能登半島地震の影響で、約85kmにわたり海岸線が隆起していることがわかった。この隆起について専門家は、津波の浸水に影響を与えていたと指摘する。
変わり果てた漁港…能登半島85kmで海岸隆起
最大震度7を観測した能登半島地震の発生から9日。地震発生直後に大規模な火災が発生するなど、甚大な被害が出た輪島市内では、自衛隊による土砂崩れの撤去作業が行われていた。

一方、今回の地震により、海岸ではある異変が起きていた。大規模な地盤の変化だ。
10日、イット!の木村拓也キャスターが向かったのは、石川・輪島市の鹿磯漁港。海岸沿いを歩くと、目に飛び込んできたのは変わり果てた漁港の姿だった。

木村キャスター:
もともとは水があったところですが、海底が隆起して、船も岩に乗り上げた状態になっています。水がまったくなく、岩がむき出しになっていますので、港ですけど、これだと漁は一切できないように見えます。
地震によって地盤が変化し、海に沈んでいた沿岸部の改定が盛り上がる「隆起」が起きていたのだ。東京大学地震研究所の調査によると、鹿磯漁港では、推定約3.9mの隆起が確認されたという。

木村キャスター:
このあたりは広い砂浜です。奥に波打ち際が見えますが、よく見ると、波打ち際のかなり手前に波消しブロックがあるんです。もともとは、おそらくそこまで海水があったというふうに思われます。つまり、砂浜が広がったということでしょうか。

上空からみた鹿磯漁港の地震前と地震後を比べると、海だった部分が陸地へと変わっているのが確認できる。その範囲は、約250m広がったとみられている。木村キャスターが訪れた場所も、以前の様子と比べると隆起しているのが一目でわかる。
国土地理院の分析によると、能登半島を中心に、いたるところで発生した隆起の長さは海岸線85kmにわたるという。

珠洲市にある漁港でも、地震発生以降を見ると港付近が黒ずんでいるのがわかる。これらも海底が隆起した場所だという。
地元の人も、これほどの隆起を目にするのは初めてだという。
地元住民(70代):
あそこまで海水があったんです。地震が来る前は。こういうの初めてですね。これだけ隆起したのを初めて見た。ちょっと考えられませんね。小さい船を下ろして、あそこから(海に)出ていたんですけど、今やそれもできない。
隆起で津波の影響が軽減
専門家は、隆起したことで能登半島の浸水に影響を与えていたと指摘する。

金沢大学 平松良治教授:
これを見る限りは、2m程度はこのあたりも隆起したのではないかと考えられます。
海底で起こる地殻変動によって津波が生じます。隆起の影響もあるので、若干、津波の影響は軽減される傾向があるんですね。だから、特に能登半島の奥は、津波の浸水が比較的少なかったと言えます。
港を一変させた隆起は、今後元に戻ることはあるのか。

金沢大学 平松良治教授:
2007年の能登半島地震の時にも、このあたりは隆起が観測されたところなんです。そうやって能登半島自体も形成されたということもありますので、これが元に戻るということはないんです。地震が起こるたびに、このあたりは隆起するということになります。時間とともに沈降するということはないです。
(「イット!」1月10日放送より)