台湾の総統選挙後、中国の王毅外相は「世界に中国はひとつしかない」と発言し、台湾は中国の一部であることを強調した。当選した民進党の頼清徳氏はアメリカとの関係強化を示唆していて、中国は台湾の動きを強くけん制している。

「中国はひとつ」中国外相が強調

13日に行われた台湾の総統選挙。中国の王毅政治局委員兼外相は、「世界に中国はひとつしかない」という中国の立場を強調した。

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王毅外相は「選挙結果がどうであれ、世界に中国はひとつしかなく、台湾は中国の一部であるという基本的事実を変えられない」と訪問先のエジブトで述べ、「台湾独立は過去にも未来にも、決してなしえない」と中国政府の立場を強調した。

13日の台湾総統選では、中国と距離を置く民進党の頼清徳氏が当選したが、今後の台湾の動きを強くけん制した形だ。

アメリカ政府元高官の台湾来訪を報じる台湾の朝刊1面
アメリカ政府元高官の台湾来訪を報じる台湾の朝刊1面

15日、台湾の各新聞の朝刊はどれも1面で、アメリカ政府の元高官が早くも台湾を訪れたと報じており、台湾の人たちの関心の高さがうかがえる。

アメリカのスタインバーグ元国務副長官とハドリー元大統領補佐官は15日朝、さっそく民進党本部を訪れ、頼清徳氏に直接、総統選挙当選への祝福の言葉を伝えた。

頼氏は「アメリカはずっと台湾を応援し続けて欲しい。台湾とアメリカは様々な分野で協力を深めたい」と、アメリカとの関係強化を進める方針を改めて示した。

中国は台湾のことは「内政問題」としているため、アメリカ側が「プライベート訪問」という形をとっているにせよ、中国政府が反発することは必至だ。

選挙結果は“抜群のバランス感覚”

親米派の頼清徳氏が当選したことで、中国はどう動くのか。いわゆる台湾有事のリスクは高まるのだろうか。

2023年末に習近平氏は「祖国統一は歴史の必然」と、台湾統一へのこだわりを改めて強調しているが、短期的にアメリカと事を構えたくない中国が、この選挙結果によって動き始めるということは考えにくいと思われる。

ただし、台湾メディアは「3月に中国で開催される、日本の国会にあたる全国人民代表大会の会議が終わってから、5月20日の総統就任までの期間は特に、中国による威圧行為が行われる可能性があるのでは」などの見立てを示しているところもある。

そして、15日には台湾が太平洋のナウル共和国と断交したことを明らかにした。後ろに中国の影があることは明白で、中国による圧力が早くも始まったといえる。

中国はすでに動き始めているようで、緊張感が非常に高まっていると思われるが、橋下徹氏は次のように指摘している。

「統一については中国が言うことではなく、台湾の皆さんが決めることであり、ましてや中国の武力の圧力で統一を決めるなんていうのは絶対あってはならない。台湾の防衛力の強化をしっかり行うこと。ただし、だからといって台湾側も『独立だ独立だ』と言うのではなく、防衛力を強化しながら現状維持する、ここをしっかりおさえてもらいたい」

「今回の選挙結果には、台湾市民の抜群のバランス感覚が現れたといえる。頼清徳氏が当選したが、民進党は過半数を取れていない。一方で、中国寄りの国民党も過半数を取れていない。民衆党という第三極がバランサー役になっている。そのため、独立でもなく、中国にべったりでもなく、うまくバランスを取って現状を維持するというのが、今回の選挙における台湾市民の意思だと思われる」
(「イット!」 1月15日放送より)

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