花が“そうめん”に似ている植物が話題
世界には個性豊かな植物が多く存在する。
そのような中で、大阪の植物園がTwitterに投稿した植物が、日本の夏に食べたくなる食べ物にそっくりだとネットを騒がせている。
速報!「パナマソウ」が開花しました!!
— 咲くやこの花館 (@SakuyaismU) July 11, 2020
一日花ですので、明日には散ってしまう貴重な植物です。
熱帯雨林室にて是非ご覧ください。#咲くやこの花館 #エア植物園 #エア博物館 #自宅でミュージアム pic.twitter.com/zvlLrHX7mY
速報!「パナマソウ」が開花しました!!
一日花ですので、明日には散ってしまう貴重な植物です。
熱帯雨林室にて是非ご覧ください。
しかし、「咲くやこの花館」が投稿した画像を見ても、これが開花した状態なのかすら分からない。
開花といえば、きれいな花びらをイメージしてしまうが、そのイメージを覆される植物だ。
名前が「パナマソウ」とのことだが、Twitterでは「そうめんやなぁ・・・」「とうもろこしのふさふさ集めてきたみたい」「そうめん食べたくなりました」など、他のものに見えている人が多数いた。
たしかに、花というよりはそうめんに見えてしまう。今の季節と相まって、そうめんが食べたくなってくるのも当然だろう。
そして、一日花だという「パナマソウ」の、散ったあとがさらに衝撃的だった。

新たに“とうもろこし”のような部分が現れ、そしてきれいに固まっていたそうめんのような花の部分は、無残にもバラバラに散っている。まるで本当にそうめんが落ちているようだ。

見た目も衝撃的で、日本ではあまりみることのない「パナマソウ」。そもそも、どんな植物なのか?という率直な疑問などを、咲くやこの花館の担当者に話を聞いた。
若葉はパナマ帽の原料
ーー「パナマソウ」について教えて
パナマソウ科の多年草。DNAによる分類ではタコノキに近縁とされています。茎は短縮して地下にあり、そこから長さ1〜2mの葉柄と扇状の葉身をもった葉を多数根生状に出します。
若葉は乾かして煮て、乾燥漂白させるとパナマ帽になります。
アメリカでも日本でも1890年頃から紳士用のアイテムとして、最もポピュラーな帽子として愛用されてきました。1955年頃から日本では女性用も流行、今では想像のできないほど当たり前の帽子でした。

花は長さ20cmほどの肉穂花序になります。同じ株に雄と雌の花が別につきます。雌花は4本の(花粉を自ら出さない)不稔雄しべが変形した糸状体を有して花序(花を付けた茎の部分)を覆い、一見不思議な姿になります。

ーーどこで生育するの?
パナマの地名がありますが帽子の輸出港で、パナマ産ではなくエクアドル、ペルー、メキシコなど中南米の熱帯原産で、現在はメキシコなど中南米で栽培も行われています。
ーー開花する時期はいつ頃?
当館では7月です。
ーー開花まではどのくらい時間がかかる?
7月12日、開花株は苞(ほう)が開き始めてから3時間ぐらいでした。

ーー大きさはどのくらい?
当館のものはつぼみの状態は平均5cm×15cm、開花が始まると約20cmぐらいのおしべが徐々に伸びていき、散ったあとの実は平均3.5cm×13cmほどです。
個体差があり、今年は小ぶりな株が多いです。
ーー散った後のとうもろこしみたいな実はどうなる?
受粉した部分については種子が実り、赤く熟して割れてきて、中から種が出てきます。(約2カ月後)


糸状に進化したのには何らかの有利性
ーーそうめんのような部分はどうなっている?
不稔雄しべが変形した糸状体を有して花序を覆います。不稔雄しべは一日たつと地面に落下します。咲き始めにバニラやミントに似た香りがあり、ゾウムシなどを誘い受粉を手伝わせます。
そうめんかラーメンのような不稔雄しべは、自家受粉を防ぐのに役立つことが多いです。通常進化は繁殖の際に起こりますが、他の花粉(他の遺伝子)による受粉を促す何らかのメカニズムがあるのでしょうが、解明されていないようです。
ーーなぜそうめんに似ている?
そうめんやラーメンに似ていると思うのは人間のユーモアを好む感覚によるもので、競争に打ち勝ち進化をしながら生活を営んでいる植物には無縁です。ただ糸状に進化したのには現在不明ですが何らかの有利性があるでしょう。

「スタッフもラーメン、そうめん等と思っています」
ーーなぜ1日で散ってしまう?
花の開花時間や受粉可能な時間はさまざまですが、基本的には(長く花が咲いていてくれるのを期待する人の意に反して)少しでも短時間の内に受粉をして花をしぼませ、種子づくりにうつりたいのが植物の姿なのです。
花を咲かせ続ける、匂いを出し続けるのにはかなりのエネルギーを必要とするのです。1日持つ花は長い方で、2〜3時間で花の機能を失うものもあります。
イネの花は20分余り、花粉の寿命も数分、アサガオ、ゲッカビジンの花なども数時間もたないです。
ーー開花を日本では見られることは珍しい?
保有している植物園は少なくないですが、いずれも一般のお客様が開花に立ち会えるかはご近所の方でなければ運だと思います。
ーー咲くやこの花館では、今年はあと何回、開花を見られる?
小さいものを含めて、現時点でつぼみは9つ確認しています。

ーー正直、スタッフの皆さんはどう思ってる?
ラーメン、そうめん等と思っています。SNSでお知らせする際にも「#ラーメン」「#そうめん」などハッシュタグをつけたりもします。時期的にも、「冷やし中華始めました」感があります。
ーー反響はあった?
翌日、多くのお客様にいらしていただきました。丁度当日開花株もあり、「そうめんみたい」とお喜びいただいています。
やはり、咲くやこの花館のスタッフも思っていたようで、毎年開花を知らせる際には「そうめん」と伝えているとのことだ。
同館の「パナマソウ」には、あと9個つぼみがあるという。興味があれば、訪れてみるのもいいだろう。タイミングがよければ、“そうめん”の花を見ることができるかもしれない。
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