長期の休み明けに増える傾向にある子どもの自殺。
冬休み明けも例外ではない。
今、必要性が高まっているのは、子どもたちが安心して過ごせる居場所作りだ。
Live News daysが今年の夏休みに取材した「子どもの居場所」のその後を追った。

11月時点で命を絶った子どもは402人

厚生労働省のまとめによると、自ら命を絶つ子どもの数は年々増えていて、去年は過去最多の514人だった。
今年の11月時点で、すでに402人に上る。

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18歳以下の子どもの自殺者の数を日ごとに表わしたグラフ。
夏休みが終わり、新学期が始まる9月1日に突出して多いことがわかる。 
冬休み明けも例外ではない。
長期の休み明けに増える傾向にあるため、注意が必要だ。
学業やいじめなどに悩む子どもにとって、学校の再開が大きなプレッシャーになっていることが要因の1つとみられている。

「家の他のもうひとつの居場所」に集う子どもたち

Live News daysでは今年8月、東京・狛江市の住宅街にある「野川のえんがわ こまち」を取材した。

東京・狛江市の「野川のえんがわ こまち」
東京・狛江市の「野川のえんがわ こまち」

「誰でもふらりと立ち寄れる場所」を目指し、市民グループ「comarch」が地域の人向けに開放した古民家で、1日に30人ほどが訪れる。
中には不登校の子どももいる。勉強をしている子どももいれば、カードゲームで遊んでいる子どももいて、過ごし方はそれぞれだ。

「野川のえんがわ こまち」の縁側で遊ぶ子どもたち
「野川のえんがわ こまち」の縁側で遊ぶ子どもたち

3年通い続けている男子小学生は、「家のほかのもうひとつの居場所」と話してくれた。
現在も学校には行けていないが、「こまち」で勉強を続け、最近は苦手な算数に挑戦するなど前向きに取り組んでいるという。

夏休みの間によく通っていた男子中学生は、「こまち」ともうひとつの居場所を行き来するようになった。その日の気分によって居場所を使い分けているという。

comarch代表の梶川朋さん(左)
comarch代表の梶川朋さん(左)

comarch代表の梶川朋さんは、子どもたちのペースを大事にしていて、「ここは居場所の一つであって、子どもたちにはいろんな居場所が必要」と話す。
家族との連携はもちろん、学校との連携も欠かさない。
実際、本人と保護者の意向を尊重した上で、校長先生や担任の先生が「こまち」に様子を見に来ることもある。
中には、「こまち」に通った日数が学校の出席扱いになったケースもあった。

「どこかで息苦しくなっても、自分たちにはほかの場所がある」

「こまち」に通う子どもたちの家族は、口をそろえて「学校以外の居場所があることは、本人にとっても、家族にとっても大きな安心感になる」と話す。
学校や家庭以外の「第3の居場所」を必要としているのは、子どもだけではない。
不登校を経験した子どもの母親は、「1人でもがき、心身共に疲れ切っていたが、居場所を見つけたことで元気を取り戻した」と話す。
同じ状況の大人とつながることで、1人ではないという安心感を得て、相談できるようになったという。

しんどくなったら、いつでも来られるように

梶川さんは「こまち」を、「第1第2の場所で苦しくなってしまった時に駆け込める場所でありたい」と話す。
「こまち」は、年末は29日まで、年始は4日から開放する。
公共施設が閉まる期間は特に需要があるため、一緒に大掃除や忘年会をするなどして、可能な限り開放するとしている。
「辛くなったら、無理せず逃げていいんだ。逃げたって、いくらでもやり直せるんだということを、社会全体で発信していけたら」と話す。

いつも以上のコミュニケーションを

精神的に不安定になりやすい休み明け、子どもの自殺を防ぐために何ができるのか、岡山県精神保健福祉センターの佐藤俊介医師に聞いた。

岡山県精神保健福祉センター 佐藤俊介医師
岡山県精神保健福祉センター 佐藤俊介医師

「いつもより元気がなかったり、いつもよりイライラしやすかったり、感情面で普段と違う様子があれば、不調のサインである可能性はある。体の不調として出ることもある。 例えば、食欲がないとか、もしくは食欲がありすぎるとか」と、ちょっとした変化に注意する必要があると呼びかける。

こども家庭庁の調査によると、「学校や家庭以外に安心できる居場所がほしい」と考える子どもや若者は、全国で7割に上る。
1つでも居場所を増やすため、NPO法人やボランティア団体が子ども食堂や学習支援教室などを運営するほか、こども家庭庁も「こどもの居場所部会」を開催するなど、国を挙げた取り組みが始まっている。

学校や家庭以外にも受け入れてくれる場所が、安心して過ごせる場所が、少しずつ増えていることを知ってもらいたい。
【取材・執筆:今島遥海】

フジテレビ
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