避難訓練の経験が実を結び、住民たちは避難指示を待つことなく、すぐに一時避難場所の糸魚川駅へと避難したという。

糸魚川市
糸魚川市

実際に避難した市民は「いつも避難訓練しているから、新幹線のホームに行った。備えは大事。お互いに分かるし、あそこへ行けばいいんだという感じで」「訓練しているということはすごく大きい。何も考えないで駅に行った。そうしたら、みんな近所の方も行っていた」と口々に避難訓練の重要性を語った。

糸魚川駅
糸魚川駅

避難指示の基準は?対応分かれた自治体

県内には12の市町村が沿岸部にあり、津波警報の発表によって避難指示を出したのは、新潟市(南区・秋葉区を除く)・上越市・新発田市・柏崎市・佐渡市・出雲崎町の6市町。

避難指示を出さなかったのは長岡市・糸魚川市・村上市・胎内市・聖籠町・粟島浦村の6市町村となっていた。

避難指示を出さなかった6市町村のうち、長岡市と村上市では防災無線やラジオ・屋外拡声器を使って高台への避難を呼びかけたものの、避難指示を出す基準は設けていないという。

また、糸魚川市は津波情報が出たら避難指示を出すと基準を設けていたが、今回は避難指示よりも「ただちに避難を」という言葉を重視し、避難指示を出さなかったと説明している。

数分で津波到達… すぐ高台に避難を

地震発生時には、命を守る行動が呼びかけられる中、市民からは、「津波は心配ないから避難しなくていいよとか、とにかく高台へ逃げなさいとかマイクで放送してもらったほうがいいように思った」と行政の指示を望む声も聞かれた。

能登半島地震によって、日本海側は地震発生からわずか数分で津波が到達することが現実のものとして示された。

沿岸部にいる人は揺れたらすぐに高台に避難することを頭に入れて行動することが命を守るために何より重要だ。

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
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