富山県で観測史上最大となる5強を観測した能登半島地震。初めて津波警報も出され、元日の富山県は混乱した。避難しようと車による渋滞が発生する中、今回の津波は、県が津波シミュレーションで想定した断層とは異なる状況で発生した可能性もあるという。

「初の津波警報 そのとき富山県は」

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細い山道に続く、車のテールライト。

富山県の東西を分ける呉羽山で、地震発生後の元日夕方に撮影されたとみられる写真だ。

SNS上には、「県立図書館きた。呉羽山渋滞」「呉羽山ふもと旧8号側車で渋滞中。もう山の上に停めれなさそう」など、当時の混乱ぶりが分かる声が飛び交った。

1日午後4時10分ごろ、観測史上初めて震度5強の揺れに見舞われた富山県。

すぐさま津波警報が発表され、富山市で午後4時35分に過去最大となる80センチの津波を観測した。地震発生後、各地で起きたのが「避難する車による渋滞」だ。

富山市の国道8号線近くにあるガソリンスタンドに設置された防犯カメラの映像では、最大80センチの津波を観測した午後4時30分すぎ、呉羽山方面に向かう道路が渋滞となっていた。

国道8号線近くのガスリンスタンド防犯カメラ(田尻交差点付近)
国道8号線近くのガスリンスタンド防犯カメラ(田尻交差点付近)

呉羽山にある宿泊施設の従業員によると、施設の駐車場も、避難する車でみるみるうちに満車になったという。

「地震発生後3分で到達した“津波”」

震源から80キロ以上離れている富山に津波が到達するまで、本来20分ほどかかる計算だが、今回の地震では、津波の第1波が、地震発生のわずか3分後、午後4時13分に沿岸に到着したことが分かっている。

現在、内閣府の指針では津波発生時、避難の方法は原則「徒歩」とされている。

しかし、沿岸から平野が広がる富山では、郊外に高いビルが少なく、少しでも早く避難したいと考え、多くの人が車を使って、高台に向かったとみられる。

東日本大震災をはじめ国内外の津波の被害について実地調査をしている、中央大学の有川太郎教授は、富山湾で「海底地すべり」が発生し、局地的に津波が早く押し寄せた可能性があると指摘する。

中央大学 海岸・港湾研究室 有川太郎教授:
「これまでの計測やシミュレーションから、沖合の断層による津波のメカニズムはおおよそ明らかになっている。それを考えると、(今回の震源から)富山までは20分くらいかかる。富山湾は急に深くなる崖のような海底地形になっていて、海底で地滑りが起こると比較的大きな津波が発生する。『海底地すべり』で津波が生じた可能性がある。」

県が津波シミュレーションで想定した断層とは異なる状況で発生した可能性がある、“津波”。

東日本大震災では全体の57%が車で避難したことから、国もやむを得ない場合は、自動車による避難を認めている一方、東日本大震災では車で避難した人の多くが渋滞に巻き込まれ、巨大津波によって死者が増えたケースもあることから、全国の自治体では、地域防災計画に「高齢者や障害者が長い距離を避難する場合」(北海道長万部町)や「近くに避難場所や高台等がない」(宮城県気仙沼市)などの条件を設けている。

「具体的な対策を早急に検討を」

県内の自治体では、富山市や氷見市の地域防災計画に、車での避難の表記はあるものの、両市は「避難者が自動車で安全かつ確実に避難できる方策を、警察と調整の上、あらかじめ検討」という表現にとどまっている。

射水市では「津波避難計画」の中で、高齢者や障害者などが長い距離を避難する場合、避難者が自力で避難できない場合及び遠隔地の避難所へ早急に避難させることが必要と認められる場合は、車での避難を認めている。

気象庁は、1カ月程度は強い地震に注意を呼び掛けている。

再び津波が発生しないとは限らない今、避難方法をどうするのか、より具体的な対策を早急に検討する必要がある。

(富山テレビ)

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