東京・品川区のNTT東日本関東病院で、産科医師の不足により、約100人の妊婦が転院を余儀なくされた。
病院は転院先を調整し、分娩(ぶんべん)費用の差額を負担するなどして、「安心・安全に分娩されるように最大限努力している」とコメントしている。

医師不足で妊婦100人が転院

東京・品川区のNTT東日本関東病院では、急病や産休などで産科医師の数が通常の半分の4人となり、夜間や休日の対応が難しくなった。

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このため、11月14日から新たな妊婦の受け入れを止め、5日から2024年4月までに出産を予定していた妊婦約100人が、転院を余儀なくされているという。

病院は転院先を調整しているほか、分娩費用の差額を負担するなどしていて、「安心・安全に分娩されるように最大限努力している」とコメントしている。

このニュースについて、取材にあたってきたフジテレビ社会部・松川沙紀記者がお伝えする。

妊婦約100人が転院とはただごとではないが、かねてから医師不足が問題化している地方ではなく、都心の総合病院でこうしたことが起きてしまった原因は何なのだろうか。

NTT東日本関東病院は、病床数594床、院内には理容室やカフェも入っており、1日1500人以上が訪れる総合病院。

今回、たまたま急病や医師の出産が重なってしまって、「夜間・休日勤務ができる医師の調整がつかなかった」と病院側は話している。

働き方改革でさらに人繰りが厳しく

このようなことが起きてしまった背景には何があったのだろうか。

赤ちゃんはいつ生まれるかわからない。そのため、24時間体制をとる必要があるという産科特有の事情が関係している。

日本産科婦人科学会による分娩取扱施設の1カ月の当直回数の平均は、5.2回にのぼっている。
つまり、週に1~2回、医師は病院に泊まっている。

また、時間外・休日の労働時間が年間で1860時間。単純計算ではあるが、週5勤務換算だと、1日あたり8時間ほど時間外労働することになる。
その上限を超えることの多い診療科の中でも、産科は4番目に多かった。

また産婦人科では、50歳以下の医師は女性の方が多くなっているという。
例えば、産休中・育児中の女性医師などは、当直勤務が難しいという現実がある。

一方で、産科の医師の過酷な勤務状況の改善も待ったなしの状況だ。
2024年4月には「医師の働き方改革」が施行されるが、どのような影響があるのだろうか。

2024年4月からは、病院などに勤務する医師の年間の時間外労働が、原則960時間に制限されるため、人繰りという意味ではさらに厳しくなりそう。
日本産科婦人科学会・加藤聖子理事長は対策が必要だと話している。

1つ目は、大規模施設へのマンパワーや機能の「集約化」。2つ目は助産師の積極的活用などの「タスクシフト・シェアリング」、つまり仕事の役割分担の拡大だ。

医師の「働き方改革」は、持続可能な医療体制を確立するうえで重要だ。

医療を受ける私たちも、症状が初期の時は大病院ではなく、できるだけ身近な診療所を受診するなどの心がけが必要かもしれない。
(「イット!」 12月21日放送より)

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