水に濡れると透明になる花「サンカヨウ」

“水に濡れると透明になる花”がこの世に存在する…ということをご存じだろうか?

このような神秘的な特徴を持つ花を紹介するツイートが拡散し、Twitter上で大きな話題になった。

名前は「サンカヨウ」

普段は白い花なのだが、雨水などで濡れると“透明”になるというのだ。まずは、花びらが濡れる“前”と“後”のサンカヨウを見てほしい。

通常の白い花のサンカヨウ(提供:六甲高山植物園)
水に濡れて透明になったサンカヨウ(提供:六甲高山植物園)

写真を見ると、確かに透明になっていることが分かる。とても不思議な現象だが、どのような原理なのだろうか? また、いつ、どんな場所で見ることができるのか?

サンカヨウを育てている、白馬五竜高山植物園(長野県白馬村)の学芸員・風間勇児さんにまずは話を聞いた。

「冬に雪深く、夏に水が豊富な場所」で育つ

――サンカヨウはどんな花なの?

サンカヨウを漢字で書くと、「山荷葉」になります。

「荷葉」とはハスの葉という意味だそうで、サンカヨウの葉が蓮の葉に似ていることによります。山に生えているハスの葉のような植物といった意味でしょうか。

実際、白馬五竜高山植物園に植えているものは、葉の直径は20~30センチくらいにしかなりませんが、雪解け水が豊富な自生地では50センチ以上に成長し、ハスの葉に引けを取らない迫力があります。

花の大きさは2センチほどで、3~10輪くらいの花がボール状に咲きます。


――どんな場所で生育するの?

生育地は「冬に雪深く、夏に水が豊富な場所」です。

サンカヨウの正確な分布までは把握していませんが、私が見たことのあるサンカヨウは、冬は雪深くなる場所でした。

冷たい水が常にある環境を好む植物のようで、条件が揃うと、大きな群落をつくって、まとまって咲きます。


――開花の時期を教えて

開花の時期は標高や雪解けによって変わりますが、標高の低いところでは5月中旬くらいから咲き始め、白馬岳の登山道の途中にある白馬尻小屋の手前の群生は6月下旬から7月上旬が見ごろになります。


――花の寿命はどれくらい?

花の寿命は短く、咲いてから1週間ほどで散ってしまいます。

透明になる原理は“光の散乱”と“透過”で説明できる

――透明になる原理として考えられることは?

私は専門家ではありませんが、私なりの視点で、透明になる原理についての考えをお伝えいたします。

私は、“光の散乱”と“透過”が関わっていると考えています。
まず、サンカヨウは白い花だとお話しましたが、サンカヨウの花びらには「白色の色素」は無いと思われます。というのも、花の色は、花弁の細胞の中にある色素の色で決まっていますが、「不透明な白色の色素は無い」とされているからです。

ではなぜ白く見えるのかというと、光が花びらの中で散乱するからだと考えられます。

花は細胞という部屋の集合でできていますが、光が細胞の隙間に入り込んだ時に散乱して、人の目には「白色」に見えるということです。

水の中で丸めたラップと同じ現象の可能性

――うーん、難しい…もう少し詳しく教えて

ラップを例に挙げて説明します。

透明に見えるラップも、ぐしゃぐしゃに丸めて凹凸を作って、それが重なると白く見えます。

丸めて白く見えるラップ(提供:白馬五竜高山植物園)

ところが、水の中で空気が入らないように注意してラップを丸めると、白くはなりません。

ラップを水につける(提供:白馬五竜高山植物園)
丸めても白くなっていないラップ(提供:白馬五竜高山植物園)

これはラップの中が水で満たされているので、光の散乱が起こりにくく、光が透過(=通り抜けること)したためだと考えられます。

水に濡れると透明になるサンカヨウも、これと同じ現象が起こっているのではないかと考えられます。

透明になりやすいのは“やや終わりかけの花”

――雨以外にサンカヨウが透明になりやすい環境はある?

透明なサンカヨウが見られるのは、咲き始めのしゃきっとした花ではなく、“やや終わりかけの花”です。そして、晴れた日ではなく、“雨の日”です。

花が老化すると細胞の結びつきが弱くなります。
そこに雨が降ると細胞の間に水が入ってきて、光が散乱しにくい状態になり、サンカヨウが透明になるのではないか、と私は考えています。

なので、サンカヨウだけが透明になるわけではなく、「白い花なら透明になる可能性を秘めている」と考えられます。

――サンカヨウ以外にも、透明になった白い花を見たことがある?

「シロバナエンレイソウ」という花も本来は白い花ですが、つい先日、雨の日に透明になっているシロバナエンレイソウを見つけました。

通常のシロバナエンレイソウ(提供:白馬五竜高山植物園)
透明になったシロバナエンレイソウ(提供:白馬五竜高山植物園)

見るためにはタイミングと運が必要

――透明になったサンカヨウを見ることは難しい?

難しいです。

ある日、サンカヨウがやや半透明になっていたので、翌日、さらに透明になったサンカヨウが見られるのではないかと期待していたところ、花びらが散ってしまいました。

花びらが散ったサンカヨウ(提供:白馬五竜高山植物園)

きれいに透明になったサンカヨウを見るためには“タイミング”と“運”が必要です。

――白馬五竜高山植物園で見られる時期は?

開園日の6月13日にはサンカヨウが咲いていると思います。

花は1週間ほどしか咲かないので早めにお越しください。ただ、透明になったサンカヨウが見られなくても、白のサンカヨウも十分きれいです。

通常のサンカヨウ(提供:白馬五竜高山植物園)

――今年は何月ごろまで見られそう?

例年ですと、6月中旬にはサンカヨウが咲いています。開花情報は白馬五竜高山植物園のホームページやFacebookにあげますので、ご参照ください。

また、白馬岳の登山道や小谷村の栂池自然園では、6月下旬から7月上旬にかけても見られると思います。

“すりガラスを濡らすと透明になる原理”と同じ

そしてもう1人、サンカヨウを育てている、六甲高山植物園(兵庫県神戸市)の担当者にも話を聞いてみたところ、同様の光の透過の原理で説明してくれた。

――透明になる原理として考えられることは?

“すりガラスを濡らすと透明になる原理”と同じと考えられます。

「濡れていない状態」では、表面の小さな凹凸に光が乱反射して“白く”見えます。一方で「濡れて表面が水の膜に覆われた状態」だと、光を反射しないため“透明”に見えます。

透明になったサンカヨウ(提供:白馬五竜高山植物園)

神秘的で美しい透明の花だが、見るためにはタイミングと運が必要だという。六甲高山植物園でサンカヨウを見られる時期は「4月下旬~5月上旬」。現在は実の状態だという。
一方、白馬五竜高山植物園での見ごろは開園日の6月13日以降。雨の日にもしかしたら透明になったサンカヨウを見ることができるかもしれない。
 

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