新潟大学を含む国際研究チームは、ブラックホールを捉えた新たな画像の撮影に成功したと発表した。宇宙の謎に迫るこの研究に新潟県内の若手女性研究員が大きく貢献していた。

ブラックホール捉えた最新画像

宇宙に浮かび上がるオレンジ色のリング。その中心の黒い部分がブラックホールとみられている。

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この画像は、新潟大学を含む国際研究チームが2018年に撮影したもので、地球から5500万光年離れた銀河・M87のブラックホールを捉えた最新の画像だ。

その撮影で中心的な役割を果たしたのが、新潟大学自然科学研究科の小山翔子助教。

新潟大学 自然科学研究科 小山翔子 助教
新潟大学 自然科学研究科 小山翔子 助教

小山助教は画像について「ブラックホールの最も近くの様子が目で見える画像として得ることができた」と笑顔で話した。

“目に見えない”ブラックホールを撮影

とてつもない重力で物質はもちろん、光まで飲み込んでしまうと考えられている未知の天体、ブラックホール。

小山助教によると、オレンジのリングはブラックホールに引き寄せられたガスなどが発する光で、その中心に見られる黒い影がブラックホールの本体だという。

実はブラックホールの存在は学術的にはいまだ確認されておらず、世界中の研究者がその姿を追っている真っ最中。

その中で小山助教は、人類で初めてブラックホール撮影に成功した、この分野の第一人者なのだ。

 とはいえ、地球から5500万光年離れたブラックホールを捉えるのは容易なことではない。

小山教授によると、ブラックホール本体は全く光を発することのない、その名の通り真っ黒の天体で、どうやっても絶対に見ることができないものだという。

「目には見えないブラックホールを撮る」、小山助教がこの難題に挑戦したのが2017年のこと。

小山助教たちは日本をはじめ、世界中の電波望遠鏡8台をつなぐ、イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)と呼ばれる方法でM87銀河を撮影し、ブラックホールを取り囲むオレンジのリングを捉えることに成功した。

EHTの中心的な役割を果たし、人類初の快挙を成し遂げた小山助教は「それまではただの点でしか見えなかったものが真ん中に黒い影が見えてきた時は本当に興奮を覚えた」とこの瞬間の喜びを語る。

研究前進「存在がより確かなものに」

今回発表された画像は2018年に撮影されたもので、今度はグリーンランドを含めた世界9台の電波望遠鏡をつないで撮影にチャレンジ。

電波望遠鏡
電波望遠鏡

人間の視力の300万倍に上るという撮影能力を駆使し、2017年以上に精細な画像の撮影に成功した。

小山助教は、「2017年と2018年の画像を比較することでブラックホールの動きを捉えることに成功し、研究は大きく前進した」と語る。

一般相対性理論では、すでにブラックホールについていくつかの予想が発表されている。

今回の画像からは、そのうち「1年程度の期間ではブラックホールについての大きさは変化しない」「ブラックホールの周囲の物質が運動することにより、オレンジ色のリングの様子は変化する」などの予想と一致する結果が観察されていて、小山助教は「今回の観測でブラックホールの存在がより確かなものになった。また、ブラックホールの周囲の流れが乱れているというのも直接確認ができた。天文学的に物理学的に重要な成果だと考えている」と胸を張る。

若い人たちへ「もっと宇宙に興味を」

最先端の宇宙研究をリードする小山助教は3年前に新潟大学に赴任。

「最先端の宇宙研究を進める仲間もいる。毎日楽しく研究している」と話すなど、現在の環境を気に入っているという。

大発見の喜びを知る小山助教は「若い人たちにもっと宇宙に興味を持ってほしい。一緒に研究したい」と熱く語り、学生たちの挑戦を歓迎している。

今後の夢を尋ねると「さらに精密にブラックホールを撮影するため、宇宙に望遠鏡を打ち上げたい」と大きな夢を語った。

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
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