物価高やエネルギー価格の高騰が続く中、いかにして事業を維持していくか、思い悩む日々が続いている事業所は少なからずあるだろう。秋田・湯沢市のクリーニング店は、衣類を洗うにとどまらず、新たなアイデアで物価高騰に立ち向かっている。
苦境続く中、自慢の技術で新事業を模索
湯沢市に本社を置き、県内に4店舗を構えるクリーニング店「仕上屋」。2024年で創業76年目を迎える。
この記事の画像(13枚)確かな技術が評判を呼び、各地から洗濯物が集まるが、高橋友広社長は「2023年は燃料価格の高騰と戦いながらの営業で、苦悩の日々だった」と振り返る。
仕上屋・高橋友広社長:
まずドライクリーニングの洗浄をするための、普通の洗濯でいえば水の代わりになる液体、これが5年前の倍。ハンガーも上がり続けている。あとビニール。全部石油が原料なので、当然だが…
店で使うドライクリーニングの洗剤には石油が欠かせない。しかし、原油価格の高騰で仕入れ値が軒並み上がり、経営を圧迫した。
そんな中、仕上屋では自慢の技術を生かし、新たな事業を模索してきた。
例えば、2022年の春から始めた自動車学校でバイク教習を担当する教官のブーツを修理するサービス。
バイク教習で使うブーツは靴底の減りが早く、毎年のように買い替える必要がある。仕上屋では、新品の半分ほどの費用で修理でき、度重なる物価上昇でコスト削減を迫られる自動車学校から依頼が相次いでいる。
“汚れの原因”がきっかけとなった事業も
アイデアマンの高橋社長が次に目を付けたのが、サプリメントの開発だ。
クリーニングと健康サプリメント、一見結びつかないような気がするが、高橋社長は「人間の体から出た分泌物、血液など、衣類の汚れが落ちないものがある。汚れの持ち主の健康状態が原因だという確率が高いことが分かり、もしその健康状態を改善する方法があるとすれば何なのか、と気付いたのがサプリメント」と話す。
サプリメントは、秋田県沖の海水から抽出したミネラルを加工して作られる。体内では作れないミネラルを効率的に吸収できるという。
サプリメントの製造技術を持つ茨城県の企業の協力を受けて試作している段階で、今後モニター試験で効果を探り、2024年中の商品化を目指す。
地域資源も活用…源泉から入浴液も開発
さらに、地域資源の活用にも目を付ける。
900年の歴史を持ち、「湯沢」の地名の由来になったともいわれる「湯の原温泉」。四季折々の食材を生かした料理も人気で、古くから地域住民の憩いの場として親しまれてきた。
しかし2021年1月、雪の重みで浴室の屋根が倒壊した。修理には莫大(ばくだい)な金額がかかることから、復旧のめどは立っておらず、入浴客を受け入れられない状況が続いている。
仕上屋・高橋友広社長:
ダメージを受けたことが、ずっと引っかかっていた。源泉がもし生きているのであればミネラルが取れるので、そこから商品を作れないかと思った
そこで高橋社長は、湯の原温泉の源泉を原料に入浴液を開発しようと思い立った。
年内の商品化に向け、秋田大学医学部付属病院の協力を得ながら効果を検証するなど、特許の出願に向けた準備を進めている。
入浴液のモニター試験では、乾燥肌やかゆみが改善されたという声が聞かれたという。入浴液とサプリメントの開発は、湯沢市の補助事業にも認定され、今後の開発の行方に注目が集まる。
仕上屋・高橋友広社長:
「厳しい」と言っていても、何も変わらないことは事実。衣類だけのクリーニング業界ではなく、いろいろな面できれいにしていくと考えた方が幅が広がる、先が見えると思って取り組んでいる
終わりの見えない原油価格の高騰で、クリーニング業界にとっての苦境は続くが、仕上屋は柔軟な発想で立ち向かっていく。
(秋田テレビ)