買い手を探す投稿…ユーザーたちが知恵を寄せあう反響に
様々な趣味や、日常の何気ない疑問などをぽつりと投稿できる、SNS。
中には、ちょっとした質問がユーザーたちの協力で拡散・反響を呼び、見事解決!という一幕があるのもSNSの面白いところだが、今、こんな投稿がTwitterを賑わせている。
祖母が老年の為世話が難しくなりました。大事に育ててくれる方にお売りしたいと思います。
— mer (@mer___ch) 2020年3月21日
30年もののコウモリランで、サイズは高さ115cm、直径145cm、袋部分の胴回りが250cmです。(モデル171cm)#ビカクシダ #コウモリラン pic.twitter.com/iZMI2wQqh9
「祖母が老年の為世話が難しくなりました。大事に育ててくれる方にお売りしたいと思います。30年もののコウモリランで、サイズは高さ115cm、直径145cm、袋部分の胴回りが250cmです」
Twitterユーザーのmer(@mer___ch)さんが投稿した、ビカクシダ(別名・コウモリラン)というシダ植物の写真。
merさんの80歳になるおばあちゃんが育てたという、“30年もの”のビカクシダ。
写真の人の大きさと比べてみても、その驚くような大きさがわかるが、おばあちゃんが高齢になりお世話をするのが難しくなってきたことから、孫たちが引き取り手を探そうと投稿したとのこと。
するとたちまち、写真を見たユーザーが立派に育ったビカクシダに反応、「とっても立派!」「おばあさま素敵すぎる」などコメントが付き話題となるとともに、「ここまで大きく育ったのは貴重なはず…きちんと価値がわかる人に引き取ってほしい」「適正な価格で買われてほしいなあ」などの応援の声、買い取りについてのアドバイスや、植物園の情報などが続々寄せられる反響となった。
ためしに「ビカクシダ」でインターネット検索してみると、同じように大きく育った株は植物園で撮影された写真の投稿で見かけることができたが、「自宅で育てました」という投稿はなかなか見つからなかった。
販売価格については「相場が分からず、値段は決めかねている状況」として「施設や植物園、農園や、造詣の深い成人の方に買い取ってもらえることを希望します」と話しているmerさんだが、まずは投稿についてお話を伺ってみた。
おばあちゃんの栽培テクニック…実は「野ざらし」?
――おばあちゃんがビカクシダを育て始めたきっかけは?
おばあちゃんの娘(私からみた叔母)の嫁ぎ先から一株讓渡されたようです。
――twitterで引き取り手を探すというのは、誰のアイデア?
孫たちです。 終活です。
――ここまで大きく育ったのは、特別なお手入れなどしていたから?
放置です。温暖な地方(和歌山県)なので基本的に野ざらしです。でもおばあちゃんの庭はとても美しいのできっと育て方は上手なんだと思います。
なんと、基本的には「野ざらし」だったという、驚きの回答だった。
そして、素人目にはなかなかその価値が分からないが、実際のところ、この30年の重みたっぷりなおばあちゃんのビカクシダにはどれくらいの価値があるのだろうか。また、「野ざらし」にしていたというが、実はおばあちゃんの隠された栽培テクニックがあったのだろうか。
国立科学博物館名誉研究員・日本シダの会会長の松本 定さんにもお話を聞いた。
植物園のものより大型!専門家も「珍しいです」
――そもそも「ビカクシダ」とはどういう植物?
ビカクシダとは「麋角シダ」で、胞子をつける葉がオオシカ(ヘラジカ)の角に似ています。他に巣葉(ネストリーフ)ができ、早いうちに枯れて残り、落ち葉を受け止めて腐葉土を作り、樹上生活する大型のシダです。
ビカクシダ属(Platycerium)には15種または18種がアジアの熱帯~亜熱帯を中心に広く分布し、観葉植物として温室でよく栽培されています(※『園芸植物大辞典4』小学館(1989)255-262、解説は坂梨一郎:プラティケリウム属 分類はヘニプマン1982、栽培はホシザキ2001を引用)。明るい環境で、乾燥に耐えるが、条件が良いと大型に育ちます。
――「おばあちゃんのビカクシダ」、ここまで大きく育つのは珍しい?
珍しいですね。私の勤めていた国立科学博物館・筑波実験植物園の熱帯資源植物温室でもこのシダを天井からワイヤーでぶら下げ、見上げての見学です。かなり大株ですが、この和歌山の株よりやや乾燥気味で勢いが弱く思えました。
――このまま育て続けたら、もっと大きくなる?
この仲間は胞子葉と巣葉を交互に出し、分岐もするようなので無限に成長する可能性がありますが、水が多すぎると根腐れで枯れるので水管理と、時々腐葉土を与えればもっと大きくなる可能性はあります。
気になる値段も聞いてみた
――ここまで大きくなったコツがあるとしたら、それはどんなもの?
水はけが良く、木の下で落ち葉を巣葉が受け止め肥料を作り、日当たりがよく、和歌山という暖温帯で、凍結がほとんどなく、風通りがよく、カイガラムシなど病害虫の被害がなかったことだと思います。
――今後も大きく育て続けるためにはどんな環境に置くのが良い?
この大きさを維持するためには、狭い温室は無理で、屋外でしたら和歌山以南の暖温帯。ぶら下げてあるならばその方がベターです。巣葉が下部も覆うので乾燥に耐え、かつ排水も出来、根腐りしないと思います。
――ちなみに、もし値段をつけるとしたら…
値段はわかりません。細かく株分けすれば数十株になり、1株ずつ杉板を焼いたものに着生させて売り出せば市場の値段で買う人はいますが、手間がかかりますね。
値段についてはわからないという回答だったが、ここまで大きく育ったのは成長のための環境がピタリと整っていたからのようで、専門家の視点からも非常に大型で貴重だという。
最後に、投稿者のmerさんに、改めて一連の投稿について聞いてみた。
――Twitterでは大きな反響がありましたが…
ビックリしてます。価値がわからなかったのでちょっと怖かったです。ビカクシダに詳しい方にアドバイスや鑑定をしてもらったり、とても懇意にして頂いて優しい人もいるのだなぁと思いました。
twitterを通して、アイデアが続々寄せられた今回の投稿。いまのところまだ引き取り手は現れていないとのことだったが、「おばあちゃんのビカクシダ」は今後も環境次第でさらに大きく育つ可能性があるということなので、孫たちの思いも受け止めて手を挙げる人が現れてほしいものだ。
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