夏休みが終わり、新学期が始まる時期、毎年増える傾向にあるのが子どもの自殺だ。 
こうした中で必要性が高まっている学校や家庭以外の「子どもの居場所」を取材した。 

もう一つの居場所に集う子どもたち

東京・狛江市の住宅街にある「野川のえんがわ こまち」。 
「誰でもふらりと立ち寄れる場所」を目指し、市民グループ「comarch」が地域の人向けに、古民家を開放している。 
1日に訪れるのは20人ほど。 中には学校に通えなくなった子どももいる。 

不登校を経験した中学生 :
不登校で遊ぶところがなくて、家にずっといたんですけど、親に紹介されて来てみたんですよ。 ここに来て、1年とかして、中学生になった時に(学校に)戻れました。 
いろんな人と会っているうちにコミュニケーション能力が上がっていって、学校の様子とかも聞いたりして、もう一回戻ってみようかなと思って

不登校を経験した小学生:
(「野川のえんがわ こまち」に来て)しゃべれるようになった。 たぶん家よりも居心地がいいんだよ

家のほかのもう一つの居場所。 

不登校を経験した中学生の母親:
子ども同士のコミュニケーションでうまく言葉が出てこなくて、それが辛くて、「僕、学校休みたい」って言い出して。 最初は「早く行きなさい」って背中を押して無理やり行かせていたんですけど、ある時、息子が教室の片隅で座っている姿を見て、息子に駆け寄って「ごめんね」って。 「もう無理はしなくていいから、いやすい場所に行こう」って話をして。 
(「野川のえんがわ こまち」に来て)表情が明るくなりました。 学校に行かなきゃダメってやるよりも、この場所だったらなんとか自分を保てるよという場所が、これからもどんどん増えてほしいなって思います

「野川のえんがわ こまち」を作るきっかけになったのは、代表理事の梶川朋さん自身が、不登校を経験したからだ。 

comarch代表理事 梶川朋さん: 
その時に社会からドロップアウトしてしまったような感覚を強く持ちました。 今、大人になって、学校に行けないくらいで、そこからこぼれ落ちてしまう社会ってなんだろうというのが僕の中で問題意識としてあります。 
学生時代に、こういう地域の中で誰でも集うことができる場所が結構あちこちにあることを知って、自分の街にも仲間と一緒に作りたいなと思った。 

子どもが安心して過ごせる「居場所」を増やすことが今求められているという。 

comarch代表理事 梶川朋さん: 
子どもたちにとって、やっぱり家庭と学校は生活のほぼすべてだと思うんですよね。 
第1、第2の場所で苦しくなった時に駆け込んで来られる、そんな場所でありたいと思います。 
実は地域の中には、まだ少ないかもしれないけど、君たちを受け入れてくれる場所があるんだよということを、大人がしっかり発信して子どもたちに届けていく

「登校が無理」という時は、しっかり休養取るのも選択肢

国が調査した、18歳以下の子どもの自殺者の数を日ごとに表わしたグラフ。 
夏休みが終わり、新学期が始まる9月1日に、突出して多いことがわかる。 

不安や悩みを抱える子どもには、どのような変化があるのか、岡山県精神保健福祉センターの佐藤俊介医師に聞いた。 

岡山県精神保健福祉センター 佐藤俊介医師: 
少しいつもより元気がないとか、いつもよりイライラしやすかったり、怒りっぽくなったり、感情面で普段と違う様子があれば、不調のサインである可能性があります。 
心の不調が心に表れるとも限らなくて、体の不調として出ることもあります。 例えば、食欲がないとか、もしくは食欲がありすぎるとか。 
(学校に行くのが)どうしても無理という時は、しっかり休養を取っていただくということも一つの選択肢ではないかと思います。 

【取材後記】 
「野川のえんがわ こまち」は賑やかで楽しい場所だった。 
ずらりと並ぶ自転車…縁側には不揃いな靴…想像していたより多くの子どもたちが私たちを迎えてくれた。 
取材中、元気に遊ぶ姿や自由にくつろぐ姿を見て、お互いを受け入れ合っているのを感じた。 
インタビューに答えてくれた小中学生は、カメラの前で、緊張しながらもいろいろ話してくれた。 
今考えていることや過去に悩んだことを言葉にするのは難しいことだと思う。 
それでも、自分たちが見つけた「居場所」について、その「居場所」によって生まれた変化について、教えてくれた。 
大人は子どもに何ができるのか、どう手を差し伸べられるのか、ずっと考えていた。 
取材を終えて思うことは、子どもたちが安心して過ごせる居場所を含め、選択肢を増やす社会になってほしいと願う。 

最後に、今、どうしても学校がつらいと感じている方。 
逃げてもいいんだ、新しい居場所を作ってもいいんだということを、どうか忘れないでほしい。